1、2週間、水やりを忘れても枯れない植物があります。一体どんな仕組みをしているのでしょうか?
実はこの植物、水を全く必要としないのではなく、十分な湿度さえあれば、空気中から水分を吸収することができるのです。
この能力の秘密は、植物が本来生育する場所にあります。
以下に、水やりをしなくても育つといわれる植物のユニークな生態について紹介します。
これらの植物の水分吸収・貯蓄能力の高さは森林全体を豊かにし、ときには雨を降らせるのにも役立っていると考えられています。
土に根を張らない「着生直物」
森林の土壌では、時に植物が密集してしまい、背の高い植物によって日光が遮られてしまうことがよくあります。
そのため、一部の植物は土に根をはらず、岩や他の植物の上に根を張って成長するように進化しました。科学者が「着生植物(ちゃくせいしょくぶつ)」と呼ぶ植物たちです。
しかし、土壌から遠く離れた岩や樹皮の上での生活には、水をどうやって確保するかという問題が生じてしまいます。
そこで、着生植物は、降ってくる雨や木の皮を滴り落ちる水、さらには霧からなど、アクセスできるさまざまな種類の水分を得て、それを蓄える多くの方法を進化させてきました。
着生直物の水分補給方法
ティランジアのように、空気中の水蒸気を閉じ込めるための微細な毛で体を覆い、霧から水分を確保する植物もいます。
ブロメリアという植物は、株元が貯蔵タンクのように筒状になっており、そこに水を貯めることができます。
また、コケにはとても柔らかい細胞壁があり、周囲の水分を吸い上げるのに役立ちます。
着生植物の中には、(乾燥時の)重量の7000%もの水分を吸収できる種もあります。それは、台所にあるスポンジとは比較にもならない水量です。
森林全体の水分の損失を抑える着生植物の役割
着生植物は、驚異的な水分吸収能力と貯水能力を進化させたことで、地球上のあらゆる種の森林に存在することができます。
そして、この着生植物による保水プロセスは、森林全体が利用できる水量をも増やしています。
水分が森林から流出する経路は2つあり、1つは土壌に降った雨水が川や地下水路に流れ込み、最終的には海へ流出するもの、もう1つは森林の表面から蒸発したり、植物の光合成によって空気中に放出されたりして流出する経路です。
着生植物は、この2つの経路による水分の損失を抑えることができます。
第一に、着生植物は森林の植生のわずか2%しか占めていませんが、その水分吸収能力により、降った雨の15%を利用することができます。
そのため、雨水は地面から流れ出ることなくそこにとどまり、さまざまな生物の生息地や水分の補給源となるのです。
第二に、露出した幹や枝にぶら下がったり、覆いかぶさったりすることで、森林に日陰を作り、吹き付ける風を遮るため、森林の表面からの蒸発を20%、葉からの水分の損失を半分まで減らすことができます。
さらに、空中に放出された水の一部を吸収し、自ら吸い上げることもできます。
着生植物は森を豊かにしている
植物の上に植物があることで、水分の循環が森の中で保たれ、乾燥に強い植物が育ち、乾燥した時期にも森を豊かにすることができるのです。
さらに、森林の上空にある濃縮された水分は、雲を作る可能性があります。言い換えれば、着生植物が雨を降らせるのに役立っているのです。