手から離れ、空高く浮かんだ風船はどこまで行き、どうなってしまうのでしょうか?
今回は、見えなくなった風船に何が起き、最終的にどうなるのかについて、風船の仕組みや上空の大気の様子をもとに分かりやすく紹介します。
せっかくもらった風船が空に飛んで行ってしまった。
幼い頃にこのような悲しい経験をした人は少なくはないでしょう。
風船には、水素の次に軽いガス「ヘリウム」が入っています。空気よりも軽いので空高く浮かんでいき、やがては見えなくなってしまうのはそのためです。
では、空高く上がった風船は、雲よりも高く、大気圏を突破して宇宙まで飛んでいくことはあるのでしょうか?以下にみていきましょう。
風船が浮かぶ理由
空に浮かんだ風船にはいくつかの違いがあります。
一つは普通の風船、つまり伸縮性のあるゴムでできている風船です。
この場合、風船はどんどん空に向かって上昇していきます。
風船の中は、ヘリウムと呼ばれる気体で満たされているおかげで、周りの空気よりも大きさの割に軽くなっているためです。
水に浮く物があるように、風船も空気に浮かびます。
たとえば、プラスチックのスプーンを水の入ったボウルの底に押し込んでも、スプーンは再び上に浮かび上がってきますね。
ただし、ボウルの中の少量の水とは異なり、私たちの周りにはたくさんの空気があります。そして、それはとても高く広がっています。
そのため、風船はどんどん高く上昇していくのです。
しかし、高くなるにつれて、周りの空気は変化していきます。
空高く上がると風船は膨らむ
私たちの周りに空気があるのは、地球が空気を引力で引き付けているからです。
そのため、地球から離れて空高くなるほど、引力の影響が弱くなり、空気の量はうすくなります。
空気の量が減る(重さが減る)と、周りの空気の押す力も低くなり(気圧が下がる)、空気は膨らみます。
同じように、風船の中のヘリウムも膨らみ始め、風船のゴムを押し広げていきます。
そうなると何が起こるのでしょうか。
素材の強さによりますが、ほとんどの場合ヘリウムに押されて、それほど高くまで上らないうちに破裂して破片が地面に落ちてしまうのです。
これが、わざと風船を空に飛ばすのがよくない理由で、動物がこの風船の破片を食べ物と間違えて飲み込むことで、傷ついたり、命を落としたりする可能性もあるのです。
風船は上空で冷やされて、砕け散る
しかし、風船の強度が高ければ、これとは違うことが起こります。
風船はどんどん浮かんでいき、時には飛行機が飛ぶような高さまで上がることがあるのです。
先程、空気は上にいくほどうすくなる話をしましたが、この気圧の低下によって風船はただ膨らむだけではありません。
膨らむことにエネルギーを使ってしまった周囲の空気は、より冷たくなっています。
飛行機と同じくらいの高さ(8000メートル)にもなると、それはもう寒くてたまりません。
風船の原料であるゴムは冷えると硬くなり、伸縮性がなくなります。
寒さで凍りついた風船は、、内側からヘリウムにぐいぐい押されて、最終的には粉々に砕け散ってしまうでしょう。
その破片も地面に落ちるわけですが、実のところあまりにも小さすぎて目には見えないようです。
空に飛んで行った風船の結末
弾けても、砕けても、風船には2つのことが起こります。
どこまでも高く上がっていき、最終的には下に降りてくるのです。
それは、幼い頃にあなたの手から離れた風船にも起こったであろうことです。
残念ながら、私たちの身近にある風船では、地面から100kmも離れた宇宙の始まりの地点までは届きそうにはありません。
しかし、過去には日本のJAXA(ジャクサ)の研究によって、高度53キロの地点まで風船は到達しています。
これは、世界最高高度記録への達成ですが、科学が進歩すると、いつの日か本当に風船で宇宙旅行なんて夢も実現するかもしれませんね。