火山の噴火は誰にも止められない力のように見えるかもしれませんが、地球上にはそれに耐えうる自然の力が少なくとも1つあります。
それは巨大な氷河の圧倒的な重さです。
今回は、氷河が火山の噴火を防げる理由について科学的に分かりやすく紹介します。
実は、火山は、地球のどこかで絶えず活動しているイメージですがそうではありません。
地質学的に言えば、地球は火山があまり噴火しない時期が10万年間以上も続いていたようです。
それは、約10万年から12.5万年前までの、氷河が地表の約3分の1を覆っていた時代。
氷河は火山の天敵
氷河は、火山が最も必要としている「マグマ」を奪うので、火山の天敵といえるでしょう。
では、ここでマグマを奪うとはどういう意味でしょうか?
みなさんもご存知のように、地球の表面は、何枚かの大規模な岩盤(プレート)で覆われ、それぞれがいろんな方向に移動しています。
通常、地球のマントルは、地殻にあるこれらのプレートによって上から圧力をかけられているおかげで固められています。
そのため、プレートにすきまができるなど何らかの形でこの圧力が解放されると、そこのマントルが部分的に溶けてマグマが形成されてたまり、それが地殻を通って上昇し(マグマは岩石よりも軽いため浮力で地表近くに上昇)、火山として爆発します。
実は、このタイプのマグマの形成はどこにでも起こるわけではありません。
それは通常、隣り合うプレートがお互いに遠ざかる境目の下(岩石よりも軽い)で起こります。
ただし、氷河期のように、巨大な氷河がプレートの境目の上にある場合を除いて。
氷河がマグマの形成を防ぐ仕組み
氷河はとてつもなく重いため、境目でもマントルに上から圧力をかけています。それが、マントルが溶けてマグマになるのを邪魔して、火山の発生を防ぎます。
また、氷河期の氷河は、他のタイプのマントルの融解も防ぎました。
隣り合うプレート同士が互いに近づいて衝突する場所で生まれるマグマです。
プレートが近づく境目で生まれるマグマを阻止する氷河
通常、プレート同士が衝突すると、1つのプレート(軽い大陸プレート)が重い(密度の高い海洋)プレートの下に沈み込み、マントル内の巨大な圧力が文字通り、沈みつつあるプレートから水を絞り出します。
その水がマントルに流れ込み、マントルの融点(固体が液体になり始める温度)を下げ、マグマを形成します。
氷河はおそらく、この種のマグマの形成(マントルの溶解)を妨いだのではなく、地殻とマントルに上から大きな圧力をかけたことによってマグマを上昇できなくしたと考えられています。
代わりに、マグマをマグマだまりに閉じ込めて、氷河が去るまでそこでじっと待たせました。
そして氷河期が終わりを告げ、氷河が去ったとき、マグマが元気いっぱい飛び出して火山が発生したというわけです。
推定によると、世界の噴火率は、氷河が溶けてから数千年で氷河期の6倍にも達したと示されています。
アイスランドだけでも、氷河期の直後に、それ以前の10万年よりも30倍多くの火山噴火が発生しました。
これから将来のある時点で再び氷河期がやってくると、火山の形成が再び止まる日が訪れるかもしれません。