ヘビのウロコが人工義足やシューズ作りのヒントに

2021年8月 6日

医学は進歩し続けています。

しかし、まだまだ未解決の問題もたくさんあります。

そのひとつが、より良い人工股関節の開発。

人工的につくられた股関節は、どうしても人間が本来もつ関節に比べて接触部分の摩擦が大きいというデメリットが生じてしまいます。

使ううちに、すり減って摩耗してしまうのです。

そこで今、快適で長持ちする人工関節を作るのに頼りにされているのが「ヘビ」。

股関節のない生き物に助けを求めるなんて不思議に感じですよね。

しかし、ヘビほど摩擦を減らすのがうまい生き物はいません。

ヘビがどのようにして摩擦を避けるのかを理解することは、より良い人工股関節を作るだけでなく、様々な日用品を作るうえでも役立ちます。

ヘビの這う能力

考えてみると、ヘビの這う能力は、とても素晴らしいものです。

進化は彼らの皮膚を、地球上の最も荒れた大地を滑るように、そして同時に、滑らかな壁を登ったり、滑りやすい岩を乗り越えたりするのに必要なグリップ力を与えるように形成しました。

そして、多くの種が道具の助けを借りずにこれを達成しています。

どうやらこれには、ウロコの配列が関係しているようです。

ヘビのウロコの秘密

ヘビの皮膚は、鱗が一方向に重なり合っています。

これによって、柔軟で連続した表面が形成され、摩擦を最小限に抑えて滑ることができるのです。

しかし、蛇はときに、摩擦を利用して体を動かすこともあります。

これは人間の目には見えませんが、ウロコには「フィブリル」と呼ばれる髪の毛のような微細な階層構造が埋め込まれています。

ウロコの大きさや形、ウロコとフィブリルの位置関係によって、ヘビの種類ごとに特有の摩擦特性が生まれているのです。

例えば、ボアやパイソンのような大きくて体の重いヘビは、通常、直線的に移動します。

そのためには、体の一部を持ち上げて、地面を押して体を前に押し出すようにして前進する必要があります。

技術者が顕微鏡でよく見てみると、おなかのウロコのように地面を押す部分には、より多くのフィブリルがあり、ヘビはその部分で摩擦を増やせることが分かりました。

ヘビは脱皮をするので、動物を傷つけることなくこのようなミクロの研究がしやすいようです。実際に、多くの種からウロコやフィブリルのサンプルを採取してパターンを発見することができます。

ヘビのウロコが摩擦をコントロールする仕組み

偶然にも、ヘビの皮と実験室で作られたテクスチャー表面には共通点があり、研究者たちが学んだことを工学的に明確に応用することができます。

例えば、どちらの素材も繰り返しのテクスチャーがあり、表面の粗さが摩擦プロファイルの形成に役立っています。

また、ヘビのウロコには、独特の間隔、長さ、向き、形状があり、特定のグループのヘビは似たものをもちます。

同様に、実験室で作られた素材には、円錐形、窪み、突起などの繰り返しのパターンが表面に沿って分布しており、これらの高さや幅、分布を変化させることで、エンジニアは摩擦をコントロールすることができます。

ヘビが荒い地形を滑らかなに這うのは「ファブリル」がカギ

ただし、ヘビの皮は、使用可能な条件の範囲では、実験室で作られた材料よりも優れています。

人工的に作られた表面が、通常、特定の用途のためにのみ設計されているのに対して、ヘビ皮は、ウロコの質感や粗さを調整することなく、さまざまな地形を滑らかに進めるのです。

研究者たちは、それを可能にしているのは、フィブリルがカギになると信じています。

つまり、ヘビが地形によって摩擦プロファイルを変更できるのは、ヘビのおなかのどの部分、つまりどのくらいの数のフィブリルが地面に接触しているかを変えているからだと考えています。

ヘビの皮を義足に応用

そこで彼らは、ヘビの皮について学んだことを応用して、義足の股関節の表面に繰り返しの模様や突起を加えて、ヘビの繊維を模したものに改良し始めました。

ただし、人間の体内にある義肢に潤滑油を塗布するのは現実的ではないため、素材から考えて摩擦を減らすことが重要になります。

そのようにして考えられた最新の義肢であっても、摩擦の面では微調整が必要です。

ヘビの皮をさまざまな人工材料に応用

そこで研究者たちは、新しいデザインを実験室で試してみました。

研究チームは、楕円形の繰り返し模様をチタン製のピンに施し、蛇の皮のような模様にしました。

それを頑丈なプラスチック製の円盤に滑らせたところ、摩擦が約半分になりました。

さらに、ドイツの研究者も、レーザーを使ってスチール製のピンの表面に蛇の皮のような模様をエッチングし、それを別の金属の表面に当てて動かしたところ、摩擦が最大で40%減少したという結果が出ました。


研究者たちは、このヘビの皮からヒントを得た技術が、ロボット工学からF1レースカーから身近なものまで、幅広い分野で活用できると期待しています。

逆に、テニスシューズにおいては、シューズと地面の間の摩擦を増やすことを目指しています。

ウロコ模様の切り込みを入れた靴は、足を踏み出すときに地面に食い込んでグリップ力を生みます。

これは、高齢者にとって深刻なリスクであるスリップや転倒を減らすことにもつながります。

ヘビの進化が

いかがでしたか?進化の力を改めて実感したと思います。

何百万年もかかりながら、自然はすでに私たちの最も困難な工学的問題の多くに解決策を見出しているのです。