カリブ海にある島で、サルにマジックを披露したところ、サルが数を数える能力を持っている可能性が示されました。
サルにリンゴを3つずつ台にのせるところを見せ、1つのリンゴをマジックで隠すと驚いたような反応を見せたのです。しかし、4つのリンゴを5つに増やすトリックには全く驚きません。
これは、サルが4つ以上の数を数えられないことを意味するのでしょうか?
どうやらそれは正確には正しくないようです。
サルは、ただ数を数えるのではなく、量の相対的な比較を行ったに過ぎず、それは脳科学や進化学から理にかなっています。
以下にサルはどのようにして数や量を理解しているのかについてみていきましょう。
サルには数の違いが分かる
カリブ海にある島で、動物の脳の働きについて調べていた研究者がサルに手品を披露しました。
まず、台の上に大きな板を置き、板の裏側にリンゴを置くようすをサルに見せます。
リンゴは、大きな板によってサルの視界から一度隠される仕組みです。
そのままリンゴを2個目、3個目と置いた後、最後に板をよけてサルに全てのリンゴを見せます。
通常は3個のリンゴがそこにあるはずですが、台にはリンゴを隠せる隠し部屋があり、実際のリンゴの数と目の前のリンゴの数が一致しません。
このような不一致が起こると、サルは驚いたように、あるいは騙されたかのように見つめたのです。
これはサルが数を数える能力を持っていることを示しています。
過去数十年にわたって、研究者たちは、同様の手品を使った実験で、ウサギやクモからアシカまで、テストできるほとんどすべての動物が、予想したアイテムの数と目の前のアイテムの数が一致しないと驚くようであることを発見しました。
ただし、それらは少なくとも、4より小さい数で錯視手品を行った場合だけで、5個のリンゴを4個に変えてもまったく驚くようすを見せなかったのです。
このことから、人間以外の動物は4つ以上の数を数えられないのかもしれないと推理されました。
しかし、それは正確には正しくありません。
動物は相対的な量の違いで数を考える
なぜなら、サルをはじめ他の動物もみんな5個のリンゴが4個になっても驚きませんでしたが、4個のリンゴを下げて6個のリンゴを見せるときや、9個のリンゴを下げて12個のリンゴを見せるときには驚くからです。
どうやらサルが実際にやっているのは、2つの物の相対的な大きさ(量)の比較であるようです。
つまり、リンゴの山が左の図のように見えると予想していたのに、図の右のように高さも幅も見えた場合、それが認識するのに十分な相対的な差があるかどうかがカギになっているようです。
なぜ動物は数ではなく相対的な量で比較するのか?
ではなぜ動物は、ただ数を数えるのではなく、相対的な比較をするのでしょうか?
動物は、目の前においしそうなリンゴや怖い肉食動物がいるなど、何か重要なものがごく少量しかない場合、その量のわずかな違いを識別します。そしてそれは生存するうえで理にかなっています。
しかし、そこにたくさんのものがある場合、正確な数を知ることはそれほど重要ではありません。リンゴが15個あろうが、16個あろうがその違いを知る必要はなく、「たくさんある」だけで十分なのです。
これについて、研究者らは、動物が具体的に数を数えることは、ほとんどの状況において、エネルギーと脳力の無駄遣いにしかならないと考えています。
具体的な数を数え、区別する能力を持つ人間こそ、実は奇妙な存在のようです。
人間は、言語によって個々の数に名前をつけることができます。
そのため、数を数える能力は、一般的に集合の大きさを比較するために使われる脳の領域から、より複雑な計算に専念する脳の高度に発達した領域の働きに変わります。
しかし、言語がいかに重要かを示すために、言葉を話す前の人間、つまり幼児に同様の手品を行ったところ、彼らはサルとまったく同じ反応を示しました。
大きな数字の小さな違いには反応せず、3個のリンゴが魔法のように2個になったときには驚いたのです。
サルの数への概念については以下の動画で見ることができます。