サッカーボールをよく見ると、完璧な球形ではないことがわかります。
球体に近づけるために、幾何学の定理(アルキメデスの立体)に基づいた平面を組み合わせた「切頂二十面体(せっちょうにじゅうめんたい、truncated icosahedron)」と呼ばれる形です。
しかし、2010年、南アフリカ開催のFIFAワールドカップで使用されたボールは、W杯史上最も丸いサッカーボールとして注目を集めました。
大会では、この丸みが試合で明らかなプレーの違いをもたらしたといわれています。
W杯史上最も丸いサッカーボール
4年に1度開催されるFIFAワールドカップでは、大会期間中に使用される公式球が発表されます。
11番目にあたる2010年版の公式試合球は、南アフリカに11ある公用語のひとつ、ズールー語で「jabulani(ジャブラニ)」と命名されました。
重さ439g、円周69cmのジャブラニは、これまでの常識を覆す溝(凹凸)とパネル形状を誇り、フィールドプレイに革新的な要素を提供しました。
縫い目の溝がない効果
驚くべき空気力学的特性のおかげで、飛行中に並外れた保持力と安定性を提供するように設計されたのです。
縫い目がないことで、吸水率が下がり、天候による影響を受けにくいことや、蹴る場所によるインパクトに均一性が生まれます。
それは、アディダスが、これまで製造したボールの中で最も正確で安定したボールだと主張するきっかけとなるほど、科学技術を詰め込んだボールでした。
丸いボールの問題点
一方で、ジャブラニがW杯史上最も丸いボールであったという事実は、多くの批判をある程度正当化するものでもあったようです。
縫い目による溝のなくなった丸いボールは、ビーチボールのように浮きやすくなったり、空気摩擦の影響を受けたカーブを描きにくかったりといった問題点も浮き彫りになりました。
これまで名選手ら放ってきたブレ球も生まれにくくなります。
実際に、南アフリカW杯では、少なからずボールの影響が得点数や個人技に出たことを指摘する監督や選手の声が多く聞かれました。
サッカーは世界的に注目されているスポーツであるがゆえに、最大規模の大会で使用されるボールはいつも大きな注目を集め、しばしば科学的な分析が行われます。
ジャブラニの丸さへの批判を受けて、今後のワールドカップでの理想的なボールデザインについては、かなり検討されたようですが、これからも様々な試行錯誤は続きそうです。