アオムシからチョウへ「蛹(さなぎ)」の内部では何が起こっているのか?

2017年11月16日

アオムシは、チョウチョになる前に、蛹(さなぎ)にならなければなりません。

しかし、実際に、蛹の中がどうなっているのかは、未知の世界でした。

ここでは、従来の研究方法では不可能であった蛹の内部のイメージ化に成功した最新のCTスキャンによる動画を紹介します。

幼虫から成虫に変身するうえでちょうど転換点にあたる蛹の羽化の様子を、内部まで知ることができるドラマティックな映像です。

蛹の体内では、幼虫期の組織や細胞の大部分が壊れて分解され、成虫になるために新たな器官が形成されていきます。昆虫にとって蛹は、体の大改造が行われる大切な時期なのです。

蛹(さなぎ)の内部の研究

多種多様な発達プロセスをもつ昆虫の研究は、昔ながらの組織学や解剖学の研究方法では難しいといわれてきました。

大自然では、一匹の昆虫の発達をずっと追跡するのは非常に困難なものです。

また、蛹(さなぎ)の内部を調べたい場合、解体しなければならないうえ、標本を作ろうにも、サンプリングに使う個々の蛹の発達速度が異なるので、時間を追った正確なデータが得られないためです。

これらの問題を解決するために、高分解能X線コンピュータ断層撮影法(CT)を使用したところ、蛹を傷つけることなしに、内部の3次元的なイメージ化に成功しました。これによって、X線による蛹の臓器や気管などの断層のイメージ化や大きさの測定も可能となりました。

撮影では、放射線による蛹への影響を最小限にするための十分な配慮もなされました。

幼虫から成虫に成長するにつれて大きく変化する昆虫たち

チョウチョやハエ、ハチなどの有翅昆虫(ゆうしこんちゅう:胸に二対の羽をもつ虫)のうち、成長するにつれて、明らかに体の姿や形が変わる(変態)ものを内翅類(ないしるい)といいます。

これらの昆虫は、幼虫のころは、羽の原型が体内にあり、それが体内で発達を続けて、蛹(さなぎ)になった後、外に現れます。

このように、蛹として過ごす時期があり、幼虫と成虫では、全く別物のような姿形をした昆虫のことを、専門的な用語では「完全変態昆虫」といいます。ちなみに、バッタやカマキリなど幼虫と成虫で同じような姿をした昆虫は、 外翅類(がいしるい)とよばれています。

蛹の体の変化

内翅類は、幼虫期には常に食べ続けていますが、蛹になると食べ物を一切口にしなくなります。

内翅類にとって、蛹の時期は、体の仕組みを大きく急変させる大切な時期なのです。蛹になると、幼虫期から使っていた不必要な器官や細胞を捨てて、成虫になるために新たに消化器官を構成し直します。これらは、幼虫期にたくわえられた栄養分(エネルギー)を使って行われています。

蛹になった後に、消化酵素を分泌し始めることも分かっています。そして、成虫の目や羽、その他の体の部位も発達させていきます。

最近の研究のなかには、成虫の蛾(が)が、幼虫期にあったできごとを覚えているというおもしろい研究もあります。どうやら、幼虫にも、未発達な脳の一部が詰まっているようです。