アヒルのような水鳥の羽は疎水性で、水をよくはじきます。
アヒルの背中に水を垂らすと、水が玉になって、するすると地面に落ちていきますね。
これはなぜか、疑問に思ったことはありませんか?
水鳥が、水をはじくために羽を(しっぽの付け根から出る)油でコーティングするのは有名ですが、新たに油がなくても、羽の構造自体が水をシャットアウトしていることが発見され、注目を集めています。
驚いたことに、2021年の研究で、アヒルの羽の構造自体に水をはじく仕組みがあることが分かったのです。
今回は、水鳥の羽が水をはじく仕組みについて、研究で分かった興味深い結果を中心に紹介します。
水鳥の羽にある隙間の秘密
羽を細かくみていくと、それぞれが枝分かれした構造になって、間に隙間があります。
これらの隙間は、羽の中に空気を閉じ込める小さなポケットの役割をし、浮袋になるだけでなく、潜るときの抵抗を減らす助けとなります。
イタチなどの天敵に襲われにくい水の上で、体温が下がるのを防ぐ効果もあります。
しかし、アヒルが深く潜るほどに、周囲からの水圧が高まってしまうため、自然とこの羽にある空気のポケットには水が押し込まれてしまいます。

もし羽から水が浸み込んで皮膚にまで達すると、アヒルはどうなってしまうの?

おそらく空気を閉じ込めたことによる断熱効果や水への抵抗を失ってしまうでしょうね。
でも、アヒルの羽毛には、それを防ぐための驚くべき仕掛けがあるのよ。
アヒルの羽毛は何層にも重なっている
アヒルの体は、皮膚に水がつかないように、表面には水をはじく羽が覆い、その内側には軽くてやわらかい羽毛が何層にも重なってびっしりと生えています。
近年、科学者たちはついに水鳥が水をはじく仕組みを解明しました。
2021年に行われた研究では、圧力装置の中でアヒルの羽を重ねていき、その上に水を入れてゆっくりと圧力を上げながら、その様子をカメラで撮影しました。
圧力がかかると水は、最も簡単なルートを通って羽の隙間から押し入ろうとします。
しかし、羽の層が増えるほど、簡単に通り抜けられる隙間が並ぶ可能性は低くなります。
これは、生け垣の迷路を抜けようとするようなもので、羽の層を増やすと基本的に行き止まりが多くなり、水は立往生して閉じ込められてしまうのです。
空気を逃がさないための羽毛の構造
そこで、研究者らは、羽毛の構造の役割を調べてみることにしました。
レーザーで羽毛に似せてカットしたアルミホイルで人工羽毛を作り、細かな穴を再現し、それを何層も重ねて実験を行いました。
結果的に、人工羽毛にも同様の効果が見られましたが、実に素晴らしいのは、アヒルが、常に空気のポケットがある状態を保つために、羽毛の層をちょうど良い数に調整している点です。
深く潜るアヒルは、深さによる大きな圧力に耐えられるように、より多くの羽毛の層を持っています。
アヒルの羽毛構造を船で実用化
研究者によると、このようなの羽毛の層は、おそらくほとんどの水鳥に存在するそうです。
研究者たちはまた、この偽のアヒルの羽を、私たちの生活で実用化させる可能性も示しました。
船の外側に、このアルミの人工羽のようなものをつけて、水の抵抗を減らしたり、フジツボの付着を防いだりすることへの活用です。
アヒルが水に濡れないというありふれた現象に、非常に優れた物理学が隠されていたなんて大きな驚きですね。