若いヒマワリは、朝、東を向いて太陽を待ち、太陽が空を横切って移動するのを追うように、夕方には西に向きを変えます。
このようにヒマワリが太陽を追いかけるのは、植物内部の体内時計によってコントロールされているからで、つぼみや若い花といった成長期でのみ見られるようです。
研究者らは、このヒマワリのユニークな特性を、より多くの子孫を残すためだと考えています。
いったいなぜ、どうやってひまわりは太陽の方を向いて咲くのでしょうか?
もし、茎を動かないように固定するとどうなるのでしょうか?
以下にみていきましょう。
ヒマワリにも体内時計がある
植物のいくつかは、太陽の方を向く傾向があります。
古代ギリシャ人は、このような植物を「太陽へ向きを変える(sun turn)」を意味するヘリオトロピウム(heliotropium)と呼び、現在でも、それは向日性(ヘリオトロピズム)として知られています。
それには、人間と同じように、植物にも「概日リズム」と呼ばれる体内時計があることが関係しています。
人間の概日リズムは、体内にいくつかの生理学的、または、化学的変化を引き起こします。
これと同様に、植物も概日リズムによって、成長ホルモンの分泌をはじめ、約24時間周期の変化に対応しようとしているのです。
では、ヒマワリの概日リズムはここでどのような役割を果たしているのでしょうか?
茎の成長速度の違いによって茎が傾く
夜明け前、若いヒマワリは東、つまり、日の出の方向を向いています。
そして、太陽が東から西に移動すると、花も西に向きを変えます。
太陽が沈むと、 花は元の位置に戻りはじめ、東を向いて翌日再びこのサイクルを開始します。
2016年にScience 誌に掲載された記事によると、ヒマワリは1日の時間帯によって、茎の部位ごとの成長速度が変わるためにこの向日性が起きると研究者は考えています。
成長をコントロールする植物ホルモン
ヒマワリの茎が伸びるには、成長を刺激する植物ホルモン「オーキシン」の分泌が関係しています。
茎でオーキシンは、光(主に青色光)と反対の方向に移動する性質があり、適切な濃度まで高めて茎の成長を促進します。
すると、茎の両側での不均等な成長が生まれます。
こうして、太陽が東から西に移動するにつれて、ヒマワリもそれを追うように東から西に傾きます。
そして、太陽が沈むと、今度は、茎の西側の成長は東側の成長よりも大きくなります。その結果 、茎は東、つまり翌朝再び太陽が昇る方向に曲がります。
茎を動かないように固定すると成長を阻害される
さらに興味深いことに、研究者は植物の茎を しっかりとした支柱に結びつけ、太陽の位置に応じて動かないようにしました。
その結果、これらの植物は、成長率が低下し、葉の面積が小さくなることを発見。
ヒマワリの光に対する反応も、人工照明条件下でテストされました。
Science誌に掲載された記事によると、「人工照明が24時間に近い周期では、自然光での向日性を再現できましたが、30時間周期に近づくとそれは見られなくなった」と示されました。
しかし、ヒマワリが成熟するにつれて、異なる動作をします。
成熟したヒマワリが太陽を追わなくなる理由
ヒマワリが太陽を向く特性は、成熟期後には見られなくなります。
植物がもつ「青色光受容体」タンパク質の一つ「フォトトロピン」の反応は、日中を通して朝に最も活発になります。
何千もの花の集合体であるヒマワリは、若い頃、つまり、花が全て咲きそろう頃まで、この青色の光に反応して成長ホルモンを分泌させているのです。
これが、成熟期後には見られなくなる理由です。
東向きの花は昆虫を集める
研究者 が東向きの成熟した花と西向きの花を比較すると、驚くべき観察結果が得られました。
東向きの花は、西向きの花よりも、受粉してくれる昆虫を5倍近くも引き付けました。
これは 、ミツバチや他の受粉昆虫が暖かい花を好むため、太陽光で暖められた東向きの花に集まるからです。
この暖かさは、早朝にエサを集めるミツバチにエネルギーをもたらします。ミツバチは、人が見ることのできない紫外線を見分けることができるのです。
つまり、 ヒマワリは太陽を向く方が、繁殖において明らかに有利だといえるでしょう。
もし、あなたが庭にヒマワリを植えるなら、 十分な日光が当たるようにしてくださいね。
以下の動画では、このヒマワリの特性についてみることができます。