「小麦粉はあるけれどイーストが足りない」こんなとき、賢いイーストの代用品が身近にあることを科学が教えてくれます。
「ビール」です。
ビールで代用して作られたパンは、ホップの風味も加わり、ふんわりと濃厚なパンに。
もちろんビールのアルコール成分は、パンを焼いている間に蒸発するので、子供でも年配の人でも食べられますよ。
以下に、イーストの代わりにビールを使ったパンの作り方、ビールが生地を膨らませる仕組み、パン作りに適したビールの選び方と注意点などを紹介します。
イーストがなくても「ビール」でパンが作れる仕組み
さて、私たちは、家でパンを焼くとき、小麦粉と水、砂糖、そして、重要な役割を果たす「微生物」を必要とします。
パン酵母として知られる「出芽酵母(しゅつがこうぼ)」です。イーストとも呼ばれる微生物で、パン生地を雲のようなふわふわの炭水化物の塊に育ててくれます。
しかし、もしイーストが手元になかったら?
そんなときは、冷蔵庫の中にある便利な代用品「ビール」でもパン作りはできます。
意外かもしれませんが、ビールは、パンと同じ「発酵」と呼ばれる重要なプロセスを経て作られており、世の中には「ビールパン」なるものもちゃんと存在しているのです。
簡単な作り方
オーブンを約180度に温めて、小麦粉3カップに対して、ぬるめのクラフトビール1缶をボウルに入れて混ぜ合わせます。
砂糖約50gや塩も好みで追加してください。
後は、クッキングシートにパン生地をおいて、生地の上にバターを散らして覆うように置き、オーブンで約50分焼くだけ。
パン作りにビールを使うときの注意点
実は、ほとんどの大規模生産者は、生きている酵母を可能な限りビールから濾過して取り除いています。
クラフトビールやベルギービール、小規模な醸造所で製造されたビールを使っているのであれば、底に見える程度にイーストが残っているため、パン作りに利用しても大丈夫でしょう。
ただし、そうはいっても出芽酵母よりは少ないため、より高密度なパンができあがる可能性はあります。
そんなときは、中力粉1カップに対してベーキングパウダー小さじ1と1/2杯、塩小さじ1/4杯を加えるか、既にベーキング・パウダーと塩があらかじめ混ぜて市販されている「セルフライジング・フラワー(Self-raising flour)」と呼ばれる小麦粉を代わりに使うとふんわりとしたパン生地になります。
もし、パンの密度が高すぎると感じたら、次のパンはベーキングパウダーを少し多めに入れる改善してみてください。
このベーキングパウダーは、炭酸水素ナトリウム(重層)と呼ばれる食品添加物で、水分や熱に反応して、炭酸水素ナトリウムと酸が結合し、二酸化炭素の気泡を作り出すので膨らみ、軽くて多孔質なパンにしてくれるのです。
パンとビールを生み出す「発酵」
出芽酵母(イースト)は、生きている単細胞の菌類で、糖と組みあわせるとちょっとした科学的な魔法を使います。
発酵において出芽酵母(イースト)は糖を代謝し、廃棄物として二酸化炭素とアルコールを放出します。
これをアルコール発酵といい、このときに排出された二酸化炭素の気泡が、パンをスライスしたときによくある穴やくぼみの正体です。
パン作りの場合は、オーブンで焼かれる間に、このアルコールは燃え尽きてしまいますが、アルコールが必要なビールの場合は、このステップはスキップ。
ビールメーカーは、ビールの発酵工程で、アルコールの成分と炭酸を与えます。
最終的にビールに残る酵母の量は醸造のやり方によって異なるといわれています。
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