なぜ電線にとまっている鳥は感電しないのか?

2018年11月27日

蛍光灯(光)、ステレオ(音)、ドライヤー(熱)、私たちの周りには、電気をエネルギーとして活用しているものがたくさんあります。

電気は非常に便利ですが、使い方を誤ると、この見えない電気が体内を流れてしまい、強い衝撃を受けることがあります。

誰もが恐れる「感電」です。

基本的に、私たちの体の表面を覆う皮膚は電気が流れにくい性質をもちますが、体内の血液や筋肉、内臓組織などは(電気抵抗が低く)電流が流れやすいといわれています。

電気の強さや電流が流れる時間によっては、また、電気が心臓を通るなどの理由で、死に至るケースもあるほどです。おそらく赤ちゃんが、コンセントにフォークをさそうとする姿をみると、誰もが慌てふためくでしょう。

しかし、コンセントよりも強力な電流が流れているはずの電線にとまっている鳥が感電しないのはなぜでしょうか?

さらに危険なことに、鳥は、電化製品のコードのように(電気を通さない)絶縁体で保護されずにむきだしになった高圧線でさえ、お構いなしにとまることもあります。

ここでは、鳥が電線にとまっても感電しない理由について、電流と回路の仕組みにもとづいて科学的にできる限り分かりやすく紹介します。

どうやらカギとなるのは「電位差」と「抵抗」だったようです。

電気はどうやって流れるのか

電流とは、電子の動き(流れ)に過ぎません。

そして、この電子を動かすためには、電圧が必要となります。私たちが使う電池は、この電圧と呼ばれる電位差を作り出すものです。

それでは「電流」について、豆電球が、電池と導線でつながれると光る実験を例に考えてみましょう。

これは、回路が電池でつながれたことで、電位差(電圧)が生まれて、もともと導線内にあった(自由)電子が動き出しただけだったのです。

分かりやすくいうと、電圧は「高さ」、電流は「水」だと考えてみてください。

豆電球の回路を川に例えた場合、電池によって平面に+と-という高さの変化が与えられます。この高さの変化(電位差)を電圧といい、電流(水)は+(電位の高い方)から出て、-(電位の低い方)に向かって流れ始めます。

このとき、電位差(高さの違い)が大きいほど電流(電気の流れ)には勢いがあり、電線やコードなどの電流を通すための線(電熱線)が細くなるとそれ(抵抗)が勢いを妨げて電流は弱くなります。

これを赤ちゃんがコンセントに指をさした場合に当てはめて考えてみましょう。

コンセントに指が触れた部分(電位が高い)と地面(電位が低い)が、赤ちゃんを介してつながってしまい(回路が形成)、そこに電位差が生まれます。すると、豆電球が光るのと同じ原理で、電流は赤ちゃんの体内を通って、地面へ(電位の低い方)と流れ始めるのです。

よだれや汗で指が濡れているなら、さらに電流が通りやすくなって命を落とすリスクは高まるでしょう。

鳥が電線で感電しない理由

両足で、同じ一本の電線をつかんでいる場合、鳥には電流は流れません。

これは、電線が(電気を通さない)絶縁体で覆われていてもむきだし状態であったとしても、感電しないことに変わりはありません。

つまり、両方の足がどちらもと同じ6000ボルトの電線上にあった場合、地面(電位が0)のような電位差の大きい領域と接触していないため、2本の足のわずかなすき間の電位差は限りなくゼロに近く(電圧が生じていない)、電流が流れないのです。

また、電流は抵抗がなく流れやすいところを好むのもポイントとなります。

電流にとっては、鳥の体内を通るよりも、電気抵抗が低くなるように作られている電線の中の方がはるかに通りやすいため、そのまま通過していくのです。

しかし、もし2本の足の片方が、電位が異なる可能性をもつ他の電線にのっていたり、地面につながったモノに触れたりすることがあれば感電します。

鳥の体が、電位差の異なる2地点を結ぶ回路(電気の通り道)を形成したことで、鳥に高い電圧がかかり、電流が体を通って、より電位の低い方に向けて流れるためです。

人間が電線で感電する理由

電線にかかったタコや風船を取ろうとして、棒でつついた子供が感電するのも同じ原理です。

これは、電線に触れた部分(電位が強い)と足が触れている地面(電位が弱い)の電位差(電圧)が生まれたことで、子供に大きな電圧がかかり、強い電流が体を通って地面に向けて流れたためです。

ただ電線にぶら下がったり(地面に足が触れていない)、綱渡りのように乗っているだけでは感電しません。

他の電線を掴んだり、電信柱や地面に触れたりして片方が違う場所と接触した場合に感電するのです。

電線で感電する鳥もいる

そうはいっても、なかには電線で感電死してしまう鳥もいます。ワシやタカ、フクロウのような体の大きな猛禽類(もうきんるい)です。

これらの鳥は、しばしば大きな翼を広げて電柱(電力柱)の上にとまります。

このとき、広げた翼が触れた「電線(6000V)」と「地面(0V)に立つ電柱」が鳥によってつながれてしまうと、そこに電位差が生じるため、鳥が、電線から電柱、地面にむけて流れる電気の通り道(回路の形成)となって感電します。

電柱にかけられた鳥の巣が、電線に触れてショートすることもあります。

感電は鳥にとって致命的であり、アメリカでは、毎年何百万もの鳥が感電の被害を受けています。

そのため、多くの電力会社が鳥を保護するために、新しい電柱の構造を採用し、電柱に鳥がとまりにくくしたり、電柱と電線の間の空間を広げたりして、感電を防ごうと取り組み始めています。

大地と電気的につながる「アース」

電線のタコをとろうとした子供の感電にしても、電柱にとまったタカの感電にしても、電線が体を介して地面とつながったことで電位差が生じ、地面への電気の通り道ができたことが感電の原因でした。

実は、私たちの周りには、感電を防ぐために、この仕組みを利用しているものがあります。

エアコンや洗濯機などの家電製品にある「アース線」です。

家電製品から伸びたアース線を、コンセントのアース端子につなぐことで、電気を(地面に打ち込まれた電気伝導率が高い棒を通じて)地面に逃がして電位を等しくし、感電や落雷、電磁波による被害から守っているのです。

最後に

電気は、昨日のピザを数分で再加熱したり、インターネットで知力空間を見たりと、私たちの生活を快適にしてくれます。

しかし、それはまた、一歩間違うと生き物の命を奪う凶器にもなってしまうので、正しい知識で扱うことが大切なのですね。