「犬 vs ネコ 」ペット化された動物の目には見えない部分の進化

犬 vs ネコ ペットについてのおもしろい科学動物・生き物

今回は、君主的なネコや忠実な犬をはじめ、人間が家畜化したことで彼らに引き起こされた目には見えない部分での進化の話を紹介します。

人間に飼いならされた動物は、次第に脳が収縮していき、「闘うか逃げるか反応」を失っていきました。

一方で、彼らの身に起こった変化とは?

家畜化は動物を変えた

家畜化するうちに、犬はどんどん小型化し、羊はふわふわの毛を、そして、馬は体に模様をまとうようになりました。

しかし、もっと注目すべきは、外から見える変化よりも、目には見えない物理的変化です。

なんと、人間によって家畜化された動物たちは、共通して「脳の収縮」が見られることが分かったのです。

ペットとして飼われるようになったアヒルの脳は約15%縮小し、猫の脳は30%、豚の脳は35%も縮小しました。養殖マスの脳でさえ、20%も小さくなったといわれています。

これはとても奇妙な話です

人間に飼いならされた動物は脳が小さくなった

ペット化された動物の脳の収縮

一般的に、動物の脳の大きさと体の大きさは非常に密接に関連しています。

ダニはアリよりも脳が小さく、アリはネズミよりも脳が小さく、ネズミの脳はゾウよりも小さいことをはじめ、同種内の個体間でも脳と体のサイズには、ある種の法則のような関係が存在します。

例えば、同じオオカミの種でいうと、体が小さい方が脳も小さく、小型犬は大型犬よりも脳が小さくなります。

しかし、オオカミと犬とを比べると、どのサイズでも同じサイズの個体間であればオオカミの方がより大きな脳を持っています

野生動物と家畜化された動物の違いだけでなく、飼いならされた動物間でみても脳の大きさは不均衡です。

一体、このように脳の大きさに違いがあるのはなぜなのでしょうか?

家畜化された動物は「戦うか逃げるか反応」を失っていった

人に慣れた動物の「戦うか逃げるか反応」

脳の非常ボタン、つまり、外からの危険が脳にいつどのように伝わるかを調べたところ、動物の恐怖への反応を示す「戦うか逃げるか反応」は、野生に近いほど敏感で、飼いならされた動物であるほど遅くなります

それらは、人間が、家畜化する過程で、飼いならされた動物同士を互いに繁殖させてきた結果としてあらわれたもので、彼らの脳はどんどん収縮していったようです。

要するに、飼いならされた動物は、人類との長期的なパートナーシップを形成しながら、危機的状況において、生存のために戦うか逃げるか反応を失っていきました

ネコはどのように人間のペットとなったのか?

アメリカだけでも、ペットとして飼われているネコは約8500万匹といわれ、世界中のネコを一列に並べると、なんと地球をほぼ5回包むほどの距離(約240000km)にまでなるようです。

そもそも人間は、どうやってネコと家を共有するようになったのでしょうか?

アメリカでは、3.7人に1人がネコを飼っています。

ネコのペット化は、約1100万年前にアジアで始まったといわれています。

現代のネコの多くは、その初期のネコが、家族と共有する食べ物を求めて遠くまで旅をして分岐したものです。

ピューマは、1匹でほぼ1000km²もの領域をパトロールすることが知られています。

それはアメリカンフットボール場20万個分と同じくらい広いエリアです。狩りの習性をもつネコ科動物の行動範囲には驚かされますね。

一方で人間が、狩猟採集社会から離れて土地に根を下ろし、農耕生活を始めると、げっ歯類のような動物が狩りの獲物の代わりに新たな食材に加わりました。

すると、ネコたちは、そのネズミを追いかけて人間社会にやってます。

結果的に、ネコの巧みな狩猟本能は、私たちの祖先の食料調達の大きな助けとなったようです。

そのうち、人々はネコに魅了されはじめ、だんだん固執するようになりました。

実際にキプロスでは、9500年前の墓から猫が一緒に埋葬された子供の人骨も見つかっています。
また、古代エジプト人は、ネコを女神の化身として崇拝しました。

しかし、ネコは、年月が経っても狩猟本能と歩き回りたいという衝動を持ち続けました

それがネコをしつけるのが非常に難しい要因でもあり、野生動物と変わらないようにさえ感じられますが、実際には変化した部分もあります。

ペット化されたネコは植物を消化しやすくなり、さらには、猫の危機反応に影響を与える遺伝子をも変化させてより友好的にしました

そうはいっても、やはりほとんどのネコは、飼いならされる前の彼らの祖先とまだ似ている点が多く存在するようです。

しかし、犬の場合、シーズーやシュナウザーを見ても分かるように、オオカミの血筋を引いているとは思えないほど変化した種も多くいます。

犬の種類による違いはほとんどない

犬の種類による違い

英国では、裕福な人々がドッグショーを始めて以来、1800年代後半には、観戦スポーツやらのパレードやらと、犬のトップの座を争うために、特定の犬種を繁殖させる人やしつけを請け負う人などが生まれました。

彼らはブリーダーと呼ばれ、レトリバーのようなスポーツ犬種グループや鳥猟犬のスパニエルのように人間の仕事を助ける犬種グループ、ドーベルマンのような番犬グループ、コリーのような牧羊犬や牧畜犬グループというように、犬たちをグループ分けして訓練しました。

そして、これらの犬の種グループは、現在でも戦地や災害現場で活躍するスポーツ犬種、羊を管理する賢い牧畜グループ犬、そして、勇気ある番犬グループ犬というように、現在も活躍しています。

犬のふるまいについての研究で分かったこと

しかし、20年間の犬の研究によって、特定の種グループの犬は特定のスキルを共有することはよくありますが、実際にブリーダーがグループ分けした種の間では、それほど違いがないことが分かりました。

スウェーデンでのある研究では、31の異なる種の犬を13,000匹以上特定のコースを走らせて、音への反応、驚き方、人間への対応などから、遊び心、好奇心、社交性、攻撃性のレベルを調べました。

研究の結果、異なる種のグループ間でほとんど違いがみられないどころか、興味深いことに、ゴールデンレトリバー(スポーツグループ犬種)は、他のスポーツ種よりもロットワイラー(牧牛・番犬種)に似ていることが判明しました。

実際、ほとんどの犬は、グループ内の他の種よりも、グループ外の種のような行動を見せたのです。
さらに、何十もの犬の知性についての研究では、迷路を解き、指示に従うことになると、一部の種は抜きんでていましたが、ほとんどすべての種グループがほぼ同じようにふるまいました。

どうやら、私たちは、ブリーダーたちによって、何年にもわたって犬の種に関する先入観を与えた結果、少し色眼鏡で犬を見るようになったようです。

これについて心理学の研究では、次のようにいわれています。

特定の方法で何かを見始めると、私たちはそのイメージを強化する証拠を見つめ、それを弱体化させる証拠を無視する傾向があります。

アメリカだけでも、ペットとして飼われているネコは約8500万匹といわれ、世界中のネコを一列に並べると、なんと地球をほぼ5回包むほどの距離(約240000km)にまでなるようです。

つまり、真実は、その先入観だけで判断することができないということです。

参照元:Cats vs Dogs