ハリケーンのなか、魚たちはどうなっているのか?

2018年10月30日

台風や嵐がやってくると、おそらくほとんどの人が危険な屋外を避けて、安全な屋内に避難しようとするでしょう。

それでは、海の生き物たちは、嵐のなかどうしているのでしょうか?

それについては興味深い話があります。2018年9月に、大型ハリケーン「フローレンス」が各地に記録的被害をもたらしたときの話です。

ある科学者が、バージニア州(アメリカ)で、一匹のオサガメが誤って海岸線をハリケーンに向かって泳いでいる姿を見つけました。

このままでは嵐にカメが巻き込まれてしまうと心配していたところ、このオサガメは、海の水面から離れて、より深いところに向かって泳ぐことで無事生き残ることができたといいます。

このような嵐に遭遇したオサガメの行動は、ほんの一例にすぎません。

実のところ、ハリケーンは、陸地だけでなく、私たちの知らない海面下にまでさまざまな影響を及ぼすといわれています。

ここでは、ハリケーンが海をどのように変え、魚やイルカなどの海洋生物にどういった影響をもたらすのかについて、過去に起こった興味深いできごととともに紹介します。

ハリケーンがくると魚はどうするのか?

嵐がくると、海面近くにすむ海の生き物は、おそらく乱流の影響は避けられないでしょう。

しかし、イルカやクジラ、サメを含むほとんどの生き物は、水の動きが激しい水面を避けて、穏やかなところに向けて深く泳いでいくことができます。

ただし、陸に近い沿岸部ではそうはいかないようです。

ハリケーンが海にたらす水温と塩分濃度の変化は、海洋生物にとって、致命的な打撃となる可能性があります。

沿岸部の海の変化と魚への影響

基本的に、海水の温度や塩分濃度は一様ではなく、深さや海域によって異なります。なかでも沿岸部の海域は、特に外界の影響を受けやすいといわれています。

ハリケーンは、沿岸部の海域に乱流や渦を引き起こして、比較的温かい海面付近の水を、深層の冷たくて塩分濃度の高い海水とかき混ぜるだけでなく、水面から91メートルにも達する激しい水の流れを生成することができます。

この流れは非常に強く、ハリケーン「フローレンス」で実際に座礁したマナティが内陸水路やため池で発見されたように、魚が陸地に打ち上げられたり、沿岸からはるか遠くの海洋へ流されてしまったりするほどの威力があります。

そうなると、魚は方向感覚を失い、死につながることもあります。

大雨による影響

ハリケーンはまた、大雨をもたらして、沿岸地帯に頻繁に洪水を引き起こします。すると、塩分濃度の低い淡水が大量に海に流れ出てしまう恐れがあります。

淡水が海に流れ出ると、塩分の濃度差によって、まるで油が流出したときのように海水の上に淡水層がとどまるため、それがフタとなって塩分濃度が高い海水層にまで酸素が届きにくくなってしまいます。

さらに、この塩分濃度の乱れは、クジラやイルカなどの海洋生物に炎症や病気をもたらし、最終的に死につながる可能性もあります。

海では汚れや砂が舞う

また、ハリケーンによって浅瀬に舞った大量の泥や砂が、魚のえらを詰まらせて殺してしまうこともあります。

実はこれが、1992年にハリケーン「アンドリュー」が通過した際に、推定940万匹ともいわれる海水魚が死んだ要因のひとつだと考えられています。

海中への光を遮る

暗く濁った汚い水はまた、サンゴや海藻への光を遮ります。

事実、科学者たちは、カリブ海のサンゴ礁被害は、ハリケーンが襲った後、平均して年間17%減少することを発見しました。

ハリケーンの影響は、地球温暖化や公害、観光客による干渉などから既にストレスを受けているサンゴにとって、さらに追い打ちをかける事態となります。

とはいえ 、ハリケーンは必ずしも海洋生物にとって悪いことばかりでもないようです。

海の環境が変わると海洋生物にとってメリットもある

事実、ハリケーン・カトリーナによって、ミシシッピ川の漁船の90%が損傷した後、イルカの出生率が大幅に増加したことが科学者によって示されています。

漁船がなくなったことで、イルカたちが数え切れないほどたくさんの魚を食べられるようになり、個体群が繁栄したのです。

陸での環境や生態系の変化

もちろん海だけでなく、ハリケーンは陸上の動物にも影響を与え、ときには、生態系を完全に変えてしまうことすらあります。

たとえば、ハワイのカウアイ島に、野生のニワトリが氾濫している理由として、地元の人は、「ハリケーンによって壊された鳥小屋からに逃げ出した鶏の子孫だ」と言います。

そして、ハリケーンはときに、私たちの環境をも大きく変える要因となります。ノースカロライナ州では、ハリケーン・フィレンツェによる集中豪雨により、100棟以上の豚の肥溜め(豚の排泄物の保管を行うところ)が崩壊し、豚の排泄物が地域の水質を汚染した可能性があるといわれています。

最後に

研究によると、残念ながらハリケーンの強度は、気候変動に伴ってこれから増加する一方だといわれています。

そのため、今なんらかの行動をとらなければ、地球規模で被害が拡大することは避けられないようです。