木について調べると、そもそも何が木で、何が木でないのかを見分けるための明確な方法がないという矛盾点にたどりつきます。
そこで今回は、「木って何?草と木って何が違うの?」について、大きさや特徴から分類できるかを中心に分かりやすく紹介します。
さて、みなさんは、森林が生育できる限界点は標高何メートルくらいだと思いますか?
記録として残されているうちの一つが、北半球で最も高い樹木限界線の1つ、チベットの標高4,900mにあります。
では、ここでいう樹木、「木」とは何かを以下にみていきましょう。
木って何?草と木って何が違うの?
富士山を登っていくと、途中から高い木々による森は姿を消し、低い木がまばらな草地になっていき、山頂付近にもなると岩肌がむき出しになることに気付きます。
これは、標高が高いところの環境は、高い木が生きていくには厳しいためです。
このように森林を形成できなくなる境界線を「森林限界」と呼び、各地域の緯度や気候条件によって異なります。
樹木とは、木部でできた一本の硬い幹を持つ背の高い植物ですよね?
しかし、その定義を使うと、あなたが木だと思っている植物でも、実はそうではないものがあることがわかりました。
例えば、ヤシの木は背が高く、幹がありますが、その幹には、私たちが一般的に「木」と呼ぶような硬さや年輪(肥大成長する木部)はなく、水や栄養の通り道からなる複合的な組織でできているわけでもありません。
その代わりに、その幹は密度の低い繊維質でできています。
そういえば、大きなパパイヤの木にも年輪はありません。
バナナの木も同じで、まるで幹のようにみえる部分は、実は、細い花茎の周りを葉が何重にも重なって包むことで太くみえるだけなのです。
では、これらは木ではないのでしょうか?
ツゲの生け垣や盆栽のような木は、木といえるのでしょうか。
彼らは皆、木質の幹を持つものもありますが、一般的な低木よりも幹は短く、サイズも小さいですね。
また、アスペンと呼ばれる植物は、背が高くて木質ですが、根株から複数の幹が生えています。
竹においては、死んだ細胞からなる幹は硬くとも、中は空洞です。
これらも木なのでしょうか?
なるほど、植物の体の特徴に基づいて「木」を定義するのは、正しい方法ではないのかもしれません。
幸いなことに、生物を組織化することを専門とする科学の一分野があります。
きっと、分類学が「木」の定義に役立つはずです。
分類学で「木」を分類できるのか
結局のところ、生物のほとんどのグループは、お互いの遺伝子の関係によって分類することができます。
例えば、すべての霊長類は、霊長類以外の生物よりも互いに近縁であるとされています。
樹木の仲間も同じように分類できるかもしれません。
それでは、生物の進化の道筋を描いた類縁関係の図から木と草を分類できるかを見てみましょう。
まず、かしの木と松で考えてみます。
うーん、かしの木と松はそれほど近縁ではないようだね。
類縁関係の図をみると、かしの木は、木ではないはずの蘭(ラン)の方が、木よりもはるかに近い関係にあります。
また、カエデの木は、杉の木よりも、やはり木ではないキャベツの方がずっと近縁です。
どうやら類縁関係は想像以上に複雑で、私たちが木だと思っているものは、たくさんの異なる場所で何度も進化を重ねてきたようです。
結果的に、分岐分類学の系統樹(けいとうじゅ)を見ても、木とは何かを絞り込むことはできません。
木を明確に定義したものはない
研究者たちは試行錯誤していますが、木を定義するために世界共通で合意された明確な方法はありません。
分類学は役に立たないし、物理的な特徴も十分ではないためです。
世界をより深く理解するために、整理・分類することが必要な研究者にとってだけでなく、私たちのように、そこで何が起こっているのかを明確かつ簡潔に説明できるようになりたい人にとっても、自然や言語は途方もなく厄介なものです。
もしかすると、多少の不確実性を許容するのは良いことかもしれません。
そうでなければ、小さな問題にばかり気をとられて、全体像を見落としてしまうでしょう。「木を見て森を見ず」のように。
もちろん細かな考え方が必要なときもありますが、そんなときにも、森全体を見渡せるような心の余裕が必要となりますね。