透明な血液?最大級生物?南極に奇妙な生物が多い理由とは

南極の奇妙な生物の秘密キッズサイエンス

地球の海には、私たち陸上生活者にはかなり奇妙に見える動物がたくさんいます。

なかでも、最も異質な生物は、南極海に生息しています。

透明な血液をもつ魚、推定1万5千歳という世界一長寿な生き物、地球最大級の動物や無脊椎動物など、南極海は不思議な動物の宝庫です。

そして、その秘密は、海流によって他から孤立した南極海自体にあるようです。

以下に、まるで別世界のような南極海とそこに生育する不思議な生き物の秘密について紹介します。

南極海の奇妙な生き物

南極海の奇妙な生態系

氷点下にもなる南極海では、コオリウオ(スイショウウオ、または、アイスフィッシュ)のようにごく普通に見える生き物でさえ、密かに奇妙な存在なのです。

血液が透明な生き物

透明な血液のスイショウウオ(コオリウオ)

一般的な魚は、体中に酸素を運ぶ赤血球のために赤い血液をしていますが、南極のコオリウオはその赤血球がない透明な血液をしています。

コオリウオはまた、赤血球を持つ魚に比べて巨大な心臓を持ち、エラからだけでなく滑らかな皮膚からも直接酸素を吸収する能力があるうえ、体液中に天然の不凍剤(0℃以下でも凍結しないための物質)を持っています。

地球上で最も長生きな生き物

厳しい気温にもかかわらず、南極海には地球で最も長生きだといわれる動物が生息しています。

海底に生育する海綿動物「Anoxycalyx joubini」です。その大きさと成長の遅さからおよそ1万5千年は生きていると考えられているのです。

また、南極海には、100年ほど生きるヒトデがいることも分かっています。熱帯のヒトデが運がよければ3~5年生きるのと比べれば、どれだけ長生きかわかるでしょう。

世界最大級の生き物

南極の世界最大級の生物

また、一般的に深海の動物は巨大化しますが、南極海の深海の動物はさらに巨大化する傾向があるようです。

地球最大の動物であるシロナガスクジラ(antarctic blue whale)や、地球最大の無脊椎動物である巨大イカ、コロッサル・スクイッドなどがその例です。

ちなみに、先述した南極海に生育するAnoxycalyx joubiniは、世界最大級の海綿動物でもあり、高さが2メートル近くまで成長することが確認されています。

奇妙な南極生物

南極のウミグモはディナープレートほどの大きさで、ウロコムシは海洋生物学の教科書の大きさ、そして20本の腕を持つ奇妙なヒトデはマンホールの蓋の大きさに相当します。

孤立した南極海の特徴

海流によって生物が孤立した南極海

南極海に生息するこれらの動物が奇妙なのは、南極海自体が奇妙だからです。

南極海は地球の他の海洋とつながっているように見えますが、その生命は南極周極流と呼ばれる巨大な円形の海流によって、世界の他の海洋から完全に遮断されています。

さらに、この海流は地球上で最大かつ最速の海流であり、最も深い海流でもあります。

南極海流は、海面から海底まで延びる巨大な渦巻き状の海流として存在し、過去3000万年の間、ほとんどの南極海の生物が他の海域の生物と交雑するのを防ぐバリアとして機能してきたのです。

そして、周囲の海域から孤立した海水には独特のメリットがあります。

南極海が生き物に与えるメリット

南極の海流による影響

海流が渦を巻く際に、深海から栄養分がかき集められ、南極海は奇妙な生物たちの餌でいっぱいになるのです。

栄養が豊富なうえ、塩分が多いため完全に凍ることなく超低温に保つことができます

そして、その冷たい水は、溶存酸素をたくさん保持することができます。それが結果的に、動物が大きくなるのを助け、他の場所よりもゆっくりと年をとるのを助けているのかもしれません。

南極は別世界?土星のタイタン?

今、科学者たちは、南極大陸の極寒で孤立した海やそこに生息する奇妙な生物を研究し、このような極限的で異質な環境で生命がどのように繁栄しているのかを学ぼうとしています。

真面目な話、南極海の環境は、地球上の他の世界よりも、土星最大の衛星、タイタンのような他の星の環境に似ているのかもしれません。

たとえ宇宙人が存在しないとしても、南の海はまさにこの地球上にある驚異の別世界なのです。

参照元:Where The Weird Things Are