ものの仕組み・エンジニア

電子レンジ対応の金属ってどうなってるの?

電子レンジに金属を入れてはいけない理由ものの仕組み・エンジニア

「電子レンジには、絶対に金属を入れてはいけない」

おそらく誰もが一度は聞いたことがある話でしょう。

しかし、電子レンジの内部は金属でできていますし、今や「電子レンジで使える」金属容器まで存在します。

いったいどうなっているのでしょうか?そもそも金属の何がいけないのでしょうか?

以下に、金属を入れると電子レンジの中で何が起こるのかをもとに、そのなぞについて分かりやすく紹介します。

電子レンジの仕組み

以前、電子レンジでマイクロ波が実際にどのように機能するのかについて紹介しましたが、ここでも、それに簡単に触れておきます。

電子レンジ内部で発生した電磁波は、空洞の内部で壁に当たっては跳ね返り、それを繰り返すうちに超高速で反転する電磁場となります。

この電磁場が食品中のある種の分子(水、塩、脂肪など)とぶつかると、分子を引き寄せて何度も上下を反転させます。

電子レンジが食品を温める仕組み

電子レンジが食品を温める仕組み②

こうしてたくさんの分子が1秒間に何十億回も反転する結果、熱が発生するのです。

金属は電磁エネルギーを放出する

金属には上の分子(水、塩、脂肪など)のようなマイクロ波と相互作用しやすい分子は存在しませんが、表面に浮遊しているゆるやかな電子はたくさんあります。

金属の表面にある電子

これらの電子が振動する電磁場と出会うと、前後に揺れ動き始め、食品の分子とは異なる結果をいくつかもたらすのです。

まず、振動する電子は基本的にシールドを形成し、入ってくる電磁エネルギーのほとんどを再放出します。

シールドを形成

電子レンジが金属の壁で覆われているのはこのためで、金属の壁は電磁波を反射し、食品を調理する振動フィールドを作り出すために電磁波を跳ね返しています。

電子レンジに金属を入れるといけない理由

みなさんは、電子レンジの中に金属を入れると(特にエネルギーを吸収する食品を入れないと)、エネルギーが跳ね返りすぎて電子レンジのマグネトロンが損傷するという話を聞いたことがあるかもしれません。

その可能性はありますが、現在の電子レンジは、以前よりもこの種の反射に対する保護が強化されています。

それよりも金属を電子レンジで加熱する際の大きな問題は、電子が移動することによる別の副作用です。

電子はマイナスに帯電しているため、電子が動き回ると(-と-が)互いに反発し合って、その結果、金属の表面で電子の間隔が開きます

しかし、この間隔が空くことで、実際には電子が金属の角や端に押し込まれ、その場所でぎゅっと押し込められた電子が束になります

電子の間隔があく

束になる

電子が束になるほど、その場所の負電荷は大きくなり、ついには空気中に電子を押し出すようになるのです。

空気中に電子を放出

押し出された電子は、空気中の他の分子にぶつかっては電子をはぎとっていきます。

空気には荷電粒子がたくさん漂っており、その中を蓄積された負電荷が移動しはじめます。

これは雷を発生させるプロセスと同じで、電子レンジの放電を「アーク放電」と呼ばれます。

雷と同じ原理

いったんアーク放電が始まると、作動中の電子レンジの電磁場がそれをより一層激しくするため、放っておいた場合、アーク放電で電子レンジに穴が開く可能性があるというわけです。

アーク放電

なんだか怖い話ですね。

しかし、実際にはこのようなケースはまれで、金属を電子レンジに入れたからといって、必ずアーク放電が起こるとは限りません。

電子レンジ対応の金属

実際、少し科学的な話になりますが金属を入れたほうがいい場合もあるようです。

電子レンジで調理する場合、一般的に水の沸点より熱くなることはありません

しかし、金属が十分に薄ければ(これはかなり複雑な科学ですが)、電磁エネルギーを反射する代わりに、緩んだ電子が実際にそれを吸収し、熱し始めます

そのため、電子レンジで調理可能な食品を製造するメーカーの中には、ピザの生地がパリッと焼けるほど熱くなるように、あるいはポップコーンを焼くのに十分なほど油が熱くなるように、超薄型の金属フィルムを包装に加えるところもあるようです。

包装紙に金属のシートを入れる

このように戦略的に金属を取り入れる場合は問題はありません。では具体的に、どのような場合に金属が問題になり、どのような場合に問題にならないのでしょうか?

最大の要因は金属の形状

電子レンジ対応ピザの下にあるクリスピングディスクのように、滑らかで丸みを帯びた金属は、電子が密集することなく動き回る十分なスペースがあるため、アーク放電が発生する可能性が低くなります

電子レンジ対応の金属

特に、食品がディスクに密着することで、アーク放電の可能性を基本的に緩和してくれるからです。

アーク放電を緩和

「電子レンジ対応」のステンレス容器は?

問題はありません。しかし、興味深いことに、説明書には「深いへこみや傷」に注意するよう明確に記載されています。

注意点

なぜなら、電子が密集するような不規則な場所があれば、アーク放電の原因となる可能性があるからです。

アーク放電の原因となりやすい金属

ツイストタイ、金属縁の皿、そして昔ながらのテイクアウト容器の薄い金属製の取っ手も、すべて使用禁止なのも同じ理由です。

電子レンジで使用不可の金属

角や尖った部分が多すぎるからです。

金属同士が接触する問題もあります。

金属は空気よりもはるかに優れた電気伝導体であるため、負の電荷が流れやすい経路となります。

そのため、電子レンジに2つの金属片(特に尖った部分がある場合)を近づけて入れると、アーク放電を引き起こす可能性が高まります。

金属同士が近すぎる

そのため、フォークやくしゃくしゃにしたアルミホイルを電子レンジに入れないようにアドバイスされています。

アーク放電が引き起こされやすい金属

また、安全に電子レンジに入れることができる金属でさえも、金属壁から十分離して、蓄積された電荷がそれらの間に流れないように注意する必要があります。

壁から離す

最後に、加熱しようとしているものを金属(電磁エネルギーを反射する素材)で囲むという問題があります。

これは安全性の観点からは問題ではありませんが、実際に食品を加熱する上では問題になる可能性があります。

金属容器が深いほど、つまり密閉度が高いほど、電子レンジの加熱能力が制限されます。

しかし、基本的に、市販されている電子レンジ対応の金属容器のほとんどは、十分なエネルギーを取り込んで、かなり効果的に加熱できるようなデザインになっています。

電子レンジ対応の金属がある理由については以下の動画で見ることができます。

Microwaving metal is FINE (sometimes)
知力空間
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