魚はなぜ腐るのが早いのか?

魚が肉よりも腐敗が早い理由動物・植物・生き物

魚は氷で低温保存した方がいいといわれるのには理由があります。

魚の不飽和脂肪酸は酸素と反応しやすい性質があるうえ、もともと低い水温で生育していた魚介類は冷蔵庫の温度でも腐敗がすすみやすいからです。

以下に、魚が不飽和脂肪酸からなる理由や臭みや腐敗の原因などをもとに魚の保存方法やコツまで科学的に分かりやすく紹介します。

魚が臭い?その理由とは

魚介類は他の食材よりも腐るのが早く、それは冷蔵庫の中に時限爆弾を抱えているようなものです。

魚を買って冷蔵庫に入れた後、忙しくて1、2日そのまま忘れていたら、変な臭いがしだすこともよくあります。

海に棲む生き物は、生きている間に水の重さから身を守るための化合物を蓄積し、死後、その化合物は別の、より臭い分子に分解され始めるからです。

魚が水の重さから身を守る化合物

魚の死後臭い分子に分解

実のところ、その臭い分子自体は無害なので、生臭いからといって必ずしもその時点で魚介類を捨てる必要はありません。

しかし、魚が水から出てから時間が経つと、他の不愉快なことが起こりはじめます。

腐敗」です。

魚の腐敗はなぜどうやって起こるのか?

魚の脂肪は時間が経つと酸素と反応して腐敗します。

また、魚が体内にもつ酵素によって新鮮な身は分解され、味が苦くなったり、酸っぱくなったり、食感がヌルヌルになったりします。

さらに、微生物が魚の体内で繁殖しはじめると、もはや食べるのには危険を伴います。

これらのプロセスは、肉類など他のすべてのタンパク質が腐敗するのとまったく同じものですが、魚介類では腐敗プロセスがより速く起こる傾向があります。

魚介類は豚肉や牛肉などの肉類に比べ、水分が多く、pHが中性であるため、厄介なバクテリアが繁殖しやすい環境なのです。

しかし、魚介類が陸上の食品よりも早く腐敗する最大の理由は、魚介類の生息温度と関係があります。

魚介類の体温と腐敗の関係

魚介類の体温と腐敗の関係

陸上で生活する生物のほとんどは温血動物で、38度前後の体温を保ちながら活動しています。

一方、水棲生物は冷血動物(変温動物)であり、体温は水中の温度とほぼ同じです。

中には25度以上の水中で生活する魚介類もいますが、多くはもっと低い温度で生活しているのです。

この低い温度が、ズバリ魚が不飽和脂肪酸に頼っている理由。

魚の不飽和脂肪酸と肉の飽和脂肪酸の違い

不飽和脂肪酸は、その構造上、飽和脂肪酸よりも低温で液状を保つことができます。

たとえば、バターのような飽和脂肪酸は、冷蔵庫で冷やすと固まりますが、不飽和脂肪酸は低温化でも固まりにくい性質があります。そのため、低温下でも細胞膜に脂肪分子が固まるのを防ぎ、膜の内外での流動性を保つことができるのです。

しかし、不飽和脂肪酸は酸素と反応しやすい性質を持っているため、魚の脂肪は肉の脂肪よりも早く腐敗してしまうのです。

身近なところでは、飽和脂肪酸からなる固体のバターや牛脂と、不飽和脂肪酸からなる液体の植物油を冷蔵庫に入れた状態をイメージすると分かりやすいと思います。

また、腐敗プロセスには、生き物の生息している環境の温度も重要なカギとなります。

魚の生育環境の温度と腐敗の関係

陸上生物は、自分で熱を生みだすことができ、高い体温で活動するため、食品に含まれる酵素や微生物などの生物も比較的高い体温の温度に適応しています。

そのため、冷蔵庫に入れて冷やすと、肉の温度は下がり、体内の微生物や酵素の活動がスローダウンするため、腐敗の進行が遅くなるのです。

しかし、魚は冷たい水の中で生息していますね。

魚の体内酵素や魚に付着している微生物は、冷蔵庫の温度でも元気いっぱい。正常に活動することが多いのです。

そのため、ほとんどの魚は冷蔵庫に入れるだけでは、腐敗の原因となる微生物や酵素の生物活動を抑制することはできません

魚は冷温で保存しなければならない理由

魚介類の腐敗を遅らせるには、さらに温度を下げる必要があります。

そこで、お店の魚売り場をのぞいてみてください。

氷の上に置かれた魚は、単にきれいなディスプレイというだけでなく、腐敗を遅らせるのに十分な温度まで冷やしてくれるのです。

魚を買ったときに、少しでも腐敗を防ぐための時間稼ぎがしたいのであれば、調理するまでの間、冷蔵庫でもいいので氷の下に置いておきましょう。角氷よりも、細かく砕かれた氷やフレーク状の氷の方が、魚の表面と接触する面積が増えるのでよく冷えて最適です。

でも、熱帯地方の魚は温血動物に近い温度で動いているのだから、冷蔵庫で冷やせば腐るのも遅くなるのでは?

答えはイエスです。

通常の冷蔵庫では、メカジキやティラピアのような暖流魚は1週間ほど保存できますが、寒流魚のスケトウダラやサバは数日で腐敗してしまいます。

しかし、氷の下なら、寒さに弱い魚は1週間近く、暖流に強い魚はその2倍以上も日持ちがするのです。

ただし、これは冷蔵庫の中の時間の話ではなく、魚が海から上がった瞬間からの時間経過で考えなければなりません。

魚の腐敗速度

陸に上がってから店に行き、冷蔵庫に入れるまで、魚は最低でも数日間、水から上がっていることになるのです。

魚の安全な保存方法と秘訣

そうはいっても、魚が水から上がってからどのくらい経ったのか、またその魚がどのくらいの温度で生育していたのかなど、私たち消費者には正確には分かりません。

そのため、魚を買うときは、エラ(鮮やかな赤色をしているか)や目の色(赤くなっていたり白くにごったりしてないか、)や身(弾力やツヤがある)を確認して慎重に選び、買ったらすぐに食べるのが一番です。

しかし、魚の上下に氷を置いてしっかりと冷やせば、賞味期限を数日延ばすことができるというわけです。

魚の保存について、詳しくはこちらを参照ください。

参照元:Why fish spoils so fast

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