なぜエビや貝は生きたまま茹でられるの?痛みや苦痛は感じないのか?

2018年5月10日

台所に入ったら、目の前で、豚が生きたまま鍋でグツグツ茹でられている。

そんなすさまじい光景をみると、おそらく恐怖で食欲を失ってしまうかもしれません。

しかし、実際には、毎年、数百万匹ものロブスターが、アメリカの台所で、この豚と同じような運命をたどっています。

ロブスターだけでなく、世界中で何億というエビや貝、カニなどの甲殻類も同様に。

彼らは動物と同じように、痛みを感じることはないのでしょうか。

実際に、「エビや貝を生きたまま茹でるなんて、あまりにも野蛮で、残酷な調理方法だ」と感じる人も多いかもしれませんが、それには、食べる人の命を救うためという理由があります。

ここでは、なぜ料理人はエビや貝などの魚介類を、生きたまま茹でたり、焼いたりして調理するのかについて、それに伴う魚介類の痛みにも触れながら分かりやすく紹介していきます。

実のところ、研究がすすむにつれて、魚介類の調理法は、少しずつ見直されつつあります。

ロブスターの調理法

私たちの祖先は、数千年前から、ロブスターを生きたまま茹でていたことが分かっています。

初めてロブスターの調理法が記録されたのは、1世紀のこと。古代ローマ時代の料理のレシピを記した有名な書籍「アピシウス」によるものでした。

その後、アメリカのシェフたちは、「生き物を生きたまま調理した方が、味も見た目もよい」ことに気づき、1880年頃にはすでにこの調理法を採用していました。

ただし、この調理法が食中毒のリスクを減らすことが分かったのは、まだ先の話です。

エビや貝などの魚介類を生きたまま茹でる理由

原因は、「ビブリオ」属に属する菌にあります。

これらの菌は、エビや貝などの甲殻類や貝類などが死んだ後、数時間もしないうちにその腐敗した肉で、他のどの食中毒菌よりも速いスピードで増殖していきます。

残念ながらビブリオ属の菌は、一度付着すると取り除くことはほぼ不可能で、加熱調理したロブスターでさえ、すべての菌を殺すことができないとさえいわれています。凍結してもすぐには死にません。

そのため、調理するまで、エビや貝を生きた状態で保ち、菌を抑えることが食中毒のリスクを減らすカギとなるのです。

この菌は、海水中で生育し、15度以上の環境で活発化する特徴があるため、特に夏場は注意が必要です。

食中毒のリスク

ビブリオ属の菌が、体内に入ってしまったら、それはもう大変です。

数時間から24時間後には、腸の痙攣(けいれん)、激しい腹痛、吐き気、嘔吐、発熱、悪寒などの症状が表れ、ときには死に至ることもあります。

魚介類に付着した菌は、分裂によって増殖し、腐敗を引き起こしていきます。腐敗が起こった肉は、成分が分解されて、アンモニアのような異臭を放ちますが、実際には、見た目やにおいから判断するのは難しいといわれています。

効果的な食中毒予防方法

私たちの命や健康は、調理人の手にゆだねられています。

菌が付着した魚介類を調理した手を介して、二次感染された食品でも食中毒は発生する可能性があります。

魚介類は、新鮮なうちに、衛生管理に注意してすばやく調理しなければなりません。

調理前の手洗いは基本。そして、ビブリオ属の菌は、真水では増殖しないので、水で魚介類をよく洗い流すこと。

そして、魚介類を切った包丁やまな板などの調理器具が他の食品に触れないように注意して、すぐに洗うことが大事です。

エビや貝も痛みを感じるのか?

たしかにエビや貝を生きた状態で茹でることは、私たちを食中毒による痛みの世界から救うことになるのかもしれません。しかし、エビや貝はどうなるのでしょうか?

たとえば、ロブスターは、沸騰した湯に浸けても叫ぶことはありません。

事実、彼らには肺がなく、叫び声を形成するための生物学的な形態を持っていません。私たちに聞こえるのは、ただ空気と蒸気が殻から逃げる音だけです。

いずれにせよ、私たちは鶏や豚にはこの調理法を試みようとはしません。彼らが痛みを感じているのが、見るからに明らかだからです。

ロブスターに関しては、彼らがもつ原始的な神経系と脳が、痛みが何であるかを知っているかどうかははっきりしていません。

果たしてロブスターが、湯に浸けられたときの動きは、熱さで苦しんでいるからか、それとも、意識的な行動ではなく、熱湯に対する反射的反応からくるものなのでしょうか。

研究で分かってきたこと

甲殻類に繰り返し電気ショックを与えたクイーンズ大学の研究では、無脊椎動物でも痛みを感じ、記憶している可能性が高いと示されています。

しかし、それを証明するには、もっと多くの研究が必要であるのも事実です。

いずれにせよ、エビや貝などの魚介類の意識に関してはまだまだ分からないことが多くありますが、私たちはもっと彼らの痛みや苦痛について考える必要があるのかもしれません。

まとめ

「予防原則」と呼ばれる倫理がありますが、分からないときには、リスクを考慮して、慎重に事を運ばなければなりません。

現在、研究がすすむにつれて、「エビやカニが、生きたまま手足など体の一部がもぎとられ、熱湯に放り込まれることに、苦しんだり、痛みを感じたりする能力を持っている可能性があるなら、それを深刻に考えるべきだ」という考えに見直されつつあります。

2018年1月には、スイスの政府は、ロブスターなどの甲殻類を生きたまま茹でたり、氷水に入れて輸送したりすることを禁止する方針を示しました。

日本はそれに従うべきか?あなたはどう思いますか?