これまでに、カラスが仲間の死を集団で悲しみ、悔むような姿がさまざまな場面でみられています。
どうやらカラスの鳴き声は、混沌とただ騒がしいだけではないようです。
実際に、カラスは、他の多くの鳥よりも高い認知能力を持っており、複雑な問題を解決したり、将来のタスクへの戦略を立てることを示した研究も多いことから、その可能性は否定できません。
また、カラスは、ゾウやクジラと並んで、死に対して反応を示す動物界では数少ない種の1つだと考えられています。
ただし、現段階では、カラスの複雑な感情の存在を裏付ける証拠が不足しているため、仲間の死を悲しみ、弔うような表現を示す理由について科学者は、以下のような「危険学習」によるものだと考えています。
カラスは仲間の死骸に反応
カラスは同種の死骸を発見すると、鳴き声で仲間に警告を送ります。
すると、あちらこちらからカラスが木の枝に集まってきて、 死骸を上から観察し、まるで悲しみを表現するかのように大きな鳴き声を出し始めます。
そして、追悼の後、彼らは故人を見守るかのように静かに座っています。
もし捕食者が死骸に近づくと、急降下して襲いかかったり、やかましく鳴きたてて追い払ったりもします。
これまで、カラスのこうした儀式が農家や野鳥観察者に頻繁に見られてきたため、科学者たちは この問題をより正式に調査することにしました。
死を認識できていない可能性
研究者らは、剥製を使ってカラスの反応を引き出す実験を行いました。
すると、本物のように見える剥製のカラスでも、同様の反応、つまり、警戒の鳴き声と集団的な追悼儀式のような反応を引き起こしました。
カラスの中には、「死体」を優しくつついたり、ゆさぶったりと物理的な触れ合いをするものもいました。
とても稀なケースでは、特定のカラスが、偽の死んだ鳥と性行為を試みることもあります。ただし、この行為は、動物界ではそれほど目新しいことではありません。
この奇妙な行動は主に繁殖期に見られ、生物が死を認識できないことに起因すると考えられています。
カラスの反応の意味とは
それでは、カラスが仲間の死骸を見ると追悼儀式のような行動を示すのはなぜなのでしょうか?
それは人間のように感情によって動かされているからでしょうか、それともただの合理的な現象なのでしょうか?
科学者たちが考えるのは、その後者で、悲しみから引き起こした反応ではなく、潜在的な危険について学ぶ必要性が迫られているからではないかといわれています。
ケーリー・スウィフト氏とジョン・マーズラフ氏(ワシントン大学環境森林科学部教授)によると、死骸は、生きている他のカラスに重大な危険が迫っていることを警告し、カラスがそれを警戒して数週間鳴き続ける可能性があるといいます。
中には、このような死亡事故が起きた場所を避けるカラスも見られました。
また、「死んだ」鳥が、同種のカラスではなくハトだった場合、反応はおだやかでした。
カラスは死への感情的反応をもつのか
しかし、カラスやワタリガラスを含むカラス科が、人間と同じような死への感情的反応を引き起こすかどうかについてはまだ謎が残っています。
彼らは本当に悲しみや共感を感じることができるのでしょうか?
過去の研究において、鳥は、仲間の死に対して、永続的な絆を形成しやすいことで知られており、複雑な感情をもっている可能性も示されています。
ある実験では、カラスがパートナーの感情を反映することが示され、動物ではめったに見られないレベルの精神的知性が示されています。
いずれにしても、死への対応への彼らの興味深いアプローチは、 世界中の鳥愛好家や専門家にとって依然として魅力的なものであることには変わりはないようです。
参照元:they mourn dead