1990年にハッブル望遠鏡が打ち上げられて以来、宇宙望遠鏡の技術ははるかに進化し、2024年には新たな驚くべき宇宙からの映像が届きました。
ここでは、そのなかでもユークリッドと呼ばれる宇宙望遠鏡によって撮影されたベスト写真を紹介します。
星が形成されるプロセスを知る手がかりとなったオリオン座のM78の写真、前例のない銀河系全体という広い領域を写した写真、そして、それらが解き明かした新しい知識です。
星の赤ちゃんたちが作る光をぜひご覧ください。
ユーグリットによる宇宙写真
宇宙空間の写真は、その色彩の美しさや壮大さで人を感動させるだけでなく、天文学者らの最先端の研究にも利用されています。
ユークリッドとは、人の目には見えない光線を利用した近赤外線宇宙望遠鏡です。欧州宇宙機関(ESA)を中心に開発され、2023年夏に打ち上げられました。
主な目的は、大きなスケールでの宇宙の構造理解と、それが過去100億年の間にどのように変化したかを調べることでした。
宇宙の膨張を加速させていると考えられているダークエネルギー、宇宙に存在するが見ることはできないといわれる未知の物質「ダークマター」について知り、スピードアップしている宇宙の膨張などが調査されています。
ユークリッドによるビッグデータ投下は2024年5月。それには10本の科学論文に加え、その論文作成に貢献した5枚の壮大な画像が含まれていました。
そのうちの2枚がこちらです。
星が形成される分子雲の画像
1つ目は、驚くべきオリオン座のM78:星が形成される分子雲。
オリオン座にある三ツ星の帯の左上にある新しい恒星が形成される領域「育星場」の画像です。
そう、星の赤ちゃんたちが作る光です。
1600光年先で星が形成されるプロセスの各段階を見ることができます。これらの星雲の中で新星からの光の反射が一際明るい領域がM78といわれています。
このデータからは30万個以上の新しい天体が発見されました。
ユークリッドは単に解像度の高い装置を持っているだけではなく、可視光と赤外線の両方を見ることができます。 そして、この画像はその両方を組み合わせたものです。
可視光とは異なり、赤外線は星間ダストを通過することができます。
そのため、研究チームはこの画像を使って、惑星を含む30万個以上の新しい天体を発見したのです。
真ん中の明るい紫色の領域が見えるでしょうか?
これは、星の赤ちゃんがたくさんできて、放射線をたくさん出し始めたところです。
星は、ガスやチリからなる雲が自らの重力によってぎゅっと収縮して圧力と温度を高めることで核融合を起こして誕生します。
そして、この核融合を起こすほどの十分な圧力と温度を持つほどガス雲が高密度に集まるには数百万年はかかるといわれています。
生まれたばかりの星はまだ雲の中に埋もれていますが、だんだんと内部の圧力が重力より強くなっていくと、ガス(恒星風)や光(放射圧)という形で外に力を放出するようになり、やがて、星雲が内部から放つ光を私たちは目で見ることができるようになります。
これらのパターンを研究し、この天体の育星場でどれだけの星や惑星が作られているかをよりよく理解することで、科学者たちは星や太陽系がどのように形成されるのかについての調査が進むことに期待しています。
銀河系全体を収めた写真
一方、2枚目のユークリッドの写真には銀河系全体が写っています。
この銀河は公式にはいくつかの異なる名前で呼ばれていますが、ここではユークリッド・チームが好んで使っている名前、 NGC 6744を使います。
くじゃく座の方向に見られる3000万光年ほど先の渦巻銀河で、現在、私たちの地球のある天の川銀河に最も似たものの一つとして知られています。
では、いったいこの銀河の写真の何が他と違い、素晴らしいのでしょうか?
この新しい宇宙望遠鏡ユークリッドは、広視野で高解像度の画像を撮影できるユニークな能力を持っています。
そのため天文学者は、銀河のような大きさのものだけでなく、その周辺の領域も含めて、前例のない全体像を見ることができるようになったのです。
通常、このようなショットを撮るには、天文学者は別々のスナップショットを何枚も撮り、ソフトウェアを使ってつなぎ合わせる必要がありました。
しかしユークリッドは、わずか1時間ほどでこれを一度に撮影しました。
天文学者は、銀河の渦巻きが渦を巻きながら物質をまとめる様子が確認できることから、銀河が新しい星を形成する方法を知る手がかりになるといいます。
しかし、渦状腕がどのようにして星形成を始めるのかはまだ謎のままです。
銀河の右上を見ると、小さな白い雲が見えるでしょう。
これは実は矮小衛星銀河で、これまで見られなかったものです。
矮小衛星銀河とは、暗くて小さな銀河が、より大きな銀河の重力にとらえられているものです。
これらの2024年に撮影された宇宙の映像については以下の動画で見ることができます。