なぜすべての鳥がエネルギー効率の良いV字型で飛ばないのか?

2019年11月19日

「鳥の群れ」といえば、みなさんは何を連想しますか?

おそらくV字型に飛ぶ渡り鳥を思い描く人が多いのではないでしょうか。

何十、ときには何百もの群れが先頭の鳥を中心に左右にV字に広がって飛ぶ光景は秋の風物詩としても有名です。

しかし、すべての鳥の群れがV字飛行するわけではありません。たとえば、ムクドリは、密集した大きな群れで波のような3次元の動きを作り出して移動します。

では、なぜ鳥の群れにはV字の編隊を組む種もいれば、塊で飛ぶ種もあるのでしょうか?

ここでは、長い間研究者を魅了してきた鳥のV字飛行について、羽ばたきのタイミングや個々の配置場所によってエネルギー的な利益を最大化している仕組みをもとに分かりやすく紹介します。

どうやら、鳥の飛び方の違いは、個々の鳥の大きさの違いが大きく関係しているようです。

渡り鳥がV字に飛ぶ理由

冬に南に向かうガンのように、気が遠くなるほど長い空の旅をする渡り鳥にとって、V字型飛行は、お互いを目で確認しながら衝突を避け、疲れが出ないように移動するのに役立っています。

このV字の恩恵を受けられるのは翼の構造のおかげです。

それは、飛行機の翼が(上下における空気の圧力差によって揚力を生み出せるように)デザインされている原理に基づいて考えられた理論ですが、鳥の場合、羽ばたくという点では少し異なります。

鳥はなぜ飛べるのか?翼のメカニズムとV字飛行の関係

まず、鳥が翼を羽ばたかせると、翼の上側と下側の空気の圧力が変わります。

すると圧力が高まった翼の下側から、圧力が低い翼の上側に向けて空気の流れが生まれ、各翼の先端ではその流れが渦となって上昇気流が発生するのです。

後続の鳥は、この先頭の鳥が作り出した渦のうねり、つまり上向きの風によって生み出される揚力をうまくとらえると、空気抵抗を減らしてエネルギー消費を最小限にとどめて飛ぶことができます。

そして、それには、すぐ斜め後方を空気の動きに合わせて連なって追随することが求められます。

それがV字型に編隊を組む理由です。V字飛行では、後方の鳥ほど、上昇気流の恩恵を受けて心拍数を抑えることができ、できるだけ心臓に負担をかけずに省エネ飛行ができるといわれています。

研究では、このようなV字型飛行をする鳥は、約15%の体力消耗を抑えられると推定されています。

鳥は、複雑な飛行力学を認識して、それを感知する能力がある

ロイヤル・ベタリナリー大学の生態生理学者のスティーブン・ポルトガル博士によると、V字飛行で追随する鳥は、上昇気流の渦を正確に感知してそれに反応し、前の鳥との距離や翼の羽ばたきのタイミング、ペースなどを繊細に調整して、最適な角度(45度)で羽ばたいているといいます。

そして、個々が空力的に最適な位置を飛んでいるので、翼の幅が同じ鳥同士で飛ぶ場合、形成される上昇気流に合わせて自然と等間隔で飛ぶようになるというわけです。

実のところ、動物の飛行においては、運動系よりも感覚系についての知識が乏しかったため、以前は、鳥が高度に組織化された飛行能力をもつことに関しては不可能だと考えられていました。

しかし、鳥はV字飛行において、空気力学を巧みに使ってエネルギー効率を最大化していることが示されたのです。

また、鳥たちは、最も空気抵抗を受け、体力の消耗が大きいといわれる先頭の位置を皆で順番に交代することで、お互いのエネルギーの消耗を節約してより長い距離を飛べるように助け合っていることも分かってきました。

それでは、なぜすべての鳥がこのような省エネ飛行をしないのでしょうか?

なぜV字型に飛ばない鳥がいるのか?

モンタナ大学にある鳥類生態学研究室のエリックグリーン教授によると、このナゾは、鳥の大きさに関係しているようです。

通常、ガンやペリカン、白鳥、トキといったV字で飛ぶ鳥は、翼の幅が広い大型の鳥です。

これらの種は、上下に羽ばたく翼の角度が小さくても、後方にきちんと空気の渦を作ることができます。

一方で、小型の鳥は、翼を上下に大きく動かす傾向があり、その動きによって翼の周りに発生する渦はあちらこちらに点在してしまいます。このようにして生まれた空気の渦には、群れの仲間が実際に活用できるほどの一貫性はありません。

なかには大型の鳥のようにわずかな翼の角度で飛ぶ小鳥もいますが、彼らの場合、身体が小さすぎて十分な空気な渦を発生させることができないようです。

それどころか小型の鳥の場合、群れでの飛行は、単独飛行より多くのエネルギーを消費することさえあります。

しかし、これらの小さな種にとって群れでの移動は、省エネとは別の重要な目的がるようです。

それは「身を守る」ことです。

小型の鳥が群れで移動する理由

1971年、進化生物学者のウィリアム・ドナルド・ハミルトン博士は、「利己的な群れの幾何学(希釈効果)」と呼ばれる理論を発表しました。

それは、ある動物が、それ自身と捕食者との間に別の動物を置いた場合、各個体への危険リスクを回避するような効果があることを示しています。

つまり、外敵による危機にさらされたときに、単独で飛ぶよりも、群れをつくって飛ぶ方が、自分が捕食者から狙われる確率が減るというものです。

この理論は、鳥だけでなく、魚や昆虫の群れでも、生存戦略として認められています。

最後に

いかがでしたか。

鳥は、想像以上に、複雑な空気力学を認識し、それを感知する能力を有していた可能性があることには驚くばかりです。

さらに、ポルトガル博士は、鳥がお互いの位置や動きを正確に把握しあっている可能性も示しています。

もし、次にあなたが鳥の群れを見ることがあれば、彼らはエネルギーを節約するか、または、ただ個々が生き残るために群れを形成しているのか、鳥の大きさを見て判断してみるのもおもしろいかもしれませんね。

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