私たち哺乳類はなぜ鳥やトカゲのようにカラフルではないのか?

2019年4月11日

サンゴ礁に生息する魚をはじめ、鳥やカブトムシ、花にいたるまで、自然界は色で溢れています。

地球上には、複数の種が共存するなかでムダな闘争や交配を避けたり、異性をひきつけたりするために、赤や橙、黄、緑、青、藍、紫など、虹色を使って豊かな色彩で自らを際だたせる生き物がたくさん存在します。

しかし一方で、哺乳類は、それほどカラフルではありません。

私たちに最も近い種で、ヒトと遺伝子が96%も類似しているといわれるチンパンジー、ネコ(約90%)、ネズミ(85%)、その他の哺乳類においても、毛や皮膚に鮮やかな色を持つ傾向がありません。

ここでは、哺乳類の毛や皮膚がなぜカラフルではないのかについて、生物の進化をもとに分かりやすく紹介します。

進化の過程でほ乳類の色が落ち着いてきた理由は、思った以上に複雑で、それは恐竜の時代までさかのぼって考える必要がありそうです。

色の見える仕組み

植物や動物に見られる色のほとんどは、色素と呼ばれる分子によるものです。

色素とは、特定の波長の光を吸収し、その他の波長を反射することで、物に色を与える物質です。

たとえば、ある物質が、赤以外の波長域を吸収して、赤色の波長だけを反射する性質がある場合、それは赤く見えます。

簡単にいうと、私たちは、物が反射した光を目で受け取り、それぞれの波長の違いによって脳で異なる色として感じ取っているのです。

このような色素は、生き物の皮膚や羽毛、毛皮、または、鱗などに存在し、赤やピンク、黄色などあらゆる種類の鮮やかな色を作り出します。

そして、私たち哺乳類が、鳥やトカゲ、昆虫などのようにカラフルではないのは、彼らほど色素の幅がないためだといわれています。

哺乳類が作り出す色素「メラニン」

色素にはさまざまな種類がありますが、ほとんどの哺乳類は、メラニンと呼ばれる1つの色素カテゴリーしか作ることができません。

メラニンには2つの種類があります。

黒、または茶色を生成することができる真性メラニン。そして、黄色、または赤褐色を作り出す亜メラニンです。

体のさまざまな部位に含まれるメラニンの量が異なると、シマウマの白黒の縞模様から黄色いキリンの茶色がかった斑点まで、さまざまなパターンを作り出すことができます。

実のところ、メラニン以外の色素に関しては、私達はそれらを作るための遺伝子を持っていません。

生き物の体の色

しかし、哺乳類はもう少しばかりカラフルになることもできます。

たとえば、マンドリルと呼ばれるサルの一種には、顔と性器のまわりに印象的な青と赤の発色があります。

この赤は皮膚を通して見える血管からくる色です。

そして、青は、皮膚の構造からくる着色で、それは私たちの目が青の波長を受け取るように、皮膚で光を分散して反射させることで青く見せているのです。

実際に、動物に見られるほとんどの青色は、直接色素によるものではなく、このような構造からくる色だといわれています。

実のところ、多くの動物は、色素を自分で作ることすらしていません。

たとえば、もともとは白色のフラミンゴの羽は、赤い色素が含まれる藍藻類やプランクトン、藻類などの食べ物からあの美しいピンク色を得ています。

しかし、哺乳類はもっと色彩バリエーションが豊かになるための可能性を持っていたにもかかわらず、そのように進化しなかったのはなぜでしょうか。

その理由は、今でも難題としてさまざまに論議されていますが、なかでも有力だと考えられている説を下記に紹介します。

哺乳類がカラフルではないのは色覚が少ないから説

マンドリルや鳥、蝶などはすべて、ほとんどの哺乳類にはない能力「優れた色覚」があるといわれています。

私たちの目(網膜)の真ん中には、錐体細胞(すいたいさいぼう)と呼ばれる特殊化された細胞があり、それが色覚の力を与えています。

多くの魚類、爬虫類、鳥類などは、この錐体細胞が4種類あり、それぞれが異なる波長の光を感じる光受容体を持っています。そして、これらの異なる波長をすべて一緒に見ることができると、複雑で色とりどりの絵ができあがります。

哺乳類の色覚の特徴

しかし、夜行性動物をはじめ、ほとんどの哺乳類は2種類の錐体しか持っていないため、それらは二色性です。

つまり、錐体細胞が2つの主な波長の光しか拾うことができないので、実際には多くの色情報を見逃していることになります。たいていは、緑と青の光の波長に合わせて調整されるため、この場合、赤や黄色を明確に識別することができません。

一方でヒトに関しては例外で、部分的な色覚異常だといえるでしょう。私たちも含めて、ほとんどの霊長類は、三色性で、赤、緑、青を見るための3種類の錐体細胞を持っています。

霊長類が、さまざまな色を見ることができるのなら、コミュニケーションのために明るい色を使うことははるかに理にかなっています。でなければ同じ種同士で、お互いに見ることができないような派手な色で飾ったところで意味がないためです。

しかし、私たちには3つ目の錐体細胞があるとはいえ、多くの非哺乳類ほど優れた色覚がないのはなぜでしょうか。それについて、恐竜の時代まださかのぼって考えてみましょう。

初期のほ乳類は夜行性であった説

およそ2億5600万年から6600万年前の中生代、世界は爬虫類に支配されていました。

しかし同時に、ほとんどが小型で弱い存在ながら、メガゾストロドンといった初期の哺乳類たちも、ニッチをついた生育環境で世界中に生息していました。

当時は、恐竜が陸上生態系の大部分を支配していたので、哺乳類は彼らとの衝突を避けるための戦略を考える必要があり、なかでも夜行性であることは素晴らしい戦術だったと推測されています。

この論理は、「夜行性ボトルネック」説として知られるようになり、多くの中生代恐竜が日中活動していたという仮説をもとに、初期の哺乳類が、恐竜との争いを避けて、夜間に食べ物を求めて活動していたと考えられるようになりました。

夜間の活動に、色覚はあまり必要ない

進化論では、ある種の遺伝的多様性が減少すると、ボトルネック効果が発生します。

ボトルネック効果とは、集団を大きなボトル(遺伝子のバリエーションが豊富な状態)と考え、個体数の激減や生息地の分断によって、その一部の人がボトルの細い口から取り出されたとき(遺伝的多様性の減少)、次世代に伝わる遺伝子の頻度(同じ生物集団内で特定の遺伝子の占める割合)の変動が促されてしまうことです。

この場合、恐竜の時代に暗闇の中での生活に適応した結果、その哺乳類の遺伝子の影響を強く受け継いだ子孫が繁殖することにつながります。

それゆえ、現代の哺乳類のゲノムについての研究において、私たち哺乳類は、視力が低下しただけでなく、皮膚や目を紫外線による損傷から防ぐための特定の遺伝子も失ってきた傾向があると考えられるようになりました。

色覚と紫外線防御はどちらも、太陽の下で長い時間を過ごす場合には非常に役立ちますが、夜間に活動するにはそれほど重要ではありません。

そのため、科学者たちは、活動の大部分を暗闇で過ごしたすべて、またはほとんどの哺乳類が、中生代の間にこれらの日中の形質を失ったと考えています。

恐竜絶滅後、哺乳類は日中にも活動するようになった

後に、恐竜の治世が終わり、ついに哺乳類が太陽の下で時間を過ごすときを迎えたとき、彼らは、日光に適応するための限られた遺伝的手段を用いるようになります。

しかし、すでに日中の活動を可能にする遺伝子のいくつかは取捨選択されており、それまでの長い間失われていました。

そのため、現在の哺乳類の多くが昼間に活動するとしても、そのDNAは依然として夜間モードに囚われていると考えられています。

一方で、ヒトやオラウータンといった霊長類のような特定の哺乳類だけが、より複雑な色覚を別に進化させていき、それに伴い、なかには他のほ乳類より多くの色を体にもたす種も生まれました。

最後に

私たち哺乳類の目は、鳥の目ほど鮮やかで多様な色を見ることはできません。

しかし、それは、私たちの祖先が、鳥類や爬虫類の祖先と共に生き残っていくために犠牲にしなければならなかったものだったのかもしれません。

そうはいっても、幸いにも私たちは、いつでも色鮮やかなセーターを着て、お気に入りファッションを楽しむことも、アートや写真、グラフィックデザインを通して、カラフルなデザインを作ることもできるのです。

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