カンガルーの袋の中はどうなっているのか?未熟児のための優れた保育器の仕組み

2019年9月10日

一見したところ、カンガルーの袋は、組み込み式のベビースリングにしか見えないかもしれません。

しかし、内部を覗いてみると、単純な袋とは比べ物にならないほど複雑であることがわかります。

それには、カンガルーの特殊な出産スタイルが、特に、生まれたばかりの赤ちゃんが人間や他のほ乳類と大きく異なることが関係しているようです。

あまり知られていませんが、カンガルーの袋は、人間でいう子宮や胎盤の代わりの役割があります。いわば、未熟児のための保育器のようなもので、赤ちゃんを安全に、かつ、衛生的に育てながら栄養を与えることができる驚くべき機能が備わっているのです。

ここでは、カンガルーのメスのおなかにあるポケット「育児嚢(いくじのう)」の秘密や彼らのユニークなライフサイクルについて紹介します。

カンガルーの赤ちゃんは未熟な状態で生まれる

カンガルーのオスは成長すると、体重は90キログラム、高さは1.5メートル以上にもなります。

しかし、新生児は約2cm程度と、ゼリービーンズのサイズで生まれ、人生をスタートさせるのです。

生まれたばかりのカンガルーの赤ちゃんは、目が見えず、耳も聞こえず、毛もありません。

人間の場合、赤ちゃんは、長い妊娠期間中に発達してある程度成熟してから生まれますが、カンガルーが出産前に母親の胎内で過ごす時間は、たったの33日間。それは、人間が妊娠して、2ヶ月で赤ちゃんを産むようなものです。

とても未熟な状態であるため、オーストラリアの厳しい荒野に直面する準備はもちろんできていません。

そこで、袋(育児嚢)の出番です。

尿道と産道をかねた小さな総排出腔から生まれたばかりの赤ちゃんは、自力で母親のおなかの上をよじ登って、数十秒もしないうちに袋に入り込みます。母親は、目の見えない赤ちゃんが無事袋にたどりつけるように身をかがめながら、自分のおなかをなめて進むべき向きを示します。

そして、袋にたどりついた赤ちゃんが内部で乳首に吸い付くと、その乳首だけがミルクを効率よく吸えるようにニョキっと伸びて、口からはずれにくくなります。そうして、赤ちゃんは、外にでる時を迎えるまで、ほとんどの時を乳首に吸い付いたまま過ごすのです。

カンガルーの袋(育児嚢)のユニークな仕組み

カンガルーは、有袋類に分類されるほ乳類です。メスには乳首と袋がありますが、オスには袋はありません。

カンガルーの袋は、2番目の子宮の役割をする皮膚のポケットのようなもので、温度や湿度が保たれ、赤ちゃんにとって安全で、居心地の良い環境を与えています。

そして、赤ちゃんが大きくなるにつれて妊婦のおなかが大きくなるように、カンガルーの袋も伸びることができます。それは、強力でありながら柔軟な筋肉と靭帯のおかげです。

母親は、巾着袋の口を引っ張って閉じるように、これらの袋の筋肉を締めて、体にぴったりと閉じます。成長した赤ちゃんが、袋から顔だけを出して草を食べても落ちないのはそのためで、外界の異物をシャットアウトする役割もあります。

袋の入り口はとても小さく、一見すると見つけにくいのですが、非常に伸縮性があり、手で触れると大きく広げられることがわかります。

8ヶ月も経過すると、豆ほどの大きさだった赤ちゃんは、ペットの猫くらいまで成長するので、余分なスペースが必要になってきます。この頃には、出生時の体重の数千倍にも相当するといわれています。

これらのカンガルーの急速な成長は、袋の内部にある4つの乳首のおかげです。

4つのミラクルな乳首

乳首は、未熟な赤ちゃんが病気にならないように、細菌と闘うための抗体を含んだミルクを出します。

このミルクの栄養レベルは、赤ちゃんの月齢に応じて変化していきます。たとえば、毛の主要な構成要素である硫黄成分は、生後約3か月でピークに達します。それは、赤ちゃんが毛皮を成長し始めるのと同じ時期です。

それはまだ乳首がもつ驚くべき機能の始まりにすぎません。

信じられないかもしれませんが、なんとカンガルーの母親は、同時に複数の種類のミルクを生産でき、異なる乳首からそれぞれ独自に出すことができるのです。

それは、異なる年齢層の2匹の赤ちゃんを同時に育てられることを意味します。

袋(育児嚢)の特殊な機能

袋の特別な機能は他にもあります。

内部には、抗菌物質を放出する汗腺が並んでいることです。これは、有害なウイルスやバクテリア、寄生虫から赤ちゃんを保護するのに役立ちます。

さらに、袋のデザインにも、赤ちゃんを安全に保つ秘密があります。

内部には、毛が一本もないため、肌と肌の接触は赤ちゃんを暖かく居心地の良い状態に保つことができるのです。

それは、まさに究極の保育器だといえます。

しかし、何事にも終わりがあるように、赤ちゃんにもこの居心地のよい世界から旅立つときがやってきます。

約5ヶ月で、頭を突き出し始めた後、その1ヶ月後には外の世界に向けて劇的な一歩を踏み出します。

はじめのうちは、数秒でまた袋に戻りますが、成長するにつれて外で過ごす時間が徐々に長くなっていき、生後8ヶ月くらいで巣立つといわれています。

カンガルーのライフサイクル

カンガルーのライフサイクルは、有性生殖から始まりますが、短い妊娠期間の後、発育中の赤ちゃんは、成熟するまでのほとんどの時間を母親の袋の中で過ごします。

もちろん他の哺乳類のように、母親が子どもを育てますが、胎内で胎盤によって育つウサギやシカなどの一般的な草食哺乳類とは大きく異なるのです。

長期的に栄養を補給する胎盤の代わりに、胚は、約1ヶ月で、卵黄嚢からの栄養源を使い果たします。その後は、母親の袋の中の乳首からミルクを飲んで発達します。

一般的に、カンガルーは産後すぐに交尾ができますが、育児嚢に他の赤ちゃんがいて空きがない場合は、受精したとしても、受精卵の発達を遅らせることができるといわれています。

野生では、成熟したカンガルーの平均寿命は約6年間くらいですが、飼育下では最大で20年間生きることもあります。

野生においてカンガルーは、野生の犬やヘビ、キツネ、ワシといった危険な捕食者に狙われやすいために、胚、または、新生児期の死亡率が高く、群れで暮らしています。

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