「お尻が光るホタルが、なぜ海に生育していないのか?」これはとても奇妙なナゾです。
なぜなら、海に生息する動物の大部分(約75%)は何らかの方法で発光しており、海の中で発光するのは例外ではなく、ありふれたことなのです。
一方で、私たち人間にとって、光り輝く生き物はとても珍しい存在に見えます。
私たちが普段見ている陸上や空中、湖や川などにいる動物のうち、自ら光を発する生物はほんの一握り(0.1%)で、ホタルやヒカリコメツキ、ヤスデ、カタツムリ、そして、赤と緑の2色の光を放つ「鉄道虫」などがそれにあたります。
ではなぜ、海では生物発光(Bioluminescence)がよく見られるのに、他の場所ではあまり見られないのでしょうか?これについては以下のようにさまざまな説がありますが、実はまだよく分かっていないようです。
暗闇が原因説
海での生物発光種が多い理由の一つは暗さにあるとする説です。
たしかに海の中はほとんどが暗闇の世界なので、そこで発光すれば、外敵を驚かせることができるのかもしれません。
また、生物発光は、仲間とのコミュニケーションや求愛、獲物を誘い出すのにも有効です。
しかし、海以外にすむ動物でも暗いところに住んでいる生物はたくさんいます。
北極や南極では何か月間も暗い日々が続くし、洞窟ではほとんど常に暗く、夜行性の動物の存在も忘れてはいけません。
これらの動物も海洋生物と同じように発光による恩恵を受けてもいいはずです。
どうやら暗闇だけでは、海以外の動物が発光しない理由は説明できないようです。
進化にかかる時間説
他の理由として、海洋生物以外の動物には、生物発光を進化させる時間が十分ではなかったとする説があります。
海洋生物は、陸上や淡水に生息する動物より2億年も早くから発光パーツを進化させてきたので、生物発光を進化させるのには十分な時間があったというものです。
それなら、2億年後には、海洋以外の動物がこれに追いついて生物発光を進化させている可能性があります。
しかし、エイ科魚類は過去1億5000万年の間に少なくとも27回、さまざまな種が独自に発光機構を進化させています。
このことは、生物発光が実際にはもっと短期間で進化させられることを示しています。
つまり、海以外の生物も発光パーツを進化させるのに十分な時間があったはずなのです。
障害物・水が原因説
海以外の環境、例えば森などには光を遮る障害物がたくさんあり、海の中のようにライトアップが有効でない可能性があります。
あるいは、ただ単に水中の方が発光しやすいだけなのかもしれません。
また、体内で光を作り出す化学物質は、動物が素早く処理できない場合、有毒なレベルまで蓄積される可能性があり、水はその化学物質を致命的になる前に洗い流すのに適しているのかもしれません。
しかし、それなら、淡水湖、特に1642mもの深さがあるバイカル湖のような暗い湖に生物発光種がいない理由を説明できなくなります。
生物発光種が海に多い理由はナゾのまま
海水中の塩分が発光に関与しているのかもしれませんが、実験ではその考え方は証明されませんでした。
暗闇も、(進化に要する)時間も、障害物も、水も塩分も温度でさえも、科学者を満足させるような理由は見当たらなかったのです。
実のところ、なぜ生物発光種が海の中でだけ発達しているのかについては、未だに解明されておらずナゾが残されています。
もしあなたなら、どのような仮説が思い浮かびますか?
もしかすると、この生物発光種のナゾを解明するのは、あなたかもしれません。