もしあなたが皆既日食のホットスポットを探しているなら北の果てを目指すとよいでしょう。
実は、北半球は、南半球の2倍の確率で皆既日食を見ることができます。
さらに、北半球のなかでも最も確率が高い場所は、北緯80度付近。
では、なぜこのように特定の場所では、他よりもはるかに多くの皆既日食を経験できるのでしょうか?
それには、天体の大きさや軌道、地球の緯度などが深く関係しているため、以下に皆既日食を見るための条件などをもとに分かりやすく紹介します。
なぜ月で太陽が隠れるのか?月と太陽が同じ大きさに見える理由とは
地球上のどの場所でも少なくとも1回は皆既日食を見ることができます。
そして、この皆既日食を見られる確率が場所によって異なるのは、天体の偶然の一致によるものです。
まず、太陽(直径140万km)は月(3500km)の約400倍の大きさですが、地球からの距離も400倍離れています。
その結果、ここ地球からは、太陽と月が、(見かけ上)ほぼ同じ大きさに見えるのです。
ここで「ほぼ」と述べたのは、地球が太陽を回る軌道は完全な円ではないからです。
地球は、1年のうち太陽から少し離れている時期があります。
このような時期に地球、月、太陽が一直線に並ぶと、間に入った月が効果的に太陽を隠すため、皆既日食が起こりやすくなるのです。
しかし、それ以外の時期は地球が太陽に近づくので、太陽が通常よりも大きく見えます。
このような時期に地球、月、太陽が一直線に並ぶと、より大きく見える太陽を月が完全に隠すことはないため、金環食となります。
北半球の方が皆既日食を多く見られる理由
そして、ここに北半球と南半球の境界線「赤道」があります。
夏の日照時間の違い
どちらの半球でも、日食が起こりやすいのは太陽が地平線より上にある時間が長い夏。
そして偶然にも、北半球の夏は、地球の公転軌道において、太陽から最も遠い場所で起こり、南半球の夏は最も近い場所で起こります。
その結果、皆既日食は北半球で起こりやすくなるのです。
基本的に、皆既日食は、北半球のどの場所でも平均して330年に1度は起こります。
一方で、南半球では550年に一度という感じです。
皆既日食を最も見られる場所
さらに、北半球でも緯度が高くなるほど皆既日食を見られる割合は高くなります。
これにはいくつかの理由があり、
ひとつは、緯度が高いところでは夏の太陽が地平線より下に沈むことがほとんどないため、夜でも日差しがあること。
そして、北極圏付近の日食帯(日食が見られる範囲)は、低緯度の日食帯の4倍以上の幅があります。
つまり、統計的に皆既日食を見るのに最適な場所は北緯80度付近であり、この線上のどの場所でも平均して238年ごとに皆既日食を見ることができると考えられているのです。
皆既日食が直近で頻繁に見られた場所とほとんど見られない場所
しかし、これらの数字はすべて、長い期間の平均であることを忘れてはなりません。
イリノイ州のカーボンデールは、北緯38度に位置することから統計では330年ごとに皆既日食が見られるはずですが、2017年の皆既日食からわずか7年後の2024年にも再び見られました。
また、統計上420年に1度皆既日食を見られるはずのニュージーランドのクライストチャーチでは、直近の皆既日食は約2000年前まで遡り、次の皆既日食まではさらに4世紀待たなければなりません。
つまり、皆既日食を見るには緯度だけでなく、運も重要なようです。