犬は、トイレに行くとき、横になるとき、興奮したとき…何かをする前にその場で回ることがよくあります。
とても奇妙に見えるかもしれませんが、実は、犬にとってはこの行動には意味があります。
研究では、犬が地球の磁場を感じ取り、体の向きを南北に向けて排泄することが示されたのです。
ここでは、犬にとっての回転行動の意味について紹介します。
野生の犬が回転する理由
野生の犬は、草を倒したり、雪を固めたり、ヘビや昆虫を追い払ったりするために、その場で回転しながら地面を足で踏みつけます。
そうすることで、犬たちは安全に、そして清潔に保たれ、ときには身を隠すことができるのです。
また、足で地面を円形にならすことで、通りかかった他の犬たちに、ここは自分の縄張りだと主張するサインにもなっているともいわれています。
おそらく、トイレに行く前に回転するのは、そうした犬の安全本能や縄張り意識が関係している可能性があるようです。
下の草を踏み倒すことで、犬の排泄物が草に付着したり、自分の毛についたりするのを防ぐことができるからです。
また、足元で、犬の尿や糞に含まれる匂いが遠くまで広がり、犬がマーキングしたテリトリーが明確になる可能性もあります。
磁場で体位を決定する
しかし、子犬の排泄前の回転については、もっと新しく、より一層奇妙な理論があります。
なんと、犬が地球の磁場(地磁気)を感じ取っているからだという説です。
実際に、地球の磁場を感じることができる動物はたくさん証明されています。
鳥やカメは磁場を感じて適切な方角に向けて移動し、牛は草を食む際に磁場をもとに南北に整列します。
犬も地磁気を感じている
Frontiers in Zoology誌に掲載された研究では、犬が、磁力線に対して自発的に体の向きをあわせていることが示されました。
37種の犬70頭の体の向き(方向)について、2年間にわたって排便時(1893の記録)と排尿時(5582の記録)を磁場条件に従って分類した結果、犬が排泄時に地球の磁場を感じていることが分かったのです。
地球の磁場が穏やかなとき、犬は、体を南北軸に沿わせて排泄することを好み、地磁気が不安定な条件下ではこの行動は見られなくなったのです。
地磁気が安定するのは、日中のわずか20%程度しかないため、地磁気にもとづいた動物の行動を観測しても再現性が乏しい理由のひとつになっているのかもしれません。
研究者たちは、犬が南北を好むだけでなく、体の軸を東西にまっすぐにすることを避ける傾向があることにも注目しています。
イヌの祖先であるオオカミは、とても広い(約150~200km2)テリトリーで行動し、優れた方向探知能力をもつことで知られています。
強い磁気感覚は、特に群れで行動する動物たちの移動や狩りに役立ち、それが犬の祖先が過去に持っていたより強い磁気感覚の名残なのかもしれませんが、その理由はまだ分かってはいません。
実は、私たち人間の目にも、鳥が磁場を検出するものと同じタンパク質(クリプトクロム)があり、過去のある時点では、地球の磁場を見ることができたのではないかと研究者は考えているようです。