雲はなぜ空に浮かんだままで、落ちてこないのか?

2020年8月14日

私たちが、普段何気なく見ている雲、入道雲や、ひつじ雲など、空にふわふわと浮いている雲、一見すると軽そうに見えますが、

実は、わた雲(積雲)で言うと、1キロ立方メートルあたり、約551トンにも及ぶ大量の水が含まれているのはご存知ですか。

想像するのは少し難しいかもしれませんが、それは、ジャンボジェット機と同じくらいの重さです。そんな巨大な水の塊が頭上にあると思うと、すこし恐怖を感じますね。

では、なぜ質量的に考えると浮かぶはずの無い雲(水)が、地上に落ちてこないでふわふわと浮かんでいるのでしょうか。

今回は、雲が空に浮かぶことができる理由について、雲のでき方や大きさ、密度、上向きに流れる大気の動き(上昇気流)とのバランスなどをもとに分かりやすく紹介していきます。

雲のでき方。雲はなぜ存在するのか?

雲は水や氷の粒の塊です。

約1立方キロメートル(km3)の雲には、500,000,000グラムの水滴が含まれ、その重さはなんと551トンにも及ぶと考えられています。

それでは、このように数字で考えると重量物である雲ですが、実際、どのようにして生まれるのでしょうか。

太陽が地球を加熱すると、地面の水が蒸発し、それによって温かく湿った空気が上昇します。

上昇する空気は、圧力が低下するにつれて膨張し、薄い空気が上空で冷却されると、最終的に水蒸気が凝縮して水滴となり、一部はとても小さな氷の粒になります。

そして、これらの水や氷の粒が集まると、雲が生まれるのです。

ただし、水蒸気がどのように上昇するかは、雲の種類によって異なります。

雲の種類

風が水蒸気を山の地形に沿って押し上げると、まるでUFOのように層状に重なったレンズ雲が発生する可能性があります。それが山の頂上にできると、傘雲(笠雲)と呼ばれることもあります。

空高く飛ぶ(上層)飛行機のジェットエンジンから出る湿った排気ガスは、大気中で冷却され、長く尾を引く氷の粒の巻雲を作ります。

なかでも、雲と聞くとほとんどの人がイメージするのは巨大な綿菓子のような形をした積雲(せきうん)かもしれません。よく絵に描かれる典型的な雲で、大きな塊になると、100頭のゾウが集まって浮いているのに相当する重さにもなります。

では、どうやって水滴や氷の粒が集まった巨大な雲は、空中に浮くことが出来るのでしょうか。

雲が浮くのは浮力のおかげ

暖かく湿った空気は、乾燥した空気より密度が低いため、油が水に浮くのと同じように、上昇します

特に積雲は、暖かい上昇気流(下から上に向かって吹く風)が生まれやすいところ、たとえば、塗装された車道や火事のとき、また、日当たりの良い丘の中腹などに現れます。

上昇気流によって、持ち上げられた水蒸気は、上空で低温によって冷却され、それぞれの分子の動きは鈍くなっていきます。いくつかは互いにくっついて、直径0.000003メートル(3マクロメートル)ほどの水滴を形成します。

それらがたくさん集まると、雲として私たちの目に見えるようになるのです。

このように、上昇気流が、雲の粒子を押し上げて落下速度を相殺し、雲を浮かせたままにしています

雲に含まれる水や氷の粒のサイズが小さいから浮く

また、雲の中の水と氷の粒子は、重力の影響を受けるには小さすぎるのも要因となっています。

一般的に、雲には大量の水が含まれていますが、この水滴は、人間の髪の毛の太さの半分にも及ばないほど小さい粒で、それが数キロにわたって広がっています。

つまり、水や氷の粒が、塵の粒子と同じくらい小さいために、一つ一つの粒に対する重力の影響をほとんど受けることなく、結果的に、長時間空中に浮遊することができるのです

しかし、風が暖かい上昇気流を吹き飛ばした後でも、雲が落ちないのはなぜでしょうか?

