飛行機の窓にある小さな穴は、機内と外の気圧の差を調整し、結露を防ぐ役割があります。
小さな穴ですが、これは飛行機にとって最も重要な安全装備のひとつなのです。
みなさんは、飛行機が空高く上昇すればするほど、空気の量が減り、気圧が下がることを知っていますか?
一方で、飛行機は、乗客のために安全で呼吸可能なレベルに保つように内部の気圧を一定に維持しています。
すると、飛行機の内と外では、大きな気圧差が生じてしまいます。
そこで、窓に開けられた小さな穴がどのように飛行機の内側と外側との気圧のバランスをとっているのかについて以下に分かりやすく紹介します。
気圧ってなに?
そもそも気圧とは、空気の押す力「圧力」のことです。空気には重さがあるゆえに、生まれる力です。
地球上には大気があり、私たちも動物も、飛行機も全てのものが、空気によって全方向からおさえつけられています。
地面も例外ではなく、その上にのっかっている空気の重さから生じる圧力がかかり、絶えず押さえつけられているのです。
そして、空気の粒が多ければそれだけ質量も重くなり、気圧(空気が押す力)も大きくなります。
しかし、飛行機も私たちも、この空気の圧力によってつぶされることはありませんね。
それは、飛行機も私たちの体も、内部には、外からかかる気圧と同じだけの空気を含んでおり、内側から押し返しているからなのです。
上空の気圧が低い理由
基本的に地上では、約1気圧の力が常にかかっています。
しかし、空高く上昇するほど、空気は薄くなり(空気の粒が少なくなる)ます。
上昇すればするほど、その地点より上にのっかる空気はどんどん少なくなっていくので、上空は、地上に比べて気圧が低くなるというわけです。
すると、飛行機の内部の大気圧は、外側の気圧よりも大きくなり、高度が高くなるほど、内外での気圧差が大きくなります。
「小さな穴」の役割
一般的に、気圧の差ができると、気圧の高い域(内側)から低い域(外側)への空気の移動が始まります。
すると、機内はわずかに膨張し、飛行機の窓は内側からの空気に押されて大きな負担がかかります。
そこで活躍するのが窓に開けられた小さな穴です。
気圧差のバランスを取る
大きな気圧差は、窓に大きな物理的負担をかけます。
そのため、窓は特に頑丈に作られていなければなりません。
一般的な飛行機の窓は、外板、中板、内板のアクリル系樹脂パネルの3重構造となっています。
この1枚目のパネルに万一のことがあった場合、2枚目のパネルがフェイルセーフの役割を果たすのです。
小さな穴が開けられているのは真ん中のパネル。
また、真ん中と外側のパネルの間には、広めに空気の隙間が存在します。
これによって、この小さな穴を通って空気の粒が、パネル間の空気の層を出入りできるので、外側と機内の気圧の差を段階的に調整してバランスをとるのに役立っているのです。
さらに、窓の形にも秘密があります。
飛行機の窓が楕円形の理由
もし、飛行機の窓が長方形や正方形であれば、窓を内側から押す空気の力は、角に蓄積する張力を引き起こすでしょう。
この張力は窓の角に亀裂を生じさせる恐れがあります。
つまり、楕円形の窓は、力(応力)の経路をスムーズに整えて、過度な張力を生じさせないためだったのです。
温度差による結露を予防する
飛行機は、外気温がマイナス40度にもなる上空を飛ぶこともあります。
機内の温度は一定に保たれているため、そうなると内外の温度差は60度以上にもなり、必然的に窓には、結露が発生しやすくなります。
窓に開けられた小さな穴は、空気の層から湿気や熱を放出するのにも役立ち、窓に結露ができたり曇ったりするを防ぐ役割もあるのです。