犬は人間とは違った見え方をしています。
たしかに、犬は虹のすべての色を見ることはできません。しかし、全く色を区別できないわけではなく、青色と黄色の2色は認識していることが分かってきました。
さらに、私たちよりもはるかに夜間視力がよいのです。
そして、その理由は、目の中にあります。
目の中には、錐体(すいたい)細胞と杆体(かんたい)細胞という光の受容体(視細胞)があります。
錐体(すいたい)は色の違いを識別するのに役立ち、杆体(かんたい)は薄暗いところを見る働きがあります。
そして、犬と人間では、この錐体と杆体の数が違うのです。
以下に、犬は世界をどのように見ているのかについて、犬と人間の目の仕組みの違いをもとに紹介します。
犬は色を識別する細胞が少ない
犬は、人間よりも錐体の数が少なく、多くの色を見ることができないことがわかりました。
人間の錐体は、赤、緑、青に反応する3種類があり(3種の光の波長域を感じ取る)、それぞれの刺激を電気信号にして脳に伝えることができます。
一方で、犬の錐体は2色しか感知できないと考えられています。その2色が何であるかは、まだはっきりとは理解されていません。
専門家の中には、(赤と緑を見るための光の受容体はなく)青と黄色ではないかと考えている人もいます。
アレクサンドラ・ホロウィッツ(『Being a Dog』の著者)は、犬が見ている色を正確に知ることは難しいが、おそらく私たちが夕暮れ時に見ている灰色がかった色と同じようなものだろうといいます。
つまり、赤色や緑色のボールは灰色っぽい黄色にみえているかもしれませんが、鮮やかな青色はあなたと同じように見ることができるのです。
犬は光の量を感じる細胞が多い
そして、犬の目は人間よりも杆体が多いので、夜でも(光への感度が高く)よく見えるのです。
私たちには見えにくくなる時間帯、夕方や明け方でも、昼のような明るさで見えていると考えられています。
犬には人間の目にはない反射板がある
また、犬の目には、人間にはないタペタム(輝板)という薄い膜組織が網膜の後ろにあり、これが鏡のように反射板の役割をして犬の夜間視力をさらに高めています。
これが、暗闇で犬の目が輝く理由です。
目に入った光が網膜を通ってこのタペタムという反射板にあたると、光を反射して網膜に集めるので、網膜は2倍の光の量を取り入れることができるのです。
ネコやキツネなど、他の多くの動物がこのタイプの視覚機能をもっています。
犬は白黒の世界ではない
先ほど、犬の目が見ている世界は、白と黒だけだと勘違されやすいようですが、実際には、青と黄色も見えていることに触れました。
また、犬は、種類によって個体差はありますが、私たちほど視力はよくなく、遠くのものはよりぼやけて見ていることも分かっています。
犬は、私たちよりも見える色が少なく、景色も鮮明に見えていないかもしれませんが、光を集める感覚など私たちよりもはるかに発達している機能もあるのです。