信じられないかもしれませんが、6時間で世界の砂漠に降り注ぐ太陽エネルギーは、今後1年間に世界全体が消費するエネルギー量に勝るといわれています。
もし、このエネルギーが太陽光発電に活用できたら、どれほどのエネルギーが生産でき、地球はどのような影響をうけるのでしょうか?
たしかに、太陽を遮られることのない砂漠なら、地球上で最もソーラーパネルを設置したり、ソーラーファームを開発したりするのに適したところになるはずです。
しかし、実際にはそう簡単にはいかないようです。
今回は、「サハラ砂漠を太陽光パネルで覆うとどうなるか」について科学的に分析して分かりやすく紹介します。なんと、サハラ砂漠には雨が降り、緑が増えてしまうかもしれないのです。
脅威の日照時間をもつサハラ砂漠
サハラ砂漠は、(南極を除いて)世界最大の灼熱の砂漠として知られています。
中国とほぼ同じ大きさで、10カ国にまたがり、3つの異なるタイムゾーンに分かれています。
これは、世界の年間日照時間を示した地図です。
注目すべきホットスポットが、北アメリカ、南アメリカ、南アフリカに合わせて4つあります。
なかでもぐんを抜いて日照時間が長いのがサハラ砂漠。
年間3600時間以上の日照時間があり、内陸部では4,000時間以上にもおよびます。それは、ドイツの年間日照時間の約4倍です。
世界最大級の太陽光発電所がサハラ砂漠にある
サハラ砂漠には実際に発電所があります。
モロッコのワルザザードにある世界最大級の太陽光発電所です。
太陽の光を集めて液体を加熱する集光型太陽熱発電(CSP)で、夜間の発電や蓄電も可能にするものです。
モロッコでは、新たに4つのこれに似た発電所の設立を目指しています(2021年現在)。
このプロジェクトによって、モロッコの年間電力需要の約38%をまかなえる発電量を生み出すことができると期待されているのです。
実現すると、モロッコは世界有数の太陽エネルギー国に生まれ変わるかもしれません。
また、アフリカで唯一、欧州との間に電力ケーブルが敷設されている国として、このエネルギーの多くは欧州連合の国々に輸出され、利益を得ることができるでしょう。
サハラ砂漠が生産できる驚異の電力量
このモロッコの太陽エネルギープロジェクトに投資しているのは、砂漠での太陽エネルギー生産を考えている数少ない組織の一つドイツのエネルギー財団「DESERTEC Foundation」です。
彼らの研究とドイツ航空宇宙センターのデータによると、図の一番右のサイズの太陽電池パネルエリアで、ドイツの全電力需要の100%を賄うことができ、真ん中のサイズでは欧州連合全体をまかなうことができます。
この世界中に電力を供給するためには、約514億枚のソーラーパネルが必要です。
実は、これは、サハラ砂漠でいうとアメリカのニューメキシコ州程度の広さがあれば十分(一番左の面積)で、これで地球上の電力がまかなえるというのです。
広大なサハラ砂漠には約2,500万人の人々が住んでいますが、これはシベリア並みの人口密度であることを考慮に入れるとそれは大きな問題ではないはずだと専門家はいいます。
彼らがかなりの時間をかけて検討した計画では、サハラ砂漠の周囲と中東の奥地に一連の巨大なソーラーファームを設置すると、アフリカと中東の電力需要の大部分をまかない、余った電力はケーブルでヨーロッパに送り、ヨーロッパの全電力需要の15%をまかなうことができます。
しかし、ここでポイントなのが、パネルの建設予定地がサハラ砂漠の周辺になっていることです。
サハラ砂漠に太陽光パネルを設置するのは、大きなメリットを生みますが、同時に障壁も大きいようです。
サハラ砂漠に太陽光パネルを設置するうえでの問題
世界中の電力を供給するには、514億枚分のソーラーパネルが必要で、それには51.4兆ドルのコストがかかります。これは、世界のGDPの60%に相当。
加えてサハラ砂漠には、移動する手段、道路や大量の物資を運ぶインフラがありません。
物資や機材の輸送費、資材代などを考えると、コストがかかりすぎてしまうようです。
仮にできたとして、サハラ砂漠全体にソーダ―パネルを設置したら、世界はどのように変わるのでしょうか?
地球への影響
サハラ砂漠全体に太陽光パネルを覆うと、パネルが太陽の反射熱を低下させます。
すると大気の摩擦と収束によって局所的に大気が不安定になり、上昇気流が生まれ、サハラ砂漠の雨を増やします。
それによってサハラ砂漠には緑が増えますが、これまでのような砂が与える世界の生態系は予期せぬ形でくずれる可能性は十分に考えられます。