なぜ台風(進路)は行ったり来たりするのか?

台風の進路はどうきまるのか?自然科学・地球科学

2009年、台風パルマがフィリピンを通過しました。

驚いたことに、台風はその後、進路を急に折り返して、再びフィリピンに戻ってきたのです。

そして、2度同じ地域を通過した後、これでもまだ足りないかのように、台風は再び進路を反転させ、3度目のフィリピン直撃へ。

そして、ようやくベトナムに向けて去っていったのです。

実のところ、このような不規則な行動は、(北西太平洋で発生する)台風(北中米で発生する)ハリケーン(それ以外のインド洋や南太平洋などで発生する)サイクロンにはよくあること。

ではなぜ、台風やサイクロン、ハリケーンなど(以下からまとめて台風と示す)は、このような奇妙な進路で嵐を運んでくるのでしょうか?

以下に台風が行ったり来たりを繰り返したり、ジグザグに進んだりする理由を紹介します。

台風の進路とは

台風の一般的な進路

まず、暖かい海面から出る水蒸気をエネルギー源として台風が形成されると、熱帯風によって西に吹き飛ばされ、極に向かいます。

台風が極に向かって進むにつれて、やがて中緯度に到達し、そこで一般的に西から東に向かう風の帯にぶつかります。

その結果、この基本的な軌道は台風にとって極めて一般的なものとなります。

しかし、1967年のハリケーンドリアをはじめ、2018年のハリケーン レスリー、2019年の令和元年東日本台風のように、ときにはへんてこな動きをすることがあります。

奇妙な進路をとる台風

そして、それらの台風の進路を変える要因はたくさん存在します。

なかでも大きな要因は嵐の強さです。

台風の強さが原因

強いサイクロンは大気中の広い帯状の風によって進路を決められますが、弱いサイクロンは主に下層の大気の風によって進路が左右されます。

弱い台風の進路

また、サイクロンの強度が変化した場合、例えば、弱いサイクロンが暖かい海域に突入して勢力を強めた場合、下層風に加えて上層風の影響をより強く受けるようになります。

強い台風の進路

上層風は下層風とはまったく異なる振る舞いをすることがあり、サイクロンの軌道を完全に変えてしまうこともあるのです。

同様に、サイクロンが強度を失った場合(寒冷前線に遭遇したり、陸地に乗り上げて燃料が切れたりした場合など)、サイクロンは上層風の影響を受けなくなり、下層風に左右されるため、またしてもすぐに進路を変える可能性があります。

台風の強弱が変化したときの進路

さらに、上層風はすぐに弱まったり、急に向きを変えたりすることもあり、サイクロンの強さによっては、進路にさまざまなジグザグが生じることもあるのです。

風が弱まることが原因

時には、台風を操る風が完全に弱まることもあります。

このような場合、台風はある場所で突然立ち往生したり、台風自身の内部循環によって風が回復して別の大気風にのるまで不規則に進む可能性があるのです。

他の嵐の影響が原因

他の台風の影響で進路が変化するケース

最後に、他の嵐の影響があります。

台風は、基本的に渦巻く空気の渦です。

そのため、2017年のハリケーン「ヒラリー」と「アーウィン」のように、2つのサイクロンが十分に接近しすぎると、一方の嵐が消滅するまで、あるいは合体して超大型の嵐になるまで、互いに引っ張り合って狂気のダンスを繰り広げることがあるのです。

台風は、このように進路を決定する複雑な要素にいくつも遭遇する可能性があります。

実は、台風パルマの不可解な進路には、これらすべてが関わっていると考えられています。

台風パルマの進路が複雑だった理由

新しい台風が誕生するたびに、その可能性はほとんど無限にあるのです。

台風の進路の影響

確かに、台風を押し進めそうな風や、台風を横取りしそうな要因はわかっていますが、それが嵐の一生の間にどのように組み合わされるかはほとんどわかりません。

ただひとつ確かなことは、台風は予測不可能だということです。

参照元:Why Hurricane Paths Are WEIRD