雲は凝縮によって浮いている

たとえば、額から汗が蒸発すると、涼しさを感じることがありますが、それは、水が液体から気体になるときに、いくらかの体温を奪う(吸収する)からです。これを気化熱といいます。

その反対で、気体がガラスについたときに熱を大気中に放出して液体(結露)になるのを凝縮熱といいます。

雲の中の水が凝縮すると、放出された熱が大気中に留まり、熱気球のように内部から加熱していきます。そのため、熱エネルギーを吸収した雲は、周囲の空気よりも暖かく保たれるのです。

しかし、雲は、永遠に浮くわけではありません

周囲の空気が暖まるにつれて、それらが雲の湿気を蒸気として取り込むため、最終的に雲は消えます。

ときには、雲の湿り気が大きくなって、水滴同士が互いにくっつき始めると、粒がどんどん大きくなっていき、地面に落ちます。これが雨です。気温が低いと、水蒸気が凍ったまま、雪や氷など固形の状態で落ちます。

このように、雲は、上昇気流によって押し上げられたり、ときには蒸発したり、雨となって落ちたりすることもあります。

雨や雪の落ち方

ちなみに、層状雲(安定した雨を生成する雲)は、通常、上向きの大気の動きが弱い環境で形成され、対流雲(大雨や雷雨を引き起こす雲)は毎秒数メートルを超える上昇気流によって起こりやすくなるといわれています。

一般的に、物体が落下する速度は、その質量と表面積に関連しています。そのため、同じ重量でも、小石より羽毛の落下が遅くなるのです。

ほぼ球形の粒子の場合、小さな水滴が大きく成長するにつれて、落下速度が速くなりますが、氷の結晶は不規則な形状をしているために、落下速度は比較的遅くなります。

雲の中を経験した人物がいた

ダ・ヴィンチは雲を「表面のない体」と呼び、私たちは雲の上にも中にも住むことができません。

しかし、実際に、雲の中の世界を体験した人物がいます。コル・ウィリアム・ランキン少佐です。彼は、まさに偶然ながら、雲の中に約40分間も滞在した人物。

彼が、巨大な積乱雲の上で戦闘機を操縦していたとき、エンジンの火災に遭遇しました。

すぐさま戦闘機から脱出し、47,000フィートから地上約14.5キロのタワーに向けて、真っ逆さまに落下。

そのまま、時速約113キロメートルの上昇気流に乗って、分厚い積乱雲の中を急降下。ほとんど意識が無い状態で凍傷に苦しみ、圧力の変化で流血し、ひょうで打撲し、雨に溺れたといいます。

パラシュートなら通常10分で地面に着地するところを、彼は、40分かけて落下したのです。

アメリカでは、積乱雲のことを「cloud nine」といい、雲の上は天国だという意味で最高な気分を表すときに使われますが、彼にとって積乱雲はそれとは程遠いものだったでしょう。

雲は、「自然詩の大作」であり「命の輪」のようだ

1896年版の国際雲図帳(International Cloud Atlas)では、世界で最も高くて最も強力な雲である積乱雲がエントリー#9に配置されました。

雲の中の生き物は運の悪いパイロットだけではありません。

科学者たちは、生きている空中浮遊細菌が雲の凝縮核の20%を占めることを発見しました。

水蒸気が凝縮する微視的粒子の集まりである雲は、空中の生態系の本拠地であるだけでなく、ある意味で非常に活気があり、進化しているといえるようです。

雲は、上向きに移動する空気の中で形成され、生存しながら成長します。

ほんの数分間、空のふわふわした積雲を見つめているだけで、大きな雲の塊が、波打ったように分かれたかと思うと、消滅してしまうこともあります。

積雲の平均寿命は最高でも10分だといわれています。

雲から降る雨はいつかまた空に昇り、新しい雲になるでしょう。

それは、まさに「命の輪」です。

実際に、国際雲図帳の作者は、「分類学の父」といわれるカール・フォン・リンネにインスパイアされて雲の名前をつけたともいわれ、上空の高さや形状によって種類分けされ、名づけられた雲の名前は生物種のようにさえ聞こえます。

巻雲(すじ雲)、巻積雲(うろこ雲)、巻層雲(うす雲)、高積雲(ひつじ雲),高層雲(おぼろ雲),乱層雲(雨雲)、層積雲(うね雲)、層雲(きり雲)、積雲(わた雲)、積乱雲(かみなり雲)

それぞれの英語名は、まるでハリー・ポッターの呪文のようにも聞こえます。

史上最大の雲の写真は、見上げられたものではなく、雲を見下ろす形で撮影されています。

なかでもアポロ17号の宇宙飛行士が地球の画像を持ち帰ったとき、それらは新しい環境運動の象徴となり、私たちの壊れやすい惑星に対する新たな認識を与えました。

地球の表面の29%は陸で覆われ、71%は液体の水で覆われていますが、その上を非常に多くの雲が覆っています。

科学者たちは、まだ雲について知らないことがたくさんありますが、地球全体の2/3を覆うといわれる雲は間違いなく重要な存在です。

イギリスの作家、ギャヴィン・プレイター=ピニーが言うように、それらは「自然詩の大作」です。

普段何気なく見ている雲ですが、実は、地球にさまざまな表情を与えているようです。