霧を飲む植物「世界一高いセコイア」が乾期を生き抜く方法

霧を飲む植物「世界一高い木」はどうやって乾期を生き抜くのか動物・生き物

112m以上にもなる世界一高い木「セコイア(レッドウッド)」の生育地には乾期があります。

今回は、セコイアの木が、根以外の秘密のところで水を飲む仕組みに注目し、彼らが「霧」を利用した素晴らしいアイデアで乾期を力強く生き抜く姿を紹介します。

セコイアは北アメリカの西海岸、主にカリフォルニア州に生育しますが、その地域には、雨が降らない時期「乾期」があります。

しかし、セコイアの木は植物であり、植物が生きるためには水が必要です。

ほとんどの植物は地下の根から水を得ていますが、乾期の一定期間、乾燥してひび割れた大地で、どうしてあのように大きな木が生き延びられるのでしょうか?

この植物が空気から純粋な水を取り込むメカニズムは、これから発展途上国や水不足の国々できれいな飲み水を集める方法を見つけるヒントになるかもしれません。

乾季に特別な水源を持つ植物

セコイアの木は、乾季に特別な水源を持っています。

それは、一般的な木がするように根から水を吸い上げるような方法ではなく、植物の別の部分を使って水を得ています。

なんとセコイアは、針葉樹の葉を使って水を飲むことができるのです。

さて、一般的に植物は乾季でも根から水を吸い上げ、成長や生存に役立てていますが、針葉樹はそれだけではありません。

葉の仕組み

植物の気孔

見た目にはわからないかもしれませんが、セコイアの針のような葉は、他の葉と同じように、表面に顕微鏡がないと見えないほど小さな穴「気孔」で覆われています。

細い葉の表面には、たくさんの穴があり、この穴のような構造が、植物の体内に物を出し入れするという重要な仕事をしています。

例えば、外が暑いとき、気孔は水蒸気を植物の外に出します

それによって植物は涼しくなるのです。

それは、私たちが、皮膚の表面にある汗腺と呼ばれる穴から水分の一部を汗として体外に出して体を冷やすのと同じ。

ただし、気孔から出る水蒸気は水と同じものですが、体についた汗のしずくとは見た目が少し違います。

気体と呼ばれるものだからです。

植物が水分を葉から排出する「蒸散」

植物の蒸散

気体はどのような形をしているのでしょうか?

さて、手に息を吹きかけてみてください。

何が見えますか?

気体は目には見えません。

見えないので分かりにくいかもしれませんが、あなたは今、いくつかの水蒸気を含んだ気体を吐き出しています。

同様に、植物の葉が大量の水蒸気を吐き出しても、普通は目に見えないのです。

このように、水蒸気が植物の葉から出て行くことを「蒸散」といいます。

蒸散は水分を排出するものです。

それでは、そもそもセコイアの木はどのように水を得ているのでしょうか?

植物が根から水分を吸い上げる仕組み

ほとんどの場合、植物は根で吸収した水を、導管と呼ばれる死んだ細胞の隙間を通して全身に巡らせた後、葉から水蒸気として外に出しています。

このとき、水が導管を通って上がっていくためには、植物の上と下の気圧の違いや下のような力が働いています。

  • 水をたっぷりと吸収した根の細胞が、水圧を高め、水を上に押し上げる(根圧
  • 水分子がお互いにひっつく力(凝集力
  • 蒸散によって、水が失われたことで下から水を引っ張る力が生まれる(浸透圧

しかし、土が乾燥して、根から吸収される水の量が十分でない場合、植物は気孔から大気中の水蒸気を直接取り込むことができます

セコイアは気孔を開いて大気中から水分を取り込む

霧で水分補給をするセコイア

これは、セコイアの森のような環境に生息する植物にとっては、とても有利に働きます。

なぜだかわかりますか?

ヒントは、このセコイアの森の写真にあるわよ。

セコイアの木は通常、霧の多い場所に生息しています。

ご存知の通り、霧は雲によく似ており、水でできています。

もし霧が水ならば、セコイアの木は、地面が乾いていても、気孔を使って葉から空気中の水分を取り込むことができるはずです。

セコイアは、乾季でも根を使いますが、地中には水があまりないので、葉で補うことで、必要な水をすべて得ることができるのです。

空気から純粋な水を取り込む科学技術への応用

サボテンをはじめとする砂漠の植物の多くは、特別に進化した根を使って貴重な地下水を吸い上げています

しかし、なかには、セコイアのように葉で霧や水を飲む種もあります。

たとえば、砂漠の苔には、地面からではなく、空気中から直接水を吸い上げる種がいます。

苔の先端についたawnsと呼ばれる小さな繊維が、霧や水滴を集めることを可能にしているのです。

この仕組みを理解するために、ユタ州立大学のTadd Truscott氏は、顕微鏡で、長さ0.5mmから2mmの繊細なawnsが大気中の水をどのように取り込むかを撮影しました。

撮影では、awnsの表面にあるナノサイズの溝に、水蒸気が凝縮する様子が確認できました。

小さなの突起部分がこの水を押し出して大きな水滴にし、それが溝に沿って1秒間に10mmから20mmの速さで葉の中に移動したのです。

この霧の水分を捕らえる能力は、サボテンや高山植物にも見られますが、凹凸を含むメカニズムが解明されたことは大きな一歩です。

アフリカのナミブ砂漠のような乾燥した場所でも、定期的に霧が発生するので、この生態メカニズムが応用できると、大気からきれいな水蒸気を採取して保存することができる人工的な集水装置の開発につながるかもしれません。

これから発展途上国や水不足の国々で、きれいな飲み水を集めるために期待できそうです。

植物には不思議がいっぱい

いかがでしたか?

100メートルを超える大木が、空気中の水を飲むことができるなんて、本当に驚きですね。

皆さんも外の木に生えている葉っぱを観察してみてください。

身近な植物たちが、目には見えないところで、何かすごいことをしているのかもしれませんよ。

参照元:
How Plants Drink Fog!
newscientist