ゾッとするかもしれませんが、多くの動物にとってフン(糞)はよくある食事メニューのひとつです。
以下に、ウサギやゴリラ、コアラなどの動物が糞を食べる理由について、糞には何が含まれているのか、毒性はあるのかなどを分かりやすく紹介します。
どうやら糞は、必ずしも私たちが考えるほど危険なものではなく、(消化しきれなかった)栄養分や必要なバクテリアが含まれているため、多くの動物にとって魅力的な食糧源になっているようです。
糞(便)の毒性は低い
腐敗したチーズ(カース・マルツゥ)、猫の排泄物でできたコーヒー(コピ・ルアク)、虫やカタツムリ、アヒルの卵(バルト)。
人間は変なものをたくさん食べますが、決して食べないであろうものがあります。
それは、自分の排泄物(うんち)。
考えただけでもゾッとしてしまうのは、おそらく便には有害な病原体が含まれているであろうことを知っているからでしょう。
たしかに病気の人の排泄物には、細菌やウイルス、寄生虫などが含まれており、触れたものを汚染します。
一方で、健康な人の便に含まれているのは、ほとんどが水分で、その他は無害なバクテリア、未消化の食物、代謝産物や死んだ細胞などだといわれています。
実際に、毒物管理センターは、人間であろうと何であろうと便を誤って摂取しても毒性は低いと示しています。
なかには、治療が困難な腸炎に対処するために健康な人の便の錠剤を処方する医師もいるようです。
糞(便)には(未消化の)栄養分が含まれている
また、消化プロセスでは通常、食べ物からすべての栄養分を吸収できません。
要するに、便には(消化しきれなかった)栄養分が含まれているのです。
たとえば、草食動物は、食べ物の栄養素の3分の1を消化できずに糞に残します。
その結果、フンコロガシやハエのように、他の動物の糞から得られる栄養分だけで生活している生き物もいます。
糞に残された栄養を摂取する目的で食べる動物
何千年もの間、人間は豚小屋の上にトイレを作ってきましたが、それは豚が人間の便からほとんどすべての栄養を摂取できたからです。
犬に関しては、多くの犬が新鮮な糞に含まれるビタミンや酵素などの栄養素をその鋭い鼻で嗅ぎ分けています。
また、動物の中には、自分の便から残りの栄養素を取り出す種もいるほどです。
たとえば、ゴリラがディアリウムという木の硬い種を食べた場合、腸内細菌は硬い種を柔らかくしますが、彼らの消化システムでは栄養分はあまり取り込めません。
そのため、ゴリラは調子が悪い時には、自分の排泄物を食べて、種子に含まれる未消化の脂肪やナトリウムをたっぷりと摂取しています。
南ヒクイドリは、コバナミフクラギという大きな果実をついばんで丸呑みにします。しかし、鳥の消化管はとても短いので、果実のほとんどを糞として排出してしまいます。
そのため、ヒクイドリは、糞を食べて、果実を再び消化して栄養を得ているのです。
なかには自分の便を必ず食べなければならない動物もいます。
たとえば、ウサギ。彼らは牛のような反芻動物と同じものをたくさん食べますが、牛のように長くて複雑な消化器官を持ってはいません。
ウサギの消化管はずっと短いので、内部の微生物が植物の硬い細胞を分解するのに十分な時間を得られないのです。
そのため、ウサギは、まず、植物を美味しく食べた後に、柔らかい粘液で覆われた塊状の糞をします。その中には、消化しきれなかった食べ物と、それを消化する微生物が含まれています。
そして、栄養分を取り戻して微生物を自分の腸内に戻すために、糞のパッケージ全体を排泄後すぐに食べて、改めて消化し直すのです。
最後に、ウサギは本物のウサギの糞をします。
腸内バクテリアを体内に取り込む目的で糞を食べる動物
コアラも自分の糞を食べなければならない動物のひとつです。
赤ちゃんは、少なくとも母親の糞を食べなければなりません。
コアラは、繊維質で毒性のあるユーカリの葉を好んで食べるからです。
しかし、赤ちゃんは、それを分解するのに必要な特別なバクテリアを持って生まれてくるわけではありません。
そのため、生後数週間の間、母親から特別な便宜をもらいます。
それは、ママが赤ちゃんに栄養を与えると同時に、将来の食べ物を消化するのに必要な微生物を入れ、腸のために作った特別なレシピ、緑色でバクテリアと愛情がたくさんつまった母親の糞です。
糞を食べるのも動物の生存戦略のひとつ
動物が自分や他の動物の排泄物を食べる行為を「食糞」といいます。
糞を食べるなんて、気持ち悪いというのが正直な感想かもしれません。
たしかに赤ちゃんに糞を食べさせるというのは、とても奇妙な戦略のように感じますが、動物にとって、栄養の摂取はそのまま命にかかわる大事なこと。
世界には、肉食動物に自分の赤ちゃんを食べさせるという、さらに奇妙な生存戦略をもつ親がいます。
クアッカワラビーです。
そうです。あのいつも笑ったような口元から「世界一幸せな動物」として、世界中の観光客を魅了しているかわいらしい小動物。
自撮り撮影の相手として大人気の彼らには意外な一面があります。
クアッカの母親は、捕食者に追い詰められると、ときどき自分の袋から無力な赤ちゃんを取り出して、ポイっと置き、逆の方向に逃げることがあるのです。
これは、お腹の袋に赤ちゃんのスペアを持っているからだそうです。