世界には、通常の雷よりも100倍、1000倍も明るく強力な「スーパーボルト」と呼ばれる超巨大雷が存在します。
それは、科学者たちをとても困惑させています。
なぜなら、スーパーボルトが雷より強力なだけでなく、今まで雷が発生しやすいと考えられていた所とは全く別の特定の地域で集中的に起きているからです。
しかも、今までの雷の定義とは違いプラスに帯電した雲から発生するものまで発見されています。
その答えが分かれば、雷が生じる理由や雷の脅威について、長い間残されてきた謎を解明するのにも役立つかもしれません。
雷はなぜ、どのようにして起こるのか?
ありえないほどまぶしい雷光と、熱による振動が骨身にしみる雷鳴。
地球は時に、猛烈なエネルギーを放つことができることを私たちに教えてくれます。
数世紀にわたり、科学者たちは稲妻がどのように発生するかについて、かなり深いところまで理解を深めてきました。
まず、太陽光のエネルギーを吸収した地面が温まり、地上付近の湿った空気を温めます。
温められた空気は、膨らんで体積あたりの重さが小さくなるので上昇し始めます。
高いところにある空気は、気圧が低いので気温が低く、上空に行くほど氷点下になっています。
湿った空気が上昇気流によってこのような高度まで達すると、水蒸気が凝縮して水滴や氷の結晶となり、雲が形成されるのです。
そして、水蒸気が凝縮しながらさらに上昇すると、雷雲のような高い雲になることがあります。
この上昇気流と冷却によって、雲の中では氷の粒同士がぶつかり合いながら渦を巻いています。
すると、ドアのノブをさわると発生する静電気のように、氷の粒と粒の間で電気が発生して少しずつ移動していくのです。
しばらくすると、ある種の電荷が雲の底に大量にたまりすぎて、近くの空気に押し出されます(放電)。
すると、電気を帯びた空気の流れが始まり、やがて地面か別の雲に到達。その流れに沿って明るく大きな電流が流れます。それが稲妻です。
通常、大気は電気を流しにくいため、稲妻はまっすぐに進まずに、進んでは止まり、進んでは止まりをステップ状に繰り返しながら進んでいきます。ステップトリーダー(段階型前駆放電)と呼ばれるものです。
しかし、スーパーボルトは、これらの雷のルールを破っているように見えます。
スーパーボルトはどのような場所で発生しやすいのか
2018年には、上空を約700キロメートルにもおよぶ範囲で、約17秒間続いた長時間にわたる稲妻も検出されています。
通常の稲妻は、夏に陸上でよく発生します。陸の方が水面よりも太陽熱によって早く温まるため、湿った空気が早く上昇しやすいからです。
このように温かさと湿度の両方が要因となるので、雷が熱帯地方でよく起こるのは当然といえるでしょう。
しかし、スーパーボルトの場合、そのような雷の常識があてはまらないのです。
宇宙から雷の明るさを調べた研究では、通常の稲妻の100倍明るく輝く落雷においては、南北のアメリカだけで2年間約200万件(およそ落雷300件に1件)検出されています。
さらに地球上で、1,000倍以上の明るさに絞って調査したところ、スーパーボルトの活動が活発な地域は特定され、主に冬に、海の上、特にヨーロッパの北大西洋上や日本海の海洋上でよく発生していることが分かったのです。
これは間違いなく、熱帯の楽園ではありませんね。
そして、どういうわけか、スーパーボルトは、通常の雷よりも数百倍も強力なのです。
スーパーボルトはなぜ明るく強力なのか
スーパーボルトは、科学者らが、統計的な偶然、またはいくつかの測定エラーかと疑うほど奇妙な自然現象でした。
大気科学者にとっては、かなり大きなナゾで、これを説明できるような明確な道筋はありません。
ある説では、英仏海峡を通過する船舶による汚染で、雲が火花を出す前にとんでもない量の電荷を蓄積してしまうからだと考えられています。
別の説は、海水を含んだ塩分の多い雲は、通常の雷雲が電荷の一部を失うだけであるのに対し、稲妻が発生するとすべての電荷を失ってしまうからだといわれています。
あるいは、私たちが雷について根本的に理解していないことが隠されているのかもしれません。
そもそも、何をもってスーパーボルトと呼ぶのでしょうか?超強力な雷はどこでどのように発生するのでしょうか。
というのも、科学者たちは雷の全体像をかなり解明してきていますが、細かなところではまだ完璧に一致していない部分が残されているからです。
雷の大きさを決めるのは何か
例えば、通常雷雲は、上の方にプラスの電気が、下の方にマイナスの電気がたまっています。
しかし、スーパーボルトの場合、常に下側がマイナスに帯電するわけではなく、正電荷の雷もあれば、その両方が混ざった雷も発見されています。
スーパーボルトは、この点でもルールを破っており、スーパーボルトが強力であればあるほど、プラスに帯電する可能性が高いのです。
もしかしたら、雲の帯電の仕方が、雷の大きさに影響を与えているのかもしれませんね。
雷はどのように発生するのか
そもそも、物理学者がこの問題全体を間違った方向から見ている可能性もあります。
実験によると、雷雲の電荷は、雲に近い空気の壁が壊れるまで蓄積されました。
しかし、一般的な稲妻には、それを起こすほどの十分なエネルギーがないのです。
これでは、普通の稲妻とスーパーボルトの中間のようなものでないと、雷は発生しないことになってしまいます。
それについては、雲の特定の場所にだけ電荷が蓄積されるとか、宇宙から届く放射線が雷のプロセスを始動させるとか、いろいろな説明がささやかれています。
あるいは、全く別の理由が存在するのかもしれません。
科学は新たな証拠によって根本から見直されることもある
さらに強力な雷の存在は、科学者が雷の構造や仕組みを細部まで解明するために必要な手がかりとなるのかもしれません。
今回のようなケースは科学では珍しいことではありません。
科学は、新しい証拠によって、問題に対する見解を全面的に見直す必要に迫られることもあるのです。
もしかしたら科学者は、スーパーボルトはなぜこれほど大きいのかを考えるべきではなく、どうして普通の雷はこんなに小さいのかを先に考えるべきなのかもしれません。
あなたも推理力を磨いて、ぜひこのような未解決の科学の問題に挑戦してみてください。
参照元:
・Learning About Lightning from Superbolts
・Scientists Detect ‘Superbolts’ 1,000 Times Brighter Than Typical Lightning Strikes