手品で鳥はだませるのか?研究結果は?人間と鳥の意外な反応の違いとは

2021年10月29日

手品で、鳥をだますことができる。

こう言った科学者は、鳥のための手品を考えました。

彼は、ただ「やることがないから楽しい実験を思いついただけ」というわけではありません。

もしかしたら、この楽しそうな実験が、動物がどのように知覚し、それが何なのかを判断したり、解釈したりする認知が人間とどのように違うのか、また、共通点はあるのかを理解するのに役立つかもしれないからです。

今回は、イギリスの名門ケンブリッジ大学の心理学者チームが、ありふれた手品で、鳥をだませることを証明したユニークな科学的成果を紹介します。

この研究は、人間を欺く手品の技術を、他の分類群がどのように認識しているかを調べた初めての研究です。

カケスに手品が通じるのか?

イギリスの研究者グループは、ユーラシア・カケスのために、ちょっとしたマジックショーを行うことにしました。

カケスは、複雑な認知能力をもつことで知られるカラス科の鳥

たしかにどの動物も身の回りのものを探したり、食べ物を見つけたり、安全を確保したりするための基本的な認知能力を持っています。

しかし、動物のなかには、数を数えたり、時間の概念を持ったり、外界にある対象を知覚した上でそれが何かを解釈したりなど、認知能力がヒトに近い種もいます。

知能の高いカケスは、その後者。

手品が通じるのは、まず、マジシャンが観客の気持ちを理解しているからです。

手品に騙されるには、実体のないものをイメージしたり、問題を予測したり、解決したりといった抽象的な思考が必要です。

観客が、物事をどのように認識し、予測するかを理解したうえで、マジシャンは、それを逆に利用して人の注意をそらせて知覚の盲点をつき、手品を機能させるのです。

つまり、手品は、相手にある程度の知能がないと、意味をなさないものになるのです。

カケスはマジシャン

実際に、カケスは、手品師のようなものです。

カラス科の鳥が、実際とは違う場所に食べ物を隠すフリをして、他の鳥を欺くのはまさに手品師と同じ手口といっていいでしょう。

これらの鳥は、知識や経験に基づいた推測を行うことも分かっています。

他の研究では、オスが、気に入ったメスの食べ物の好みを正確に予測することも観測されています。

つまり、カケスは、賢いのでこの研究の対象に選ばれたのです。

鳥のために考えられた手品

科学者らは、カケスの特定の実験のために、マントや杖を使うのではなく、3つの簡単なトリックを選びました。

まず、どちらかの手の中においしいミミズが隠れていると思わせます。

その後、マジシャンは、カケスの前で3つのトリックを使って、エサを片方の手からもう片方の手へうつす、またはうつすフリをします。

どちらの手にエサがあるかを当てると、おいしいミミズにありつけるというわけです。

鳥をだます3つの手品のやり方

・反対の手にうつすフリをして、手の中にエサを隠し持つ「パーム」

・えさをもう片方の手でとったフリをして、実際にはうつさない「フレンチドロップ」

・手からもう一方の手へ実際にすばやく移動させる「ファストパス」

実際の手品の様子

この3つの手品のポイントは同じで、異なる手掛かりや期待感を利用して、「エサが片方の手からもう片方の手に移された」、あるいは「移されていない」とカケスに誤解させるように仕向けることです。

結果的に、カケスは、あったはずのエサが消える「パーム」や「フレンチドロップ」に関しては、人間とは異なる期待を抱くことが示されました。

カケスは視覚をたよりにした手品にだまされやすい

私たちは、「パーム」や「フレンチドロップ」のような見せかけのマジシャンの動き(視覚)から、無意識にエサが手の中を移動することを期待しますが、カケスはその効果にはだまされませんでした。

たしかに、カケスは、人間の普通の行動に基づいた過去の経験と理解をもっていないため、(エサを移動するフリが通用しない)だますことができないのもうなずけます。

しかし、速い動きでだます(実際に移動させる)マジックの効果には惑わされ、エサが反対の手に移されたことが分かりませんでした。

つまり、ものごとを共通点や一般的な概念でとらえ、実態のないものをイメージするような抽象的な思考ではなく、視覚のギャップを利用した手品に騙される可能性があるようです。

動物への手品の研究から分かること

手品に騙されるか騙されないかは、様々な動物がどのように物事を認識しているかについて多くのことを教えてくれます。

また、人間と他の種の脳機能の違いや共通点を発見したり、何が人間を特有のものにしているのかを示すことで、人間の認知機能を理解するのにも役立ちます。