手品で鳥はだませるのか?科学者が暴いた人間と鳥の意外な反応の違いとは

鳥を手品でだませるか?研究結果は動物・生き物

「手品で、鳥をだますことができる」

そう思い付き、本気で鳥のための手品を考えた科学者たちがいます。

そして、1万種もの鳥のなかから彼らが実験に選んだのは、複雑な認知能力をもつことで知られるカラス科の鳥「カケス」。

今回は、イギリスの名門ケンブリッジ大学の心理学者チームが、カケスを使って「ありふれた手品で鳥はだませる」ことを証明したとてもユニークな科学的成果を紹介します。

この研究の注目すべき点は、人間を欺く手品の技術を、人間以外の生き物がどのように認識しているかを調べた初めての研究であること。

どうやら科学者らは、ただ「やることがないから楽しい実験を思いついた」というわけではないようです。

この実験は、鳥、ひいては動物がどのように物事をとらえ、それが何なのかを判断したり、理解したりする「認知能力」が人間とどのように違うのか、または、共通点はあるのかを理解するうえで役立つかもしれないのです。

鳥のためのマジックショーにカケスが選ばれた理由

さて、まずはこのマジックショーの観客(研究の被験者)選びから。

世界には1万種もの鳥の種がありますが、研究者グループが選んだのが賢いことで知られるカラス科の鳥「ユーラシア・カケス」でした。

一般的に、自然界ではどの動物も、身のまわりのものを探したり、食べ物を見つけたり、安全を確保したりするための基本的な認知能力を持っています。

しかし、そういった動物のなかには、数を数えたり、時間の概念を持ったり、外界にある対象を知覚した上でそれが何かを解釈したりなど、ヒトに近い認知能力をもつ種があります。

カケスはその後者で、手品を成立させるうえで必要な認知能力をもつ種として選ばれました。

手品が成立するには観客の認知能力が必要

手品が通じるには、まず、マジシャンが観客の気持ちを理解する必要があります。

そして、手品に騙される観客には、実体のないものをイメージしたり、問題を予測したり、解決したりといった抽象的な思考が求められます

つまり、観客が物事をどのように認識し予測するかを理解したうえで、手品師はそれを逆に利用して彼らの注意をそらせながら、知覚の盲点をつくことで手品を機能させているのです。

そのため、手品は、相手にある程度の知能がないと、意味をなさないものになってしまいます

カケスは自然界の手品師

カケスのようなカラス科の鳥が、実際とは違う場所に食べ物を隠すフリをして、他の鳥を欺くのはまさに手品師と同じ手口といっていいでしょう。

また、カラス科の鳥は、知識や経験に基づいた推測を行うことも分かっています。

なんとオスが、気に入ったメスの食べ物の好みを正確に予測することを実際に観測した研究まであります。

カケスのために考えられた手品とは

科学者らは、手品で鳥はだませるのかを調べるために、カケスに対してマントや杖を使うのではなく、以下の手順で行う3つの簡単なトリックを選びました。

  1. まず、どちらかの手の中にエサのミミズが隠れていると思わせる。
  2. マジシャンは、カケスの前で3つのトリックを使って、エサを片方の手からもう片方の手へうつす、またはうつすフリをする。
  3. どちらの手にエサがあるかを当てると、カケスはおいしいミミズにありつける。

3つのトリック

  • 「パーム」:反対の手にうつすフリをして、手の中にエサを隠し持つ
  • 「フレンチドロップ」:えさをもう片方の手でとったフリをして、実際にはうつさない
  • 「ファストパス」:手からもう一方の手へ実際にすばやく移動させる

説明では分かりづらいという人は、実際に動画で手品の様子を確認してみてください。

Exploring jay perception using magic effects

カケスと人間の手品への反応の違い

この3つの手品のポイントは同じで、異なる手掛かりや期待感を利用して、「エサが片方の手からもう片方の手に移された」、あるいは「移されていない」とカケスに誤解させるように仕向けることです。

結果的に、カケスは、あったはずのエサが消える「パーム」や「フレンチドロップ」に関しては、人間とは異なる期待を抱くことが示されました。

私たち人間は、「パーム」や「フレンチドロップ」のような見せかけのマジシャンの動きから、無意識にエサが手の中を移動することを期待(視覚の認知から予想)しますが、カケスはその効果にはだまされず、見せかけの動きには反応しなかった(予想しない)のです。

しかし、「ファストパス」のように速い動きでだますマジックの効果には惑わされ、カケスはだまされてしまいました。

カケスは実態のないものをイメージする手品にはだまされない

どうやらカケスはエサが移動することを予想しないため、手品での移動するふりが通用しないようです。

たしかにカケスには、一般的な人間の行動にもとづいた経験や知識がありません

私たちは、赤ちゃんの頃から積み上げられた過去の経験をもとに、外から得られた情報をとらえ、判断しますが、そもそもカケスにはそれがないのですから、だますことができないのもうなずけます。

カケスは視覚をたよりにした手品にだまされやすい

カケスは、速い動きでだます「ファストパス」では、見事にだまされてしまいます。

おそらく実際にエサを移動したにもかかわらず、ただ動きが速すぎて視覚で確認できなかったために、結果的にだまされてしまったのでしょう。

つまり、カケスは、ものごとを共通点や一般的な概念でとらえ、実態のないものをイメージするような抽象的な思考ではなく、視覚のギャップを利用した手品にだまされやすい傾向があるようです。

人間以外への手品の研究から分かること

このように、手品にだまされるかだまされないかは、鳥をはじめ、それぞれの動物がどのように物事を認識しているかについて多くのことを教えてくれます。

今回の楽しい研究は、人間と他の種の脳機能の違いや共通点を発見したり、何が人間を特有のものにしているのかを示すことで、人間の認知機能への理解が深まることを示した第一歩となりました。

参照元:
Can You Bamboozle Birds With Magic?
Exploring the perceptual inabilities of Eurasian jays Garrulus glandarius using magic effects.
Exploring jay perception using magic effects