ガラガラヘビの尻尾の先にある「ガラガラ」は空洞です。
どうやらあの特殊な「ガラガラ音」の秘密は、殻そのものにあるようです。
では、実際には尻尾の中はどうなっているのでしょうか?
以下に、ガラガラヘビの尻尾を切り開いてみて分かった「音が出る仕組み」について、フロリダ州立大学の爬虫類両生類学者ティム・コルストン氏による解説を中心に紹介します。
ガラガラヘビの尻尾の先は空洞
ガラガラヘビは、天敵に出会うと「ここに毒ヘビがいるぞ」と立ち去るよう警告するために、尻尾を立てて激しく振り、音を出して威嚇します。
ガラガラの音は、例えるならマラカスの音に似ています。
しかし、マラカスのように中に何かが入っていて、このガラガラの部分を振るとそれが鳴るというわけではないようです。
そのため、尻尾の先にあるガラガラを切り開いても、何も落ちてはきません。
ティム・コルストン氏は、ガラガラヘビが尻尾で音を出す仕組みについて次のようにいいます。
ガラガラヘビの尻尾の先にある「ガラガラ」は空洞です。
ガラガラという音の秘密は、爪と同じ硬い物質「ケラチン」でできた殻そのものにあります。
ガラガラが音を出す仕組み
このケラチンは、くさり状に連なっていて、ぞれぞれの連結した角質の環(筒状容器)の縁にある小さな溝で互いに引っかかっているのです。
たとえば、このガラガラは16の異なる部分で構成されています。
ガラガラ全体の断面を見ると、それぞれの部位はがっちりとつながっているのではなく、ゆるく重なりあっています。
この連結した角質の環(わ)からなる尻尾を速く振ると、環の節が互いにぶつかってガラガラと音が出ます。
尻尾の中は空洞なので、音波が壁に跳ね返って反響します。これは、洞窟で大声を出すと音が響いて大きく聞こえるのと同じ仕組みです。
ただし、連結した空洞の部屋は、それ自身だけではうまく働きません。
そこで尻尾の筋肉の出番です。
ガラガラヘビは背骨の付け根に上肋骨窩(supercostalis lateralis)、腸肋筋(iliocostalis)、背最長筋(longissimus dorsi)という3つの強力な筋肉を備えています。
これらはきわめて速く収縮し、1秒間に最大90回もガラガラを振動させることができるのです。
ちなみに、人間の目のまばたきは1分間に15~20回くらいだといわれています。
このように尻尾を速く振動させることで、ガラガラは特定の周波数の間で音を出しています。
ほ乳類に効果的な音域
そして、その周波数は偶然にも、哺乳類に最もよく聞こえる音域なのです。
つまり、クマやアライグマ、イタチなどの天敵となる肉食動物が警告信号に耳を傾けやすいように、ガラガラヘビの尻尾は設計されているのです。
しかし残念ながら、ヘビの赤ちゃんにはこの警告信号はありません。
ガラガラヘビの赤ちゃんは音を出せない
生まれたばかりのガラガラヘビは、プレボタンとよばれるケラチンの突起が1つしか付いていません。尾の節が2つ以上ないと ガラガラは音を出せないのです。
この節は、脱皮するたびに、ガラガラの根元に一筋ずつ追加されていきます。
成長するごとに、尾の先端を残したまま根本から新たな角質の環が連結されていき、どんどん階層が追加されていくのです。
しかし、このガラガラは成長し続けると、やがて「パキッ」 と音がするようになります。
爪と同じように、ガラガラも壊れやすく、長くなりすぎると割れてしまうことがあるのです。
実際には、8~10回程度鳴らしたぐらいでは折れることはほとんどなく、自然界では平均して8節くらいもつヘビが多いようです。
幸いなことに、ヘビは一生を通じて脱皮するため、ガラガラは新品同様に生え変わっていきます。
毒ヘビとして知られるガラガラヘビは、日本には生育していませんが、アメリカ全土に分布しており、人間にとっては怖い存在です。
しかし、彼らが攻撃するのは、獲物を狙うときか身を守るとき。身の危険を感じると、尻尾をガラガラと鳴らして音を出します。
実際には、ヘビは人間との遭遇を避けることが多いといわれているので、藪の中からガラガラという音が聞こえたら、急な動きをしないで、ゆっくり後ずさりしてできるだけ早くその場を離れるようにしましょう。
ガラガラヘビが音を出す映像
1分41秒くらいから、スローモーションでガラガラが振動する様子が撮影されています。
その他の参照元:
・What’s Inside A Rattlesnake’s Tail?
・What’s Inside a Rattlesnake Rattle?