つぶらな瞳に垂れ下がった鼻や口元、なんともがっかりしたような、さえない表情の深海生物。
その名は「ブロブフィッシュ(ニュウドウカジカ)」。
2013年に英国の「Ugly Animal Preservation Society(醜い動物保護協会)」 によって、「世界一醜い生き物」に任命された魚類です。
ぶよぶよのゼラチン質な体は、実際に過酷な深海の環境で生き残るのに役立ちます。
以下に、ちょっと不気味で不思議な愛らしさのある深海生物「ブロブフィッシュ」の生態について紹介します。
高い水圧に耐えられる体
ブロブフィッシュが生息するのは水深1000メートル近い海底。太陽の光がまったく届かないので真っ暗です。
体にかかる水圧は地上の約100倍(100気圧)。これは私たち人間が潜ると、1平方メートルあたり1トンの水の重さでかなり強く圧迫されるイメージで、この水圧のなかで暮らせる動物は多くはありません。
ブロブフィッシュは、このかなりの水圧の中でどのように生きているでしょうか?
それが、彼らの「醜さ」がメリットとなるところです。
ブロブフィッシュは、水中のすべての方向からの圧迫に対処できるゼリーのような体を持っています。
筋肉はほとんどなく、骨もほとんどありません。
しかし、分厚いゼラチン質の体には浮力があるので動くことも食べることもできます。
これは、泳ぐためにエネルギーを使いすぎることなく、海底のすぐ上を快適に浮くことができることを意味します。
そして、食べ物の少ない深海で、たまたま口元に漂ってきた甲殻類などの食べ物を飲み込むだけです。
科学者たちは実際に、海底にいるときのブロブフィッシュは、水圧によって押されているので、見た目は私たちが知っている他の黒っぽい魚に似ていると考えています。
しかし、私たちが目にするブロブフィッシュのほとんどは、漁網で捕獲され、海から引き上げられたものです。
ブロブフィッシュが体型を保つための水圧から一気に解放されると、急劇な水圧の差によって細胞が傷つき、通常よりも皮膚や肉がダランと垂れたピンク色のぶよぶよの姿になってしまうようです。
このような醜い動物の生態を研究し保護するために活動する「Ugly Animal Preservation Society」のおかげで、2013年以降ブロブフィッシュは人気が急上昇。今や世界中の人に愛されるキャラクターとなっています。