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大人になりたがらないウーパールーパーの生態

ウーパールーパーの生態動物・植物・生き物

ウーパールーパーは、幼生の姿のまま成熟し、繁殖能力を得とくする両生類です。

他の両生類のように変態して陸にはあがりません。

メキシコシティの湖で、一生水中にとどまり、成熟してもオタマジャクシのように尾びれで泳ぎ、フリルのような外側のエラで呼吸をします。

野生では絶滅寸前ですが、実のところ、ウーパールーパーは世界中の研究所で生き残っています。

不死身ではありませんが、足や尾、あるいは脊髄や脳の一部を失っても、失った部分を再生する驚異的な力を持つことから、研究対象となっているからです。

臓器や手足を再生できる動物は他にもいますが、私たちのように背骨を持つ脊椎動物でこれができるのは、ウーパールーパーだけなのです。

以下に、ウーパールーパーのおもしろい生態についてみていきましょう。

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ウーパールーパーとは

その名はアステカ神話で、死を逃れるため両生類の姿に変身した神、死と再生を司る神「ショロトル」の化身とされています。

世界で数頭しか残っていない野生のウーパールーパーは、メキシコシティの中心部、ソチミルコ湖が埋め立てられた運河に生息しています。

ここで800年以上もの間、この動物は人間と自然界、「霊的な世界と自然世界」「水生と陸生」「生存と絶滅」つなぐ存在でした。

陸にはあがらず一生水中で生活

他のサンショウウオの近縁種同様、ウーパールーパーは水中に産み落とされた小さくて透明な卵から人生を始めます。

ウーパールーパーの卵

ウーパールーパーの孵化

孵化後、外鰓(がいさい)と呼ばれるエラと平らなヒレ状の尾を持つ幼生に成長します。

ウーパールーパーの幼生期

ウーパールーパーのひれ

多くのサンショウウオはこれらの特徴を脱ぎ捨てて(変態)、肺を発達させ、陸地に這い上がります。

しかしウーパールーパーは決して陸地への移行を遂げません。

ウーパールーパーとサンショウウオの違い

成長しても、最大で約30cmまで、幼生期の生活様式を維持します。一生の間、水中で生活し、外側のエラや泳ぐための尾びれなど幼生時の特徴をもち続けます。

ウーパールーパーの呼吸方法

エラは血液細胞が脈打つため赤紫色で、水から直接酸素を吸収します。

ウーパールーパーのえらの様子

細かく枝分かれした構造のエラのおかげで、露出した表面積が広くなり、水中の酸素を吸収することができるのです。

呼吸する際は、そのエラをパタパタと動かすだけです。

しかし、それが機能しない場合、例えば水中に十分な酸素がない場合、ウーパールーパーにはバックアップシステムがあります。

皮膚表面から酸素を吸収することもでき、空気を吸い込むための完全に機能する肺ももっています。

ウーパールーパーの肺機能

これらの器官は、祖先が陸上で生活していた時代の進化の遺物であり、水から出てしまうとこの機能だけでは数時間しか生きることはできません。

ネオテニー(幼形成熟)

ウーパールーパーの肺は、隠蔽変態の稀な例です。

「隠蔽変態」という言葉は、動物が内部で次の発達段階に成熟しても、外見上はその変化を示さない現象です。

ウーパールーパーの場合、正確には「ネオテニー(幼形成熟)」と呼ばれ、幼生の姿のまま成熟し、繁殖能力を得とくします。

その柔軟性にもかかわらず、この素晴らしい脊椎動物は危機に瀕しています。

16世紀以来、ウーパールーパーの生息地であるメキシコのソチミルコ湖は、都会化に伴い、埋め立てられ汚染されてきました。

1527年のソチミルコ湖

1527年

2005年の姿、運河に縮小

2005年

現在、湖は数本の運河に縮小され、ウーパールーパーは外来種の捕食者らや、気候変動による水温上昇と闘っています。

すでに祖先の故郷の残骸であるこの地で、残る個体数は数十~数百匹に過ぎません。

ただし野生ではありませんが、世界中に散在する研究施設では、数千匹が飼育されています。

注目されるウーパールーパーの再生能力

科学者たちは、ウーパールーパーが損傷した四肢や臓器、さらには脳の一部をも急速に再生する能力に驚いています。

これは、私たちのような背骨を持つ動物(脊椎動物)にとって驚くべきことです。
この治癒能力を人間に応用できれば、画期的な発見となるでしょう。

しかし、動物が飼育下でしか繁栄できないなら、それは何を意味するのでしょうか?

自然の生息地を失った種とは何でしょうか?

今、ウーパールーパー野生生息地の残存部分を保護するため、メキシコ国立自治大学の生物学者チームは革新的な協働プロジェクトを開始しました。

彼らは、「チナンパ」と呼ばれる伝統的な浮き庭園を運営する農家と協力しています。

この庭園はソチミルコ運河沿いにあり、ウーパールーパーが今も生息する場所です。

農家は、農作物に運河の水を濾過するために、在来の水生植物と砂利を使用し、農薬は使用しません。

これにより、ウーパールーパーは、汚染と外来の捕食者から保護されています。

メキシコシティの多くの人々にとって、ウーパールーパーは、人間と自然界のつながりを象徴する存在となっています。

伝統的な知識、尊重、そして工夫を活かせば、これらの驚くべき動物に復活のチャンスを与えることができるかもしれません。

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