クジラの潮吹きは海水ではない!鼻の孔で行われる潮吹き(呼吸)の仕組み

クジラの潮吹きは海水ではない!動物・植物・生き物

クジラといえば「潮吹き」が有名ですが、それでは、この頭部の穴(鼻)から噴き上げられる霧の正体は何だと思いますか?

最近の調査によって、これは海水ではなく、クジラの呼吸によって排出された「熱気」と「バクテリア(微生物)」が混ざり合ったものであることが分かってきました。

ここでは、クジラの潮吹きの仕組みや長い時間水中で息を止められる理由について、科学的に分かりやすく紹介します。

クジラの潮吹きって何?

クジラは人間と同じほ乳類の仲間で、エラ呼吸の魚とは違い、肺で呼吸をしています。そのため、水面で呼吸がしやすいように、鼻の孔(呼吸孔)は、頭部にあります。

水中で息が苦しくなったら、体内から二酸化炭素を出して、酸素を取り込むために、水面に出て呼吸をしますが、この呼吸が、まさに「潮吹き」といわれるものです。

潮吹き(呼吸)の仕組み

クジラの潮吹きは、水面で噴気孔(ふんきこう)を開いた後、冷たい外気に向けて、肺からたくさんの温かい空気を一気に押し出して行われます。私たちが泳ぐときの息継ぎと同じようなものです。

このとき、外の寒い気温との温度差によって、呼気の水蒸気が、急に冷やされて凝縮し、水滴となって白く見えることがあります。

これは、私たちが吐く息が白く見えたり、やかんから白い湯気が出たりするのと同じ原理で、クジラの場合は、大量の呼気が勢いよく吹き出されることから、遠くから見ると白い霧の噴水に見えるのです。

クジラが長い間息を止められる理由

マッコウクジラやゾウアザラシは、1時間から2時間という長時間にわたる潜水能力を持ち合わせています。

ほ乳類が一呼吸で泳ぐ潜水記録のなかでも、最長だといわれるアカボウクジラにいたっては、137分30秒も水中で息を止めることができます。

彼らは、なぜそこまで水中で息を止めることができるのでしょうか。

クジラは、一回の呼吸で大量の二酸化炭素と酸素を交換し、人間よりはるかに多い酸素量を血液に取り込むことができます。

そして、水中では、呼吸を全くしないで、心拍数を下げ、血液を脳や心臓などに優先的に送っています。

肺から血液に取り込まれた酸素分子は、赤血球にあるヘモグロビンと呼ばれるタンパク質と結合して全身に運ばれた後、組織細胞や筋細胞にあるミオグロビンと呼ばれるタンパク質に渡されます。

ミオグロビンとは、筋肉で酸素を貯蔵する役割のあるタンパク質です。

クジラは、水中で活動するときに、ここで貯蔵された酸素を使って筋肉を動かしています。

こちらもどうぞ:
ステーキ肉からにじみ出た赤い汁は「血液」ではなく「ミオグロビン」だった

クジラの潜水能力の源「ミオグロビン」

科学者たちは、潜水能力の高いほ乳類は、血中のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンが豊富にあり、血液や筋肉中にたくさんの酸素を貯蔵できるおかけで、長い時間水中で息を止めることができると考えています。

万が一、血液中のヘモグロビンが貯蔵する酸素がなくなっても、ミオグロビンが蓄えておいた酸素を血液中にまた戻して補給することができるのです。

2013年の研究では、潜水能力の高いほ乳類は、他のほ乳類に比べて、ミオグロビン分子がより多くの正電荷を持っていることも分かりました。

通常、タンパク質はたくさんありすぎると、ぎゅっと集まって塊になり、さまざまな病気を引き起こす恐れがありますが、正電荷を帯びることで、お互いが反発しあって離れるため、人間の10倍も密集することができるのです。

潮吹きの霧の成分

話を潮吹きに戻していきます。さきほど、潮吹きの正体は呼気の水蒸気であることに触れましたが、実はこれはまだ一部分で、潮吹きに含まれている成分は他にもあります。

近年、科学者たちは、クジラの潮吹きの観察において、新たな発見をしました。

研究では、26頭のザトウクジラから呼気を収集して成分を調べたところ、25種類もの微生物種が見つかったのです。それらは、クジラの生育する海洋によってそれぞれ異なるものでした。

これは、潮吹きの中にいる微生物種が、クジラの気道にいたものであることを意味します。

クジラの大量死の原因解明への光

この発見は、クジラの死に至る病として過去19か月間もの間調査が続いている「ザトウクジラの異常な大量死」の原因を解明していくうえで、大きな第一歩だといわれています。

2016年以降、アメリカの大西洋沿岸の海域では、異常な数のザトウクジラが死に、海岸に打ち上げられています。これを受けて、アメリカでは、調査チームが結成されて、大量死の原因解明にのりだしています。

呼吸器疾患は、座礁したクジラや死んだクジラに共通してよくみられる病気のひとつですが、今回のような健康なクジラの呼気に関する新しい微生物の発見は、病気の原因解明に役立つであろうと期待されているのです。

参照元:
What’s Actually Inside A Whale’s Blowhole?
How Do Marine Mammals Hold Their Breath For So Long?

error:Content is protected !!