サメにはなぜ骨がないのか?サメが頂点捕食者になれた理由とは

2020年2月19日

サメは、エイやギンザメと同じように骨を持たない軟骨魚類の仲間です。

それは、サメが大昔から変わらぬ原始的な骨格をもった「生きた化石」であることを意味するのでしょうか?

答えは「No」です。サメは、原始的でも単純でもありません。おそらく骨を持たない最も複雑な生物で、実際に、サメの生物学的機を評価して魚として分類するのを好まない科学者のなかには「魚のような脊椎動物」と呼ぶものもいます。

なぜならサメは、他の魚とは異なり、骨質のエラ蓋や硬い骨格をもちませんが、動物の骨のように筋肉と接着して体を動かす役割を皮で果たし、哺乳類のような胎盤をもつ種さえいるからです。

さらに、彼らは非常に洗練された感覚器官をもち、他の魚に比べて体重比の大きな脳では、迷路を学ぶことや仲間との意思疎通なども行え、社会性を示す行動もしばしば確認されています。

近年では、強靭で柔軟なウロコを巧みに動かして水抵抗を減らす能力が、航空力学にも応用されているほどです。

それでは、そのような優れた能力をもつサメには、そもそもなぜ骨がないのでしょうか。これについて、ここでは軟骨魚類のサメが頂点捕食者になれた理由を考えながら紹介していきます。

軟骨魚類のサメは独自に大きな進化を遂げた

私たち人間における「骨」の役割は素晴らしいものです。

骨は、身体を守る強靭で軽快な鎧となるだけでなく、赤血球も生成します。さまざまな活動ができるのも、筋肉が骨にくっついて伸びたり縮んだりしているからです。

ここで問題です。身体の中心に背骨がある脊椎動物の中で最も数が多いのは哺乳類や鳥類、爬虫類、両生類、魚類のうちどれだと思いますか?

実は、地球上で最も繁栄している脊椎動物は魚類だといわれています。約28,000種を超え、そのほとんどが硬い骨からなる硬骨魚類です。

さて、あなたにとってサメは、単に魚類の一種のように見えるかもしれませんが、進化的に考えると、そのような硬骨魚類にとっては、軟骨魚類のサメよりも私たち人間の方がより関係が深いようです。

というのも私たちのような陸上の脊椎動物が硬骨魚類から分岐したのは約3億年前ですが、軟骨魚類は、それよりもはるか昔の約4億年前には硬骨魚類と分岐して、独自に大きな進化を遂げてきたからです。

サメのウロコは、歯と同じ

なかでも楯鱗(じゅんりん)と呼ばれる皮膚において、サメは他の魚とは完全に異なるウロコを獲とくしていきました。

サメの体は「歯」と同じ物質からなるウロコで覆われいるため「皮歯(ひし)」とも呼ばれ、それぞれが血管から栄養を与えられています。

最近の研究では、この頑丈なウロコが、後ろに向かって尖って生えることで水の摩擦抵抗を減らして推進力を高め、周囲に渦を作ることで安定した泳ぎに貢献していることも分かってきました。サメの体が速く泳ぐのに適した紡錘形であるほかにも見えない工夫があったようです。

そして驚いたことに、英国ケンブリッジ大学の研究主任アンドリュー・ギリス氏らの研究によって、サメだけでなく人間の歯の細胞も、サメに似た原始的な魚のウロコと進化的な関係があるのではないかと考えられるようになりました。

それなら私たちの歯も虫歯になるとサメの歯のように抜け代わればいいのですが、残念ながらサメの歯は、人間の歯ほど複雑ではなく、レイアウトもシンプルだからこそ簡単に交換できてしまいます。

詳しくはなぜ人間は歯医者に行かなければならないの?を参照。

サメは骨なしでなぜ生き残れたのか

サメにも赤血球があります。

赤血球は、骨の内部で作られることはよく知られています。

それでは、サメは骨なしでどうして生き残れたのでしょうか。

実のところサメは、骨ではなく、生殖腺を取り巻くエピゴナル器官や、ライディヒ器官と呼ばれる軟骨魚類特有の食道付近にある組織の束などで赤血球を生成します。

どうやら、骨がないことで絶滅しなかった理由を考えるよりも、ここからは軟骨でできた骨格が、サメを食物連鎖の頂点にした効果的な理由について考えた方がよさそうですね。

サメが頂点捕食者になれた理由

さて、生態学的には、捕食者は被食者よりも身体が大きかったり、足が速かったり、機動性が求められたりします。

それでは、軟骨は、捕食者であるサメにとってどのように役立つのでしょうか?

注目すべきは、軟骨が骨よりも軽くて柔軟性があることです。サメは多くの硬い骨からなる魚に比べて、軽い骨で体を鋭角に曲げることができます。これは、パワーと機動性の両方を向上させる素晴らしい組み合わせです。

それはまだ話の半分に過ぎず、軟骨魚類であるサメにはさらに奇妙な特徴があります。

他のほとんどの脊椎動物とは異なり、サメの筋肉のほとんどは骨格にさえつながっていないのです。

もちろん、一部の筋肉はサメの骨格組織に接続しています。その最たる例が頭蓋骨から独立した顎で、発達した主要筋肉は皮膚のすぐ下のコラーゲンでできた伸縮性のあるらせんネットワークに接続しています。

これは、節足動物にもみられ、彼らの顎の筋肉は外骨格に直接つながっています。脊椎に接続するのではなく、動物の外側を直接つかんで引っ張ることにより、筋肉はより大きな力を発揮するようです。

このコラーゲンでできた骨格は、ゴムバンド、または、バネのようなものとしても機能します。

サメが曲がると、コラーゲンが片側に伸びて、エネルギーがその組織に蓄積されます。次にサメは、コラーゲンが所定の位置に戻るようにリラックスして尾の位置を元に戻します。この尾びれの振りが次の尾の動きの推進力を促進します。

また、深海で捕食する種においては、硬骨よりも軟骨の方が適しています。

事実、サメの生育地域は、深海を含む世界中の海洋に広く分布し、淡水や汽水域にまで及び、種類だけでも、体長20cmほどの小さなツラナガコビトザメから20mにも及ぶジンベエザメまで500種をも超えるといわれています。

このようにして、全身の骨格が強靭で柔軟な軟骨からなるサメは、他の脊椎動物よりもはるか昔に魚類と分かれ、独自に大きな進化を遂げてきたおかげで、海洋食物連鎖の頂点の座を獲得してきたのです。

最後に

サメの骨格は、強靭で柔軟だとはいえ、軟骨で構成されているため、時の試練にはあまり耐えられません。

残念ながらサメが少なくとも4億2000万年前から存在し、恐竜を約2億年前から捕まえていたとしても、博物館の展示でサメの古代の骨格を見ることはないでしょう。

そのため、化石記録としては、骨ではなく歯に依存せざるを得なくなります。

実際に、記録上最大のサメだといわえれるメガロドンの唯一の証拠は、彼らの歯です。それは、メガロドンという名が、「非常に大きな歯」を意味するラテン語からきていることからもわかります。