さて、雷雨の中、広々とした野原の真ん中で立ち往生してしまったら、次のうちどのユニフォームを着れば安全だと思いますか?
厚手のウェットスーツ、スーパーマンのコスチューム、中世の鎧兜(よろいかぶと)、それともバースデースーツ?
もし「中世の鎧兜」だとしたら、稲妻が好む金属の素材が身の安全を守るのに役立つなんてちょっとおかしいといわれるかもしれません。ですが、それはそれで正解なのです。
その理由を以下に見ていきましょう。
金属は電気を通しやすい
雷は、ゴムや布、素肌に落ちるよりも、金属に落ちる可能性の方がはるかに高くなります。
そもそも、稲妻は高速で流れる電子の長い流れであり、A地点からB地点への最も簡単な道を探しているからです。
そして、金属ほど雷にとって通りやすい簡単な道を提供する日常的な素材はありません。
では、なぜ稲妻をおびき寄せる素材が雷雨の際のあなたの身の安全を守るの?
皮肉なことに、それは金属が稲妻を引き寄せる理由とまったく同じなのです。
では、なぜ雷から身を守るために鎧兜を選ぶのかについて、雷の性質をもとにみていきましょう。
英語での「The best defense is a good offense(最善の防御は攻撃)」。日本語でいう「攻撃は最大の防御である」だけど、これが今回の雷への防御について教えてくれるよ。
電気を通しやすい物が危険というわけではない
金属は導体(電気を通しやすい物質)です。
電子は金属の上を簡単に滑るので、表面からはほとんど浸透しません。
たとえば缶や箱、あるいは溶接された鎧兜のような空洞の金属の器(導体に囲まれた空間)の上を電流が流れていたとしても、電流は容器の内部には届かないのです。
物理学者はこのような導体でできた器を「ファラデーケージ」と呼び、外部の電界をさえぎる働きがあります。
ちなみに、高電圧の電線で作業するライン工が着ている鋼鉄で編まれた衣服の場合は、ファラデースーツと呼びます。
たとえば、あなたの車はファラデーケージの日常的な例です。
車はファラデーケージ
実際には、あなたを取り囲む閉じた金属体(車体)があなたの安全を守っているのです。
つまり、ファラデーケージは、雷があなたを通過するのを防ぎ、周囲に流れていくような役割をになっているのです。
ただし、車内では(感電の恐れがあるため)金属部分に触れないこと、そして、窓を閉めることには注意してください。
もちろん、車から離れているときに嵐に巻き込まれ、開けた野原にいたとしても、中世の鎧兜(ファラデーケージ)や高電圧ラインスーツ(ファラデースーツ)が手元にある可能性は低いでしょう。
そのような場合、裸であろうとコスチュームを着ていようと、不幸にも身体は、空気や土よりも優れた電気伝導体です。
直立すれば、あなたは稲妻が降下する最短ルートとなり得るのです。
そして、横たわれば、近くの落雷から地面に沿って電流が走るためにあなたが雷の通り道となるでしょう。
逃げ場がないときは、耳を塞いで頭を低くして、足を近づけてしゃがみます。
膝やお尻、手は地面につけずに、両足のかかと同士を合わせて、地面と接する面積(電気の侵入経路)を最小限にするためにつま先で立ちます。
万が一、足が雷にとって最良の通り道になってしまったとしても、足だけが地面に触れている場合、電流は片方の足を上り、もう片方の足から出るため、心臓のような重要な臓器を守れる可能性が高くなります。
とはいえ、実際には、雷を完全に避けるのが一番です。鎧を着ていようがいまいが、嵐が地平線上に現れたらすぐに屋内に入りましょう。