初めて皆既日食を見たとき、奇妙なことに気づきました。
太陽が暗くなること以外に、たとえば、鳥たちが突然木にとまり、一斉に鳴き始めたのです。
実は、日食中の動物たちによる奇妙な行動は昔から知られています。
1560年、ポルトガルの天文学者は「恐ろしい暗闇に恐れをなして、鳥たちが空から落ちてきた」と記しています。
さらに最近では、2017年、サウスカロライナ州の動物園で、皆既中にガラパゴスゾウガメが群がり、集団の半分が交尾を始めてから、全員が空を見上げたという報告もあります。
では、動物がどのように日食を経験するのかについてこれまで分かってきたことを以下にみていきましょう。
日食中の動物の行動
日食に関連した動物たちの奇妙な行動については、何百年も前にさかのぼる逸話が何百と存在します。
学術界も関心を寄せており、2017年の北アメリカ大陸での約2分間の皆既日食だけで少なくとも26本の科学論文が生み出されました。
不安からくる行動
動物園の囲いの中を行ったり来たりするヒヒや、群れ全体で頭や尻尾を振りだした馬、円を描いて走り回り始めたキリンたちなど、おそらく不安に関連していると思われるパニック的な行動もあります。
夜の行動に変わる
鳥はねぐらに飛び戻り、夜行性のウシガエルは昼間の隠れ家を離れて活動し始め、昼間に新しいクモの巣を作るナガコガネグモは、日食の暗闇が訪れると、だまされて巣を解体したと報告されています。
混乱
他にも、テナガザルの群れが、研究者たちでも聞いたことのない奇妙な鳴き声を発し始めたり、チンパンジーの群れが木に登って空を眺めたりした論文も報告されています。
無反応
一方で、クマのように日食にまったく反応しない動物もいるようです。
しかし、実際に分かっていることを調べ始めると、事態は少し厄介なことになります。
日食の動物の行動は分類が難しい
まず、サンプル数に問題があります。
皆既日食は1年半に1回程度しか起こらず、しかも1回の日食で観測できる範囲は地球のごく一部の地域に限られます。
特定の場所では日食の間隔が100年以上空くこともあり、同じ生息地で繰り返し動物を観察することは、控えめに言っても簡単ではありません。
その結果、「ゴイサギは、日食の間不安な鳴き声を大量に発する」という研究(trigunayat M. Pavo.1997)があれば、「日食の間中は沈黙を守る」という報告(Ellit J.Tramer, Wilson bull. 2000)もあるように、互いに完全に矛盾する研究結果も当然でてきます。
こういったゴイサギの行動をどう分類するかはとても難しいのです。
第二に、動物の頭の中で何が起こっているのかを知るのは本当に難しいからです。
例えばカメが日食中に交尾せざるを得なかった理由を知ることはできません。
そしてそれは、私たち自身の問題にも関係してきます。
私たちは、日食中に動物が何か奇妙な行動をとるかもしれないと期待する傾向があります。
そして、こうした期待は、日食中に動物が何をしようと、日食そのものが原因であると勝手に思い込んでしまうかもしれません。
これらの逸話や研究は、動物たちが皆既中の2分間にいったい何をしているのか、何を考えているのかということよりも、実際には、私たち自身について、そして日食が私たちにどれほど深い影響を与えるのかということについて多くのことを教えてくれるのかもしれません。
日食は、私たち自身の種に恐怖や不安を呼び起こすこともあれば、興奮や驚きを呼び起こすこともあります。
それゆえ、他の生き物たちが私たちとその経験の一部を共有していると期待するのは自然なことなのかもしれません。
日食について学べるサイト
もし、あなたが皆既日食に興味があるなら、NASAのサイトを参考にしてみるのもおもしろいでしょう。
NASA HEAT(ヘリオフィジックス教育活性化チーム)の使命
EclipseSoundscapes.orgにアクセスすれば、日食中に近くにいる動物の鳴き声を録音するオーディオモスと呼ばれる小さな装置をNASAから送ってもらうために登録することもできるそうです。
十分な数の市民科学者が参加すれば、日食が動物にどのような影響を与えるかについて、もう少し明らかにできるかもしれませんね。