フェレットは、細長い体をまるで液体化したように柔軟に動かして、地下のトンネル内を縦横無尽に方向転換しながら、スピーディーに移動できます。
まさに、彼らは、住む環境(土の中)に適応した体を持っているのです。
体の幅は、狭いスペースでも入れるほど小さく、同時に、トンネル内で敵に遭遇したときに圧倒できるほど大きく、強力でなければなりません。
そこで、フェレットは、90%を地下で過ごす動物に非常に有利に働くようにユニークな体形に進化したのです。
今回は、そんな彼らの知られざる地下での生活について、フェレットの運動能力に関する世界有数の専門家アンジェラ・ホーナー博士の話をもとに紹介します。
フェレットのスピードの秘密に迫る
フェレットは、なぜ細い地下トンネルをスピーディに移動できるのでしょうか?
アンジェラ博士は、フェレットが地下の巣穴に入って、どのように体を変化させているのかを調べるために、特別に設計されたガラス製のトンネルを用意しました。
さっそく、地上から地下に移動するときに、何が起きているのかを見てみましょう。
フェレットの視点から見た地下の状態なんて、アンジェラ博士でさえ、未だに見たことの無いものです。
期待に胸を膨らませた博士は、スローモーションで撮影して、フェレットが何をしているのかを正確に見てみることにしました。
柔軟性と機動性に優れた背骨の仕組み
基本的に、フェレットは、地上を移動するときには、背中を丸めたような姿勢をしていますが、地下のトンネルに入ると、すっと背骨を伸ばして体勢を低くしています。
この背骨の柔軟性は、脊椎のユニークな仕組みによるものです。
脊椎は、椎骨(ついこつ)と呼ばれる小さな骨が連なって成り立っています。
他の動物では、それぞれの椎骨にある突起物(写真の水色の部分)が太くなっており、骨同士がずれたり、過剰に離れすぎたりしないようにある程度動きが制約されています。
しかし、フェレットの骨の突起物は薄く、それが背骨に柔軟性と動きを与えることで、脊椎が伸びやすくなっているのです。
結果的に、地下に潜ったときに、フェレットは、背骨を30%近くまで長く伸ばすことができ、それが地上から地下への素早い移動に役立っているのです。
スピードは、地中での獲物の捕獲に役立つ
フェレットは肉食動物です。
彼らの移動スピードは、獲物の捕獲にも影響を与えています。
トンネル内に、白と黒の縦じま模様を作ることで、フェレットが一定の距離を移動するときの速度を調べてみることにしました。
地上と地下での映像を並べてみると、思いもよらないことが起こります。
驚いたことに、フェレットは、狭い地下トンネルに入っても、開放感ある地上とほぼ同じスピードで走ることができるのです。
そして、それは平均より短い手足のおかげでもあります。
短い手足は、移動中の手足の動きを妨げにくいのです。
短い手足
ほとんどの肉食動物は、脚と胴体がほぼ同じ長さであるのに対して、フェレットのような穴を掘るタイプのイタチ科の脚は、胴体の半分の長さしかありません。
他の動物が、狭いトンネルを通るには、手足をかがめて低い姿勢になるので、手足の長さが邪魔をして、移動スピードが落ちてしまうでしょう。
つまり、手足の短いフェレットは、四方を囲まれた狭い場所でも、手脚がからまったり、つまずいたりすることなくスムーズ、かつ、スピーディーに走れるです。
このようにして、フェレットは、地下環境でも獲物を捕らえるために、驚くほどの敏捷性を磨いてきたのです。