魚には間違いなく知能がある。優れた学習速度や記憶力をもち、道具を使い、数を数える魚たち

2019年6月25日

かつて「魚は3秒の記憶しかない」と信じられてきました。

一般的に、魚は、初期の陸生脊椎動物から約4億5000万年も前に分岐したため、私たちの脳とは大きく異なり、原始的で長期記憶は持たず、それほど賢くはないと考えられてきたからです。

しかし、研究がすすむにつれて、それは大きな間違いであることが分かってきました。

魚は、人間が思っている以上に高度な知能を持ち、記憶力や知覚力も備わっています。

ヒトやその他の脊椎動物が共通祖先から分岐していった後も、魚は、ただ立ち止まっていたのではなく、自然界で敵から守り、狩りをし、余計な衝突や危険を避けて生き残るために判断力や知能を進化させ続けてきたのです。

ここでは、魚の脳構造と彼らがもつ驚くべき知能について、最近の研究を中心に分かってきたことを紹介します。

魚はどれほど賢いのか

今まで、多くの科学者が、魚を哺乳類より知能が低いと考えてきた主な理由は、彼らが大脳の新皮質を持たないためでした。

新皮質とは、哺乳動物に見られる脳の層のうち、外側の表面を覆う特に大きなしわの多い部位です。

私たち人間は、この部位によって、問題解決や抽象的思考、計画性などより高い認知機能を支えられているため、魚はこれらの多くができないと長い間考えられてきたのです。

しかし、過去数十年の間に、研究者らは、魚の知性をテストするための賢い方法を思い付き、それらのテストで、魚は優秀な成績をおさめてきたため、高度な知能をもつ魚が存在するのではないかと考えられるようになりました。

「刺激(エサ)」と「手がかり(空間や時間)」を関連づけて覚える魚

コイを飼っている人の多くは、コイが「エサをくれる人」や「エサの時間と場所」を認識していることに気付いています。

そして、科学者たちも、コイが、時間や空間的位置を認識する能力をもつことを発見し、彼らが正しいことを認めました。

午前中に水槽や池の一方の端でエサを与え、夕方には反対側でエサを与える実験を行ったところ、コイは、食事時間になると、適切な場所でエサを待つように学習したのです。

さらに研究がすすむにつれて、魚も哺乳類などの高等生物と同じく、パブロフの犬のように、エサといった行動を引き起こさせる「刺激」と、ベルを鳴らす行動「手がかり」とを、トレーニングによって結びつける反射行動の学習が可能だと考えられるようになりました。

例えば、エサをやるタイミングに合わせてライトを点灯させる研究では、レインボーフィッシュは、エサと光の関連付けを約14回の繰り返し訓練の後に覚えました。

同じような関連付けに、ラットは40回におよぶ訓練を要したことを考えると、魚は約1/3の訓練時間で学習できる知的能力を備えていることが分かります。

魚の記憶力は3秒ではない。「記憶を保持する能力」について

これまで、魚は3秒から30秒間の記憶力しかないと考えられてきました。

しかし、カナダのマクユーアン大学の研究チームは、魚の記憶力が、私たちが考えるよりはるかに長く持続することを示しました。

3日間同じ場所でエサを与えられたシグリットは、他の場所に移された後、12日間経過しても元のエサの場所を覚えていたのです。

この結果について、神経科学者のトレバー・ハミルトン氏は、 「食べ物が不足している場合、長期の記憶は魚に進化的な優位性を与えるかもしれない。捕食者の脅威がなければ、魚は、特定の水域に戻ることができる」といいます。

また、別の魚の実験でも記憶力の長さを裏付ける結果が得られました。

研究室で行われた実験では、レインボーフィッシュが網に開いた穴の位置を覚えるだけでなく、1年経過してもその位置を思い出せることが示されたのです。

自然界での寿命が2年しかないレインボーフィッシュにとって、それは人生の半分に相当するかなり長い期間を占めます。

金魚においては、少なくとも3ヶ月の記憶を保持でき、集中力の持続に関しては人間の平均8秒(2016年)よりも高い9秒を示し、物体の形や色、音を識別したり、迷路の道順を学ぶことに加えて、仲間の個性や飼い主の顔を識別できるとも考えられています。

実のところ、さまざまな研究によって、魚類が、鳥類やほ乳類に劣らない優秀な記憶力をもつ可能性が示されています。これらの能力は、獲物の種類を覚え、捕食者や人間などによる危険を避けて身を守るために必要となるでしょう。

学習速度が速い魚

2012年の研究では、掃除魚(そうじうお)、オマキザル、チンパンジー、オランウータンに対して、下記の学習テストを行いました。

同量の食べ物を2枚の色の違う皿に置いて、一方の色の皿を先に食べるともう片方が片付けられることによって、どちらの色の皿を先に食べると2枚分の量が食べられるかを学ばせるための研究です。

すると、霊長類の大部分は最後までこの報酬につながる刺激の仕組みを理解できなかったにも関わらず、魚は、テストを行った生き物の中で、最も速く学習したのです。

さらに、学習後に、一度覚えたはずの皿の色を逆にして、訓練を続けたところ、それもすぐに学習しました。これは、逆転学習とよばれ、魚が状況に応じて行動を変える知能をもつことが示されました。

このようなことから、一度釣られた魚は、釣り針を脅威として認識できるようになるのもうなづけます。

これまで高い知能はたいてい脳の大きさに関連付けられてきましたが、どうやら生物学的にはあまり関係がないようです。

複雑な位置情報を把握できる魚

魚はまた、認知地図と呼ばれるものを作成して、複雑な位置情報を記憶することもできます。

たとえば、カリブ海の潮だまりに住むクモハゼは、生死問題を取り扱う心の地図を持っており、恐怖を感じるとその地図を利用して、隣の潮だまりに飛び出すと考えられています。

それらは、近隣の潮だまりの地形や場所を把握してなければできない行動で、認知地図なしでは、岩礁にぶつかって命を落とす可能性が高くなります。

1950年代の研究では、ハゼが彼らの潮だまりから連れ去られても、最大で40日間は近隣の潮だまりの地形や位置を覚えていて、身の危険を感じると逃げ出せることが分かりました。

これらはほんの一例ですが、他の種の魚でも、エサや捕食者、隠れ場所、仲間のいる位置などを記憶することが分かっています。

道具を使う能力をもつ魚

私たちが他の動物の知能に対して設定する高い基準の1つに、道具の使用があります。これは、科学者たちがおおまかに定義するところによると、身一つではできないことを、無生物を使って可能にすることです。

そして、驚いたことに、人間やチンパンジー、カレドニアガラス、ハワイガラスなどと同じく、巧みに道具を使う能力をもつ魚の存在も明らかになっています。

ベラの一種は、ウニを取り出すために、岩を使用して殻を粉砕します。

また、淡水魚のなかには、シクリッドやナマズのように、巣をつくって卵を岩や葉に産みつけて、巣に危害が加えられた場合に、それを拾って新しい場所に移動させる種もいます。

魚の数学的知能「数を数える魚」

さて、魚にも数学的なことができるという証拠もいくつか出ています。

魚が代数問題を解くわけではありませんが、数を数え、少なくとも数の大小を理解できるというのです。

科学的にこれを、数値能力と呼びます。これは、魚にとって意味があり、多く集まって群れで行動することで、捕食者から身を守るための安全性を高めることからも伺え、進化の過程で生き残るために身に付いた可能性があります。

しかし、群れをつくらない魚でさえこの技能を持っているようです。

最近の研究では、ドット(丸)が印刷されたカードを使用して、金魚に数を数えさせる訓練が行われました。

研究者たちが、金魚に、ドットが最も多いカード、または、最も少ないカードを選択させるために、1200回におよぶ訓練をしたところ、金魚は10から15のドットの数を区別することができるようになりました。

学習した金魚は、約91%の正確さで、最も多い、または、最も少ない数のドットを選ぶことができたのです。それは、量的に同じ訓練を受けた人間以外の霊長類のパフォーマンスに匹敵します。

これによって、これまで分かっていた丸の大きさの認識力に加え、量を認識する能力もあることが示されました。

社会的学習能力のある魚の行動

魚は、個人の個性を識別し、誰が誰であるかを思い出し、そして、仲間から学ぶことができます。さらに、いくつかの魚は、社会的なスキルを使って他の種とうまく共存できることも分かっています。

最も印象的な事例が、紅海で、ハタとウツボによって行われる共同狩猟です。

ハタは、日中の狩りを行うときに、通常は夜行性であるウツボに近づいて、頭を振って合図をすることで目を覚まさせ、獲物をサンゴ礁の割れ目から追い出してもらいます。

ときには、狩猟仲間として、ハタがベラの一種やタコを誘うこともあります。

そして、逆立ちのようなポーズをとって、魚が隠れている場所を狩猟仲間に教えるのです。

これらのすべては、彼らが非常に優れた社会的認識を持っていることを示しています。このような認知プロセスは、理解や他の種との交流に関するものです。

魚が他の魚を認識できることは明らかですが、ここで、まだ議論が残されています。

魚は、自分自身を認識することができるかもしれないというものです。

鏡で自分を認識する能力

理論的には、動物がミラーテストによって鏡の中で自分自身を認識していると判断されるには、自己の抽象的な感覚を持っている必要があります。

これまで科学者たちは、それには人間やゾウ、イルカ、シャチなど一部のほ乳類のみにみられるかなり高いレベルの知能が必要であると考えていました。

しかし、近年この鏡像認知力が魚にもある可能性が出てきたのです。

鏡にさらされたマンタは、泡を吹いたり、体をくねらせたり、ひれを頭の横に広げたりと異常な行動を示しました。

これを見て、科学者たちは、魚が自分かどうかを確かめていたのではないかと信じています。

ごく最近になって、ホンソメワケベラと呼ばれる魚もこのミラーテストに合格したようです。

ホンソメワケベラは、目の前に置かれた鏡を、初めのうちは攻撃しましたが、いつもとは違う行動をしてみることでそれが自分の姿が映ったものだと理解し、鏡の前で体の汚れを取ろうとする姿もみせたと示されています。

最後に

魚は、おそらく人間以外の他の脊椎動物と同じくらい知的で、特にホンソメワケベラのような群れ社会で生活する種は、他者との複雑な関係のなかで高い知能を有するようになったのかもしれません。

そういった意味で、自己認識と社会性の関係は無視できないものです。

しかし、私たち人間は、どの動物が他より賢いという先入観を持ってきたために、たくさんの真実を見落としてきた可能性があります。

多くの場合、知性は主観的で、ひょっとするとすべての種に、私たちが予期しなかった認知能力が存在しているのかもしれません。これまでの認知スキルの優位性も不確かなものです。

なによりも問題は、魚が新皮質なしで、実際にこれらのより高い認知機能をどのように果たしているのかということです。

彼らは、私たちの新皮質からくる脳の一部、前脳を持っています。おそらく、その領域で認識の一部、または、ほとんどが行われているのかもしれませんが、彼らの前脳は哺乳動物よりも小さく、複雑ではありません。

研究では、これらの単純な神経系からなる脳にも自己認識力があることが示されましたが、同様の社会生活を営んでいるはずの動物のほとんどがミラーテストに不合格しているのも事実です。

そのため、このような原始的な脳構造の機能への理解は、これから脳がどのように機能するのかについて科学者たちに多くのことを教えてくれるでしょう。

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