犬や猫をペットとして飼っていると、エサと水を欠かさずに与えなければなりません。
しかし、魚を飼っている場合は、エサは与えても、水は与える必要がありません。なぜなら魚の周りには、水がたくさんあるからです。
そこで、疑問がわきます。果たして魚は本来、水分補給をする必要があるのでしょうか?
実は、魚の中には、水を飲まなければならないものと、飲まなくても生きていけるものがあります。どうやらそれは、魚が住む場所と密接なつながりがあるようです。
ここでは、魚の水分補給の必要性について、淡水魚と海水魚の違いを中心に科学的に分かりやすく紹介します。
生き物にとって水分補給はどうして必要なのか
魚が水を飲む必要があるかないかは、住んでいる場所によります。
人間の場合は、生きていくためには、たくさんの水が必要です。
それには、多くの理由がありますが、重要な点は、体が手や足など異なるパーツで構成されており、それらがともに働いていくためには、絶えず同じ量の水が必要となることです。
人間は、体内の水分量が少なすぎると、のどが渇いて水を飲もうとします。そして、水分量が多すぎると、余分な水を尿や汗として排出します。
魚も同様に、生きていくには、体内の水分量をいつも適切に保つ必要があり、その水分量は、外部環境の影響を大きく受けています。
魚の水分補給方法
ほとんどの魚は、2種類の水の中で生きています。池や湖、川などに住む淡水魚、そして、塩分濃度の濃い水に住む海水魚です。
一般的に、魚は淡水魚であろうが海水魚であろうが体液濃度は同じですが、住む環境(塩分濃度)によって、水分補給の必要性が決まるようです。
淡水魚
淡水魚は、えらから塩分の含まれない水を取り入れるので、体内の水分量を適切に保ちやすいといわれています。
えらは、魚が呼吸をするために使う部位で、口から水を飲んで酸素を体内に取り入れた後、余分な水分をえらから体外に出しています。
体内よりも塩分濃度が低い(体液の方が塩分濃度が高い)ところに住んでいる淡水魚は、浸透圧の関係で、えらや体から水分が自然と体内に吸収されていくため、私たちのように水を飲む必要はありません。
浸透圧とは引用:溶媒・溶質が同じで濃度の異なる2つの溶液があると、溶媒分子は、濃度の低い(溶質分子の密度が相対的に低い)溶液から濃度の高い(溶質分子の密度が相対的に高い)溶液に移動する
ja.wikipedia.org
それよりも淡水魚は、体外から水分がどんどん入ってきてしまうので、水分を摂取しすぎないように注意しなければならず、余分な水を排出するためにエネルギーを使っています。
実は、はちみつが腐りにくいのも、死海では生物が生きられないのも、112mの高木が乾期で生きられるのも、塩分が植物を枯らすのもこの浸透圧が関係しています。
海水魚
えらから水分が吸収される淡水魚に比べて、体液よりも塩分濃度が濃いところに住んでいる海水魚は、浸透圧の関係で、えらから海水を取り入れるたびに、体内からどんどん水分が奪われてしまいます。それは、たくさんの水分補給をしなければならないことを意味します。
ほとんどの生き物は、たとえ喉が渇いたとしても海水を飲むことはできませんが、海水魚は異なり、常に海水をごくごく飲みこんでいます。
それは、魚が、塩分を体外に効率よく排出して体のバランスを保つという特別な体内システムをもちあわせているからです。