信じられないかもしれませんが、研究がすすむにつれて「動物はどんな夢を見ているのか?」を特定できるようになっています。
たとえば、起きている間の出来事を夢で7倍速で再現するネズミ、夢で歌の練習をするキンセイチョウ、なんと、タコにおいては悪夢と闘っていることが研究で示されました。
さっそく以下に、科学者らが、鳥からタコまでたくさんの種類の動物の脳と行動を研究して分かってきた動物の夢について紹介します。
夢を見る理由
夢に関しては、人間に関するデータの次に多いのが、げっ歯類(ネズミ目)です。
実際に脳に関する知識の大部分はネズミから得たものだといわれています。
人間もげっ歯類も、夢を見る主な理由の1つは、その日の出来事を整理し、記憶を定着するためだと考えられています。
ネズミの夢は7倍速
ただし、ネズミは、人間とは異なり、それを早送りで行うようです。
研究では、ネズミは眠っている間、その日の出来事を頭の中で7倍速で回想することが分かってきました。
その日の出来事を夢で再生している
アリゾナ大学の研究者らは、起きている時間にネズミを道に沿って走らせるように訓練し、その間、ネズミの脳で前頭前野と呼ばれる意思決定にたずさわる部分のニューロンの出力を記録しました。
ネズミの脳で、どの細胞がどの瞬間に活動しているかのパターンを探る調査で、眠っている間にも同様のパターンを調べました。
すると予想どおり、訓練前の睡眠では見られなかったパターンが、訓練中に初めて現れ、それが訓練後の睡眠中に再現されたのです。
さらに驚くべきことに、そのパターンは訓練中は通常モードで再生され、眠っている間は高速モードに加速したのです。
たしかにげっ歯類がこれを行う速度は特別ですが、他の多くの動物も、日中に学んだことを夢で再生すると考えられています。
しかし、他の動物はまったく異なる夢を見ています。
キンセイチョウは夢の中で歌を練習
オスのキンセイチョウにとって、父親から「歌い方を学ぶ」ことは人生でとても重要だとされます。
歌は、メスがオスを選ぶときの判断材料の重きを占めるためです。
キンセイチョウにとって歌は、配偶者を見つけ、子孫を残すことに直結します。
メスにとっては、複雑な歌を歌えるかどうかが、オスの能力の判断基準となるため、オスは、できるだけ複雑で凝ったメロディーを歌えるようにトレーニングに勤しんでいます。
眠っているときでさえもです。
実は、キンセイチョウが夢の中で歌を練習していることを示すデータがあります。
シカゴ大学の研究者たちは、鳥が歌っている間と眠っている間の個々の脳細胞の活動(歌をコントロールするために存在する神経回路)を記録しました。
すると、睡眠中に、歌っているときと同じパターンが発見されたのです。
ただし、7倍速で繰り広げられるネズミの夢とは対照的に、これらの鳥の歌の間合いは、起きているときと同じものでした。
さらに、研究では、悪夢と戦っている動物もいることが分かりました。
悪夢と闘う頭足動物
タコやイカなどの「頭足動物」の夢は強烈です。
彼らの眠り方は、私たちが悪い夢を見て寝返りを打つ経験に関連したものだと示されています。
基本的に、私たちが寝返りを打つのは、夢の中の脅威に体が物理的に反応しているからだと考えられています。
そして、頭足動物も同じような反応を見せます。
睡眠中に脅威に反応
彼らは起きているときは、この色を変える能力を使って敵から身を隠したり、仲間とコミュニケーションをとったりします。
しかし、眠っているときは、周囲とは関係なく色を変えることがあるのです。
ペンシルバニア大学とミラーズビル大学の研究者たちは、これは彼らの頭の中で起こっていることに対する反応であり、夢に対する私たちの身体的な反応のようなものだと考えています。
そして、彼らが睡眠中に脅威に反応しているのだとしたら、例えばウツボに襲われるような悪夢を見ている可能性があるようです。
ネコもレム睡眠中に夢を見る
猫も、頭足動物や私たちと同じように、眠っている間に体をピクピクさせたり、目を素早く動かしたりすることがあります。
そこで、シカゴ大学の研究者たちは、猫の行動原理を解明したいと考えました。
そして、眠っている猫の脳波を測定した結果、猫の脳は起きているときの脳とよく似ていることを発見しました。
もちろん、猫に何を夢見ていたのか尋ねることはできませんが、猫の脳活動は、私たちが夢を見ているときの脳の活動とよく似ているので、とても研究が進んでします。
睡眠中に目を動かすときの夢
猫は、夢の中で何かに注意を向けているとき、たとえば、エサを探したり、危険を察知したりするために、周囲を探っているときに、目をすばやく動かしていると考えられています。
実際、ある研究では、レム睡眠中にネコの目が頭と連動して頻繁に動いていることがわかりました。
つまり、猫は眠っている間に目だけでなく体の他の部分も方向付けているのです。
そして、目と頭の動きの直後に、猫は飛び上がって攻撃するために行動を起こすような信号を送り、手足を動かすこともあると科学者たちはいいます。
つまり、少なくとも時々は、リスやネズミを追いかけるなど、猫が警戒を強めるようなことについて夢を見ていた可能性があるということです。
しかし、ネズミで行ったような研究を行い、リスを追いかけているときと眠っているときの猫の脳を比較するまではできていません。
動物の夢
人間、げっ歯類、鳥、頭足動物、猫は、それぞれに異なるストレスのある、異なる環境で生きています。
ゆえに、私たちと動物の夢に多少の違いがあるのは当然のことです。
そうやら、起きているときに私たちが何を考えているかということが夢に影響するようです。
通常、私たちはそれについて夢を見ています。日々を思い出し、恐怖を表現することに関しては、他の動物も私たちとよく似た夢を見ているようです。