今回は、「森林による炭素隔離」の働きについて、森林生態系を通じて吸収・固定される二酸化炭素の仕組みを分かりやすく紹介します。
スーパーヒーローたちのように、森林生態系も団結することで、一人では勝てないような最大の敵「たくさんの二酸化炭素」を地球規模で抑制しているのです。
炭素隔離とは
木だけで、なんとすべての生物に貯蔵(または隔離)される陸上炭素の80%以上(土壌は除く)を貯蔵しています。
このように、乗り物や工場、化学燃料の燃焼などによって排出された炭素を、生物(光合成を行う森林・海洋生態系)や地中(土壌微生物)、海底などに取り込んだり、蓄積したりすることを炭素隔離といいます。
生物による炭素隔離
木を植えるだけでなく、CO2をより効率的にとりこむ方法を考えていきましょう。
そこで注目したのが、樹木がもつそれぞれの能力です。
スーパーヒーローにさまざまな能力があるように、樹木の種類によって、大きく成長してたくさんの炭素を貯蔵するための戦略は異なります。
あるものは根を深く張りめぐらせ、あるものはソーラーパネルのように葉を茂らせ、あるものは木と木の隙間からでも光エネルギーを確保するために超高速で成長します。
さらに、これらの樹木はスーパーヒーローのように、互いに協力し合うことで、より良いパフォーマンスを発揮することが分かっています。
多様性のある森林が必要
一つの樹種だけの群生地では、誰もが同じ戦略をとるために、互いに干渉し合って成長を妨げてしまいます。その結果、群生地全体での炭素の吸収量は減少します。
もしニューヨークに同じようなスパイダーマンが大量にいると、おそらくそれほどスーパーヒーローではなくなるだろうというのと同じです。
一方で、異なる能力をもったスーパーヒーローで埋め尽くされた都市はマーベル的に大活躍します。
同じように、異なる種類の木がたくさんある森では、それぞれが異なる資源獲得戦略をとることができます。
その結果、一つの群生地全体で、より多くの資源を利用することができ、より大きく、より早く、より強く成長し、より多くの炭素を固定できるのです。
多様性のある森林は、単一種の森林に比べて2倍以上もの炭素を固定できるといわれているのよ
樹木の炭素隔離能力をアップさせる名脇役たち
しかし、相棒がいてこその最高のチームです。
オコエ(ブラックパンサーで国王を守る誇り高き女戦士)やバッキー・バーンズ(キャプテン・アメリカ)は主役ではないかもしれませんが、超悪役を倒すのに重要な役割を果たしています。
同様に、樹木以外の多くの種は、それ自体ではあまり炭素を貯蔵しませんが、生態系の総量には大きな影響を与えることができます。
たとえば、菌類は植物がオプション的な資源を吸収するのを助け、動物は種子や栄養分を移動させ、そして、主役となる炭素隔離部隊の樹木が倒れれば、微生物がそれを分解して豊かな土壌にします。
哺乳類の種類を2倍に増やすと、熱帯林の木に蓄えられる炭素量が2倍以上になるという研究結果もあります。
人間もそうです。先住民は長い間、小規模で管理された焼畑によって森林を管理してきましたが、これは森林全体を大規模な火災から守り、生物多様性と全体の炭素隔離の生産性を高めることに貢献しています。
生態系全体の炭素固定能力を上げる
森林生態学者のなかには、次のように考える人もいます。
さまざまな種が協力して生態系を円滑に機能させ、多くの炭素を貯蔵できるだけでなく、草原からツンドラ、海洋に至る生態系全体が協力して地域全体の生産性を高め、地球が巨大なスケールで炭素を貯蔵できるのではないか。