地球上の大型動物が絶滅の危機に瀕するなか、なぜか「アメリカグマ」と「ザトウクジラ」だけは例外的に個体数を増やしています。
不思議ですよね?
実は、彼らは、2つの強力な戦略によって、絶滅の危機から見事に回復しているのです。
かつて、動物界では、体が「大きくなる」ことが素晴らしい生存戦略でした。
そして、それを手に入れた巨大な動物たちは、捕食されることがなくなり、食物連鎖の頂点に。
しかし、後から現れた人間によって、生きていくために必要な資源(食料や環境)が少しずつ奪われていき、それらの大きな動物は生きにくくなっています。
実際にグリプトドンをはじめ、地上性ナマケモノ、ジャイアントビーバー、ダエオドンなど、地球上の大型動物のほとんどが絶滅し、サイやゴリラ、パンダなど生き残っている大型動物も絶滅への大きな問題を抱えています。
以下に、アメリカグマとザトウクジラが個体数を回復させている理由「2つの強力な生存戦略」を紹介します。
絶滅危機を逃れた理由1「繁殖の効率化」
1つ目は、繁殖の効率化です。
ザトウクジラは、他のほとんどの哺乳類ができない特徴として、授乳中に妊娠することができます。
その結果、ザトウクジラは一生の間に他のクジラよりもはるかに多くの子供を産むことができるのです。
また、アメリカグマは、他のクマよりも若くして子供を産め、子供の数も多いのです。
その結果、森を支配することができました。
2.食生活の多様性で個体数を増やしている
もちろん、子作りには犠牲を伴います。
例えば、ザトウクジラの赤ちゃんは、1日に何十万キロカロリーものカロリーを必要とします。
しかし、ザトウクジラやアメリカグマは、人間が変えてしまった生きにくい生息地で莫大なエネルギーを満たすために、その食生活に(エネルギー源)に多様性を持たせていきました。
何年もかけて人間は、クジラの多くが食べているオキアミの個体数を減少させています。
そのため、人間の活動によって減少していない別の獲物を狩るために、ザトウクジラはグループで協力して食べ物を獲るようになりました。
これが有名なバブルネットフィーディングと呼ばれるもので、仲間同士で円を描くように泳ぎながら泡を吐き、獲物を取り囲む狩りの様式です。
また、アメリカグマは、過去100年の間に食べ物の種類を増やしていきました。
現在のアメリカグマは、果実、草や種子、昆虫、魚、動物(死骸も含む)などなんでも食べ、動物の中でも特に好き嫌いが少ないことで知られています。
実はすごい小型動物の繁殖と摂食戦略
このような急速な繁殖と柔軟な摂食の組み合わせは、大型哺乳類の中でもかなり珍しいものです。
なぜ、このクマとクジラだけがこのような戦略をとることができたのかはまだよく分かってはいません。
ザトウクジラやアメリカグマは、笹を食べるパンダやゾウ、シャチ、トラなどの他の大型動物よりも、もともと柔軟性が高いのかもしれませんし、進化のペースが早いのかもしれません。
実のところ、小動物においては、この「繁殖」と「摂食」の2つの戦略を取る種が多くみられ、それはうまく機能しています。
特に人間が登場してからの過去52000年の間には、大型哺乳類の半数以上が絶滅したのに対し、小型哺乳類はわずか5%しか絶滅した種はいません。
現在、生き残った大型動物の3分の2以上が脅威にさらされているのに対し、小動物においては5分の1にすぎません。
ザトウクジラとアメリカグマの個体数は衰える気配がない
小動物の戦略を採用したことが功を奏したせいか、他の大型鯨類は捕鯨時代からの回復が遅れていますが、ザトウクジラは過去50年間で4倍に増え、科学者は数十年後には捕鯨以前の数を超えると予測しています。
また、ほとんどのクマの種がいまだに絶滅の危機に瀕していますが、アメリカグマは現在、かつてないほど増えています。
そして、その個体数の増加は、すぐには衰える気配がありません。
考えてみれば、どちらの種も小さな行動で大きな成果を上げているのです。