ミツバチは、草木から樹脂を集めて、巣に持ち帰り、ミツロウと混ぜ合わせてプロポリスと呼ばれる天然の抗菌物質をつくって、巣の内部に敷き詰めます。
実は、プロポリスは長い間、その粘着性から、養蜂家の道具を汚すやっかいものだと考えられてきました。
しかし、養蜂家や研究者らは、ミツバチの健康にとってプロポリスが重要な役割を果たすことを学び、彼らの巣の環境にプロポリスを呼び戻す新たな戦略に取り組み始めました。
以下に、プロポリスがミツバチや農作物をどのように救っているのかについて紹介します。
養蜂家の悩みと食料供給への不安
カリフォルニアでは毎年春になると、たくさんのアーモンドの木が一斉に花を咲かせるため、地元のミツバチではこれらすべての花を受粉させることができません。
そこで、アーモンド農家は養蜂家にお金を払い、木が花を咲かせるまさにその瞬間に、全国からミツバチを集めます。
アーモンドをはじめ、ミツバチの受粉を必要とする作物は、年間170億ドル(約2兆6千億円以上)の価値があるといわれています。
そのため、この時期は、農家だけでなく、養蜂家もハチミツを売るよりミツバチを貸し出すほうが利益を生むのです。
問題点
しかし、残念なことに、これほど多くのミツバチをに集めると、害虫がコロニーからコロニーへと簡単に広がってしまいます。
また、ミツバチの栄養源となる作物が1種類だけだと、彼らも必要なビタミンやミネラルをすべて摂取できなくなります。
さらに、ミツバチが、農作物への農薬で病気になることもあるようです。
これらの結果、1960年以来、アメリカにおける商業用ミツバチの数は半減しています。
しかし、ミツバチの数が減る一方で、受粉にミツバチを必要とする作物の需要は増え続けています。
もし、このままミツバチの数が減り続ければ、将来の食糧供給が危ぶまれることになりかねません。
しかし、私たちはミツバチを助ける方法を学んでいます。
解決策
養蜂家と農家は協力して、ミツバチが農薬にさらされる機会を減らす努力をしています。
非営利団体とミツバチ愛好家たちも、商業用ミツバチと野生のミツバチがより多様な餌を摂取できるように、全体的に多くの野草を植える取り組みを始めました。
また、大学では、寄生虫や病気に強いミツバチの育種も進められています。
そして私たちは、ミツバチがすでに持っている秘密兵器、プロポリスを使って彼らが寄生虫と戦うのを助けることができます。
プロポリスには抗菌作用がある
ミツバチは、コロニーが感染すると、感染拡大を防ぐために余分なプロポリスを集めてコロニー全体を健康に保とうとする集団行動が確認されています。
野生のミツバチはこのプロポリスと呼ばれる物質を巣の中に塗って巣を消毒し、侵入者を防ぐのに役立てているのです。
まず、ミツバチは、プロポリスを作るために樹木を訪れ、多くの生物に有毒なフラボノイドや芳香族酸を豊富に含む樹脂を集めます。
そして、集めた樹脂をミツロウ(ハチの腹部から分泌されるロウ)と混ぜ合わせ、粘着性のある抗菌性の接着剤「プロポリス」を作るのです。
市販の巣箱のミツバチもプロポリスを作りますが、おそらく巣箱の壁が自然木の内部より滑らかだからか、彼らはプロポリスを木の隙間を塞ぐのに部分的に使うだけで、内壁に塗ったりはしません。
こうした巣では、ハチの幼虫が病気になることがよくあるようです。
このように、ミツバチのプロポリスの使用は、社会的免疫の一例として考えられています。
プロポリスで巣の中の恒常性を保つ
プロポリスは、巣の内部の表面を滑らかにしたり、隙間を塞いだりするのに使われ、ミツバチは、これによって空気の流れをコントロールして内部環境を一定の状態に保とう(恒常性)とします。
そのため、粗く未完成の材木で巣箱を作ったり、穴のあいたプラスチック片を壁に取り付けたりした方が、ミツバチはより多くのプロポリスを撒き散らすため、幼虫が感染症にかかる機会がずっと少なくなります。
そこで養蜂家たちは、ミツバチがプロポリスを撒くのを促すために、自分たちの蜂の巣を荒らすことにしました。
これによってミツバチは自らの健康を維持し、農作物の受粉やハチミツの生産を続けることができるようになったのです。
巣の環境にプロポリスを取り込むのはミツバチだけではなく、他にも多くの種のハチで見られています。
プロポリスがそのようにミツバチに役立っているのかについては、以下の動画で見ることができます。