バナナは果物?野菜?
種がないのになぜ繁殖できるの?
世界からバナナが無くなるって本当?
など、バナナが特殊な果物だといわれる理由について、その繁殖方法や、種がないゆえの絶滅リスクなどを中心に紹介します。
実は、私たちがバナナの木だと思っているあの頑丈な幹には年輪はありません。
バナナは木ではなく「草」からできたかなり特殊な果物なのです。
基本的に私たちが食べる果物のほとんどは、種からできていますね。
種は植物の赤ちゃんのようなもので、次の世代の植物に成長できます。
しかし、バナナには種がありません。
たしかに野生のバナナの中には、種があるものもありますが、それらは大きかったり、ぎっしりと詰まったりして食べるのに苦労するような種で、少なくとも、私たちが食べているバナナにはないのです。
バナナに種がない理由
農場で育てられたり、お店で売られたりするのは、ほとんどがキャベンディッシュ(Cavendish)種と呼ばれるバナナの品種です。
そして、キャベンディッシュ・バナナには種はありません。
バナナの中に小さな黒い斑点が見えたら、それはまだ完全に形成されていない種で、大きくて丈夫なものには成長しません。
種のなごりのようなもので、遺伝子の突然変異によって染色体の数が変化し、種ができにくくなったと考えられています。
人間にとっては好都合な品種が自然にできたことで、私たちはそれを食べるために利用し繁殖させてきたのです。
バナナは種がないのになぜ繁殖できるのか?
種が無いのにどのようにしてバナナは子孫を増やしてきたのでしょうか?
バナナは、種がありませんが、親株脇の地表から伸びる新しい芽をタケノコのように株分けして増やすことができます。
バナナは、竹のように地下茎でどんどん増える繁殖力の強い植物なのです。
そのため、アジアンティストの観葉植物として鉢植えするにはよいかもしれませんが、庭に地植えしてしまうと地下茎に悩まされることになるでしょう。
さらに、バナナが特殊な果物だといわれる理由は種だけではありません。
バナナは果物?野菜?
私たちがバナナの木だと思っている植物は、実は木(年輪のある木本植物)ではありません。
草本植物(そうほんしょくぶつ)と呼ばれ、木質化した茎を持たない巨大な植物。つまり、草です。
すると、よく木になるのが果物、草になるのが野菜といわれるように、植物学上ではバナナのような草本性植物になる実は「野菜」に分類されます。
一方で、野菜は一年草のもの、果物は多年草のものという日本の定義で考えるとバナナは「果物」に分類されます。
なんだか矛盾だらけに感じてしまいますが、果物と野菜の定義については文部科学省も糖分量や食習慣を考えてあいまいな線引きをしているようです。
そのため、メロンやスイカなどと同じように、野菜に分類されてもデザートとして食べられる習慣があるものなどは果実的野菜として扱われています。
バナナの木は「草」だった
バナナには木のような幹があるように見えますが、実はその部分は仮茎とも呼ばれ、幹ではなく、葉っぱがぎっしり詰まって重なったもの。
バナナの葉っぱは、束になってどんどん背が高くなり、時には7.5メートルにもなります。これは2階建ての建物に相当する高さです。
さて、土の根本でバナナを切ると、葉の束の中に地下茎が見えてきました。
地下茎は、地面に埋もれた茎の部分で、そこから上には葉を出し、地中深くに無数の根を伸ばします。
バナナの繁殖方法における盲点
成熟したバナナには、上部に花の房が生えます。英語では、この房を「hand(手、ハンド)」と呼び、その花の手の一部が、おいしいバナナの指になるのです。
ひとつのハンド(房)には20本、ときには数百本近くの指がつくこともあります。
種から育つ植物は、1本1本が遺伝的に少しずつ異なりますが、バナナの新芽からとった株は、前の苗とまったく同じコピーができます。
しかし、これには子孫を残すうえで大きな問題を残します。
家族や学校で、ほとんど全員が同じ風邪をひいているように見えることがありますよね?
風邪はうつるものです。すでに病気にかかっている人からうつりやすいということです。
ただし、普通は全員が風邪をひくわけではありません。なぜなら、人はそれぞれ少しづつ違うからです。そして、幸運なことに、風邪に対する抵抗力がある人もいます。
でも、バナナは学校の子どもたちと違います。もし、あるバナナが病気になったら、世界中のバナナが病気になる可能性があるのです。
これは過去に、別の品種のバナナで実際に起こったことです。
バナナには絶滅リスクがある理由
昔、ほとんどの人はキャベンディッシュ・バナナではなく、グロス・ミシェルという品種のバナナを食べていました。
グロス・ミシェルは、キャベンディッシュ・バナナよりもおいしいと言われていましたが、60年以上前にある病気がバナナに流行し、世界のグロ・ミシェルバナナはほとんど壊滅してしまいました。
農業史上最悪といわれた「パナマ病」です。
幸いなことに、キャベンディッシュ・バナナにはこの病原菌への耐性があり、病気にはなりませんでした。
そこでバナナ生産者は、グロス・ミシェルの代わりにキャベンディッシュバナナを栽培するようになったのです。
しかし、キャベンディッシュバナナも永遠に食べらるとは限りません。バナナは常に絶滅リスクを抱えているからです。
世界からバナナが無くならないために
今、バナナを脅かす2種類の病気が注目されており、それが世界中に広がり始めています。
バナナ生産者と科学者は、この病気でバナナを全滅させないため、健康なバナナを育てるためのよりよい方法を見つけ、病気にかからない新しい品種のバナナを開発しようと大急ぎで取り組んでいます。
もしかすると、その鍵は、大きくて丈夫な種を持つ野生のバナナに戻ることかもしれません。
これまで、効率性を重視して同じ品種のバナナを大量に生産していましたが、これでは一度病気が広がると被害が一気に広がってしまいます。
そのため、将来的なバナナの感染拡大を防ぐためにも、より多様性のある新しい種類のバナナを作ることが求められているのです。
つまり、それぞれの植物が少しずつ異なるグループです。
しかし、この品種改良も他の果物のように、種同士をかけあわせることができないバナナの場合、遺伝子操作を行うなどしなければならず、開発が難しいといわれています